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グルココルチコイド

118 バイト追加, 2012年4月19日 (木) 11:45
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== 分泌制御 ==
 物理的、精神的などストレスの種類に関わらず、ストレスは[[視床下部室傍核視床下部#室傍核]]に神経細胞における[[コルチコトロピン放出ホルモン]](corticotropin-releasing hormone(CRH))の産生を高める。産生されたCRHは、神経細胞の軸索を通って[[下垂体]]茎周辺の毛細血管に放出され、[[下垂体前葉]]に運ばれ、前葉細胞の[[adrenocorticotropic hormone]] (ACTH)分泌細胞に作用し、ACTHの分泌を促進する。ACTHは血流に乗り、副腎皮質に至り、束状帯細胞に働きかけて[[細胞内情報伝達系]]を活性化し、[[コレステロール]]から[[プログネノロン]]の転換を促進し、グルココルチコイドの産生を促す。分泌されたグルココルチコイドは脂溶性であるため、[[血液脳関門]]による制御を受けずに脳内に入り、神経系の細胞に直接作用し、CRH、ACTHの分泌制御に留まらず、グルココルチコイド自身の分泌制御をも行うという、多重のループ機構を形成している。このように、脳はグルココルチコイドの分泌制御に重要な役割を演じているが、[[海馬]]における[[グルココルチコイド受容体]]の存在が明らかにされて以来<ref name=ref1><pubmed>4301849</pubmed></ref>、グルココルチコイドの脳内作用についての研究が進み、多くの知見が集積されてきている<ref name=ref2><pubmed>18067954</pubmed></ref>。例えば、ストレスに伴うグルココルチコイドの分泌亢進は、様々な脳の機能障害を引き起こすが、その脳内反応には、CRH、[[ノルアドレナリン]]や[[セロトニン]]などの[[アミン系]]、[[グルタミン酸]]などの[[興奮性アミノ酸]]、[[サイトカイン]]などが関与することが、新たに知られるようになった。そしてこれらの制御には、従来から考えられてきた[[hypothalamo-pituitary-adrenal(HPA)axis]]に加え、さらにその上位に位置する海馬や[[前頭前皮質]]のグルココルチコイド受容体を介したフィードバック機構が重要な役割を担っていると考えられるようになってきた<ref name=ref3><pubmed>10202533</pubmed></ref>。
== 受容体 ==
=== 受容体の脳内分布と細胞内局在 ===
 GRは脳内の幅広い領域に分布するが、特に多く認められる部位は以下の通りである<ref name=ref7><pubmed>9121734</pubmed></ref>。[[大脳皮質]]のII/III層やIV層、とくに[[頭頂葉]]や[[側頭葉]]の[[連合野]]と[[視覚野]]においてはIV層、[[前嗅核]]、[[嗅結節]]の[[錐体細胞]]、[[梨状葉]]の錐体細胞、[[嗅内]]核、海馬の[[CA1]]と[[CA2]]の錐体細胞、[[歯状回]]の[[顆粒細胞]]、[[扁桃体]]の[[中心核]]、[[分界条床核]]、[[視床]]の[[外側背側核]]、[[後外側核]]、[[内側膝状体]]、[[外側膝状体]]、[[視床下部]]では[[内側視索前野]]、[[前腹側室周囲核]]、[[室傍核]]小細胞性領域、[[弓状核]]、[[腹内側核]]、[[背内側核]]、[[腹前乳頭体核]]、[[脳幹]]では[[台形体核]]、[[青斑核]]、[[背側縫線核]]、[[小脳]]の[[顆粒細胞層]]である。これらの領域では[[wikipedia:JA:免疫組織化学法|免疫組織化学法]]と[[wikipedia:JA:in situ hybridization|in situ hybridization]]法の所見が一致している。両者の方法で分布の異なる部位は[[小脳プルキンエ細胞層]]や海馬CA3などが挙げられる。分布の異なる理由として、部位間の受容体タンパク質とmRNAの合成、代謝回転の差などが類推されるが、明確な論拠は未だ示されていない。
 これに対し、MRは脳内のかなり限られた領域にのみ分布する。MRの存在する部位としては、海馬、特にCA1、CA2、[[外側中隔野]]、内側・中心扁桃体、大脳皮質II層、小脳、脳幹の一部の神経細胞が挙げられる。
=== 受容体の性状 ===
 GRおよびMRの両受容体はステロイドホルモンに対して異なる[[結合親和性]](Kd)を示す。MRはグルココルチコイドやアルドステロンに対する親和性が高く(Kd: 0.5 nM)、合成のグルココルチコイドである[[wikipedia:JA:デキサメサゾン|デキサメサゾン]]には数分の一の低い親和性を示す。一方、GRはグルココルチコイドに対する親和性は低いが(Kd:5nM)、デキサメサゾンには高い親和性を示す。
 このような両受容体のグルココルチコイドに対する親和性の差は、生体において生理的、非生理的状況下における内因性グルココルチコイドによる受容体の占有率の差に反映されてくると考えられる。すなわち、血中のグルココルチコイド量が低値の場合はグルココルチコイドに高い親和性を示すMRが結合し、グルココルチコイド量が高い場合には親和性の低いGRが結合すると考えられている<ref name=ref12><pubmed>22127301</pubmed></ref>。グルココルチコイドの日内変動に特に敏感である海馬において、GRはグルココルチコイド最低濃度時には30%程度しか活性化されていない一方で、親和性の高いMRはグルココルチコイドの日内変動にかかわらず常に60%以上活性化されていることが示されている。
=== HPA axisの調節 ===
 海馬はグルココルチコイドホルモンに対して脳内で最も感受性の高い部位であり、GR、MRともに豊富に存在すること、また同一細胞において両者が共存すること、などが報告されている。こうしたことからグルココルチコイドにより[[wikipedia:JA:ネガテイブフィードバック|ネガテイブフィードバック]]を受けるHPA axisの調節に海馬が関与することが示されている。一般的には、海馬がHPA axisを抑制的に作用する<ref name=ref13><pubmed>2070776</pubmed></ref>のに対し、扁桃体が促進作用を示すことが知られている<ref name=ref14><pubmed>8782536</pubmed></ref>。種々のストレス条件下における海馬の傷害によりコルチゾールの分泌が上昇する。さらに、グルココルチコイドの海馬への直接投与実験によっても、従来の海馬によるHPAaxisのフィードバック制御と同等な効果がみられることが示されている。また海馬と同様に、分界条床核や視索前野を経由して視床下部へ至る線維連絡をもつ[[wikipedia:JA:内側前頭前皮質|内側前頭前皮質]](帯状回)もHPAaxisの制御に重要な役割を果たすことがわかってきた<ref name=ref15><pubmed>19120092</pubmed></ref>。
 HPAaxisの活性化には海馬や前頭前皮質のGRあるいはMRの減少が起因することが報告されている。海馬のMRは平常時のACTHやグルココルチコイドレベルの維持に、また前頭前皮質のGRはACTHの分泌に、それぞれ関与するとされているが、海馬のGRとMRの発現レベルとHPAaxis活性との関連が、海馬に対するグルココルチコイドのフィードバックを意味するものか、あるいはHPAaxisが神経系によるストレス応答に適合するように働くグルココルチコイドの調節作用を示すのかは未だ明確ではない。しかしながら、CRHや[[バソプレッシン]]などの視床下部からの出力系を制御する神経活動に対するステロイドの調節に関して、海馬が主として働いている事実は、HPAaxisの制御に海馬が中心的な役割を果たしていることを裏付ける重要な根拠である。

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