「Adenomatous polyposis coli」の版間の差分

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 腸管上皮にも豊富に発現しているが、腸上皮での発現は一様ではない。絨毛の先端に行くほどAPCの発現は高く、逆に絨毛の基部から腸陰窩に入ると発現は急激に減弱する12)<ref name=Miyashiro1995><pubmed>7624136</pubmed></ref>。腸上皮細胞は陰窩内にある幹細胞で分裂増殖し、陰窩から絨毛を上りながら4種類の上皮細胞に分化成熟することがわかっている。Wnt系を負に制御して細胞増殖を抑制するAPCの発現が陰窩で少なく、絨毛先端で多いことから、APCは腸上皮全体の増殖・分化の制御に関わっていることを示唆する。上皮細胞内では、細胞の頂部(微絨毛を含む)と隣の細胞と接着している側部細胞膜直下にAPCの局在が見られる。
 腸管上皮にも豊富に発現しているが、腸上皮での発現は一様ではない。絨毛の先端に行くほどAPCの発現は高く、逆に絨毛の基部から腸陰窩に入ると発現は急激に減弱する12)<ref name=Miyashiro1995><pubmed>7624136</pubmed></ref>。腸上皮細胞は陰窩内にある幹細胞で分裂増殖し、陰窩から絨毛を上りながら4種類の上皮細胞に分化成熟することがわかっている。Wnt系を負に制御して細胞増殖を抑制するAPCの発現が陰窩で少なく、絨毛先端で多いことから、APCは腸上皮全体の増殖・分化の制御に関わっていることを示唆する。上皮細胞内では、細胞の頂部(微絨毛を含む)と隣の細胞と接着している側部細胞膜直下にAPCの局在が見られる。


[[ファイル:Senda APC Fig2.png|サムネイル|'''図2. APC変異体によるWntシグナルの異常活性化機構'''<br>'''左.''' 正常APCはβカテニンに結合 ⇒βカテニンは分解される(Wnt系を抑制)<br>'''右.''' 変異APCはβカテニンに結合できない ⇒βカテニンは核に入り、転写因子と結合(Wnt系促進)⇒細胞増殖亢進・がん化]]
== 機能 ==
== 機能 ==
 がん抑制タンパク質としてのAPCの機能は、Wntシグナル伝達系を抑制することである8, 9) <ref name=Goss2000><pubmed>10784639</pubmed></ref><ref name=Nusse2017><pubmed>28575679</pubmed></ref>。Wnt系は細胞外リガンド、Wntの刺激を受けて、細胞増殖や細胞分化を促進するシグナルを核内に伝える。APCはWnt系のキータンパクであるβ-カテニンと結合し、その分解を促進することによってWntシグナルの核への移行を阻止する。APCに変異が生じ、β-カテニン結合部位が欠損すると、β-カテニンは分解されずに細胞質に蓄積し、次いで核に移行して細胞増殖をオンにする転写因子を活性化する。
 がん抑制タンパク質としてのAPCの機能は、Wntシグナル伝達系を抑制することである8, 9) <ref name=Goss2000><pubmed>10784639</pubmed></ref><ref name=Nusse2017><pubmed>28575679</pubmed></ref>。Wnt系は細胞外リガンド、Wntの刺激を受けて、細胞増殖や細胞分化を促進するシグナルを核内に伝える。APCはWnt系のキータンパクであるβ-カテニンと結合し、その分解を促進することによってWntシグナルの核への移行を阻止する。APCに変異が生じ、β-カテニン結合部位が欠損すると、β-カテニンは分解されずに細胞質に蓄積し、次いで核に移行して細胞増殖をオンにする転写因子を活性化する('''図2''')。


 APCにはβ-カテニン以外にも様々なタンパク質との結合部位が存在する。APCはこれらのタンパク質との結合を介して、Wnt系の制御以外の様々な機能に関与していることが示された16, 26) <ref name=Fearnhead2001><pubmed>11257105</pubmed></ref><ref name=Senda2005><pubmed>16158975</pubmed></ref>。
 APCにはβ-カテニン以外にも様々なタンパク質との結合部位が存在する。APCはこれらのタンパク質との結合を介して、Wnt系の制御以外の様々な機能に関与していることが示された16, 26) <ref name=Fearnhead2001><pubmed>11257105</pubmed></ref><ref name=Senda2005><pubmed>16158975</pubmed></ref>。