16,040
回編集
細 (→随意的な運動の開始及び抑制) |
細 (→順序動作の制御) |
||
29行目: | 29行目: | ||
補足運動野の損傷は自発的な運動の開始に困難をもたらす一方で、意図しない運動の出現をもたらす。補足運動野の損傷によって生じる非意図的な運動の代表例として挙げられる“[[他人の手症候群]](alien-hand syndrome)”では、患者の手が本人の意思とは無関係にまるで他人の手であるかのように一定のまとまった動作(例、健側の手が片付けた物を患側の手が勝手に取り出すなど)を行う。その他にも道具の強制使用、強制把握などの非意図的な運動が生じる。我々の脳は五感を通して外界の状況を認知し、それを基に運動を企画・実行するが健常者なら全ての感覚入力に対して自動的に反応するのではなく、何に対してどう反応するか、又は反応しないか等、意図による制御が働いている。補足運動野が損傷されるとこの意図による制御が働かず、感覚入力によって自動的に運動がトリガーされてしまうと考えられる<ref><pubmed>18356377</pubmed></ref>。 | 補足運動野の損傷は自発的な運動の開始に困難をもたらす一方で、意図しない運動の出現をもたらす。補足運動野の損傷によって生じる非意図的な運動の代表例として挙げられる“[[他人の手症候群]](alien-hand syndrome)”では、患者の手が本人の意思とは無関係にまるで他人の手であるかのように一定のまとまった動作(例、健側の手が片付けた物を患側の手が勝手に取り出すなど)を行う。その他にも道具の強制使用、強制把握などの非意図的な運動が生じる。我々の脳は五感を通して外界の状況を認知し、それを基に運動を企画・実行するが健常者なら全ての感覚入力に対して自動的に反応するのではなく、何に対してどう反応するか、又は反応しないか等、意図による制御が働いている。補足運動野が損傷されるとこの意図による制御が働かず、感覚入力によって自動的に運動がトリガーされてしまうと考えられる<ref><pubmed>18356377</pubmed></ref>。 | ||
== 順序動作の制御 | ==順序動作の制御== | ||
複数の動作を適切な順序で実行すること(例.カップ麺の蓋を開けて"から"湯を入れるなど)は日常生活を営む上で重要な役割を持つが、補足運動野の損傷は一連の動作を順序立てて実行することが困難になる運動障害を引き起こす。その一方で個別の要素的運動を実行する限り目立った障害を示さない<ref><pubmed>591992</pubmed></ref>。健常者に於いても順序動作の実行に伴って補足運動野の脳血流が増加すること<ref><pubmed>7351547</pubmed></ref>、複数の動作を個別に行うよりも一連の動作として行う時に補足運動野上から記録される運動準備電位(Bereitschaftspotentia)が増強すること<ref><pubmed>4094721</pubmed></ref>が指摘されている。動物実験でも補足運動野、[[前補足運動野]]には動作の順序に選択的な活動を示すニューロンが数多く存在すること、[[GABA受容体]](GABAa)[[作動薬]]である[[ムシモール]] | 複数の動作を適切な順序で実行すること(例.カップ麺の蓋を開けて"から"湯を入れるなど)は日常生活を営む上で重要な役割を持つが、補足運動野の損傷は一連の動作を順序立てて実行することが困難になる運動障害を引き起こす。その一方で個別の要素的運動を実行する限り目立った障害を示さない<ref><pubmed>591992</pubmed></ref>。健常者に於いても順序動作の実行に伴って補足運動野の脳血流が増加すること<ref><pubmed>7351547</pubmed></ref>、複数の動作を個別に行うよりも一連の動作として行う時に補足運動野上から記録される運動準備電位(Bereitschaftspotentia)が増強すること<ref><pubmed>4094721</pubmed></ref>が指摘されている。動物実験でも補足運動野、[[前補足運動野]]には動作の順序に選択的な活動を示すニューロンが数多く存在すること、[[GABA受容体]](GABAa)[[作動薬]]である[[ムシモール]]をこれらの領域に注入することによって順序動作の実行が障害されるなどヒトで得られた知見を支持する結果が得られている<ref><pubmed>11520914</pubmed></ref>。<br> | ||
== 両手の協調運動<br> == | == 両手の協調運動<br> == |