17,548
回編集
細 (→κ受容体遺伝子 KOマウス) |
細 (→ノシセプチン受容体) |
||
| 142行目: | 142行目: | ||
=== ノシセプチン受容体=== | === ノシセプチン受容体=== | ||
上記の3つの受容体サブタイプと類似の構造を有するもののリガンドが不明な、いわゆるオーファン受容体であったが、内在性リガンドの探索の結果、脳から発見されたノシセプチン(N/OFQ) の受容体として理解されるようになった。NORは古典的なオピオイドリガンドとは結合せず、逆にN/OFQ はMOR, DOR, KORには結合しない。さらに、NORを介した作用はモルヒネの鎮痛作用に拮抗することも報告されている。このような事実からNOR-リガンドシステムは、古典的なオピオイド受容体とは異なる独立したサブタイプとして分類されている<ref name=Zaveri2016><pubmed>26878436</pubmed></ref>。 | |||
====細胞内シグナル ==== | ====細胞内シグナル ==== | ||
NORは活性化されると他のオピオイド受容体同様、cAMPの産生を阻害し、電位依存性Ca<sup>2+</sup>チャネルを閉じ、内向き整流性K<sup>+</sup>チャネルを開く<ref name=Hawes2000><pubmed>10998529</pubmed></ref><ref name=Knoflach1996><pubmed>8824306</pubmed></ref><ref name=New2002><pubmed>12393946</pubmed></ref><ref name=Vaughan1996><pubmed>8732266</pubmed></ref>。NORの活性化は神経の興奮性を抑制し、神経伝達物質(ノルエピネフリン、ドーパミン、セロトニン、アセチルコリン、グルタミン酸など)の放出を減少させるという報告がある <ref name=Toll2016><pubmed>26956246</pubmed></ref>。 | |||
====内因性作用 ==== | ====内因性作用 ==== | ||
ノシセプチンを末梢皮下や脊髄くも膜下腔に投与したとき、低用量では疼痛過敏を高用量では鎮痛方向の作用を示しいずれもNORのノックアウト(KO)マウスにおいて遮断される<ref name=Inoue1999><pubmed>10490918</pubmed></ref>. NOR-KOマウスは繰り返しモルヒネ投与による鎮痛耐性や身体的依存形成を有意に抑制すること<ref name=Ueda2000><pubmed>11027224</pubmed></ref>からノシセプチンはNMDA型グルタミン酸受容体を介した機構<ref name=Inoue2003><pubmed>12878694</pubmed></ref>と同様なアンチオピオイド機構を担っている可能性がある。 | |||
====薬理作用 ==== | ====薬理作用 ==== | ||
一方、NOR作動薬の疼痛伝達に対する効果は、作用部位(脊髄上部、脊髄、末梢)と使用される動物モデルに応じて、疼痛促進効果から鎮痛効果まで多岐にわたる<ref name=Pola2024><pubmed>39335430</pubmed></ref><ref name=Toll2016><pubmed>26956246</pubmed></ref>。NOR作動薬はマウスおよびラットの脳室内に投与すると疼痛促進作用を示し、その作用は延髄前部腹内側核のOFF細胞に存在するNORを介した作用であると考えられている。NOR作動薬を脊髄内に注射すると、強力な鎮痛効果を示すが、脊髄において興奮性グルタミン酸作動性疼痛伝達を阻害することによると考えられている。 | |||
=== オピオイド受容体ヘテロマー === | === オピオイド受容体ヘテロマー === | ||