161
回編集
Tatsuyamori (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
Tatsuyamori (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
||
87行目: | 87行目: | ||
NGF、BDNFなどの神経栄養因子は、発生過程において神経細胞の分化、軸索伸長、生存維持等の生理活性を持つく<ref><pubmed> 11520916</pubmed></ref>。多くの場合、神経栄養因子は標的細胞から分泌され、それを受容した神経細胞が分化したり、軸索を伸長させたりする。発生期の生体内において、神経栄養因子が明瞭な濃度勾配を形成しているという決定的な証拠はないが、NGFは培養条件下で成長円錐を誘引する作用を持つ因子として最初に報告されたとしてはたらく<ref><pubmed> 493992 </pubmed></ref>。また、発生期の組織内に神経栄養因子に浸したビーズを置くと周辺の軸索がビーズに向かって伸長することも報告されている<ref><pubmed>11135642 </pubmed></ref>。 | NGF、BDNFなどの神経栄養因子は、発生過程において神経細胞の分化、軸索伸長、生存維持等の生理活性を持つく<ref><pubmed> 11520916</pubmed></ref>。多くの場合、神経栄養因子は標的細胞から分泌され、それを受容した神経細胞が分化したり、軸索を伸長させたりする。発生期の生体内において、神経栄養因子が明瞭な濃度勾配を形成しているという決定的な証拠はないが、NGFは培養条件下で成長円錐を誘引する作用を持つ因子として最初に報告されたとしてはたらく<ref><pubmed> 493992 </pubmed></ref>。また、発生期の組織内に神経栄養因子に浸したビーズを置くと周辺の軸索がビーズに向かって伸長することも報告されている<ref><pubmed>11135642 </pubmed></ref>。 | ||
=== | === 成長円錐の旋回運動を制御する細胞内シグナル経路 === | ||
成長円錐の運動性は細胞骨格や接着分子により規定されることは上述したが、成長円錐の前進速度に空間的な非対称性が生じれば、成長円錐は全体として旋回運動を呈することになる。実際に、軸索ガイダンス因子が制御する成長円錐の旋回運動にもRhoファミリー低分子量Gタンパク質、ADF/cofilin、Ena/Vasp、APCなどによる細胞骨格制御、CalpainやFAK、Srcチロシンキナーゼなどによる細胞接着制御が関与することが明らかにされている。 | 成長円錐の運動性は細胞骨格や接着分子により規定されることは上述したが、成長円錐の前進速度に空間的な非対称性が生じれば、成長円錐は全体として旋回運動を呈することになる。実際に、軸索ガイダンス因子が制御する成長円錐の旋回運動にもRhoファミリー低分子量Gタンパク質、ADF/cofilin、Ena/Vasp、APCなどによる細胞骨格制御、CalpainやFAK、Srcチロシンキナーゼなどによる細胞接着制御が関与することが明らかにされている。 | ||
=== 誘引-反発応答を制御する分子メカニズム | |||
軸索ガイダンスの分子メカニズムの研究の多くは、Pooのグループによって開発されたターニングアッセイと呼ばれる実験系を用いて行われている。この手法は、培養条件下でガラスピペットから分泌性ガイダンス因子をパルス状に放出し、成長円錐近傍にガイダンス因子の濃度勾配を人工的に作り出し、それに対する成長円錐の挙動を観察するものである。この手法は、軸索ガイダンス因子が誘導する誘引性-反発性旋回運動を一つの実験系で評価できるという点で優れている。このターニングアッセイでは特定のシグナルカスケードを遮断すると誘引-反発の応答が逆転する現象が見られ、成長円錐の旋回運動の方向は様々な細胞内シグナル伝達経路が協調的に働き、複雑なクロストークの結果決定されると予想される。これは、生体内で成長円錐が様々な軸索ガイダンス因子のシグナルを受容しながらそのシグナルを統合し進行する経路を選択することを反映していると考えられる。ここでは、誘引-反発応答を制御するメカニズムについて概説する。 | |||
<br> | <br> |
回編集