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==構成タンパク質== | ==構成タンパク質== | ||
リソソームを構成するタンパク質は、加水分解酵素などの可溶性タンパク質と、[[wikipedia:V-ATPase|液胞型プロトンポンプ]]などの[[膜タンパク質]]に大別される。これらは特有の局在化機構によってリソソームへ輸送される。 | |||
===可溶性タンパク質=== | ===可溶性タンパク質=== | ||
リソソーム内腔には[[wikipedia:JA:生体高分子|生体高分子]]([[wikipedia:JA:タンパク質|タンパク質]]、[[wikipedia:JA:脂質|脂質]]、[[wikipedia:JA:炭水化物|糖質]]など)を構成単位([[wikipedia:JA:アミノ酸|アミノ酸]]、[[wikipedia:JA:リン脂質|リン脂質]]、[[wikipedia:JA:糖|糖]]、[[wikipedia:JA:核酸|核酸]]など)にまで分解できる約60種類の[[wikipedia:JA:加水分解酵素|加水分解酵素]]が存在する。[[wikipedia:JA:プロテアーゼ|プロテアーゼ]]([[wikipedia:protease|protease]])、[[wikipedia:JA:グリコシダーゼ|グリコシダーゼ]]([[wikipedia:glycosidase|glycosidase]])、[[wikipedia:JA:リパーゼ|リパーゼ]]([[wikipedia:lipase|lipase]])、[[wikipedia:JA:ホスファターゼ|ホスファターゼ]]([[wikipedia:phosphatase|phosphatase]])、[[wikipedia:JA:ヌクレアーゼ|ヌクレアーゼ]]([[wikipedia:nuclease|nuclease]])、[[wikipedia:JA:ホスホリパーゼ|ホスホリパーゼ]]([[wikipedia:phospholipase|phospholipase]])、[[wikipedia:JA:スルファターゼ|スルファターゼ]]([[wikipedia:sulfatase|sulfatase]])などがあり、多くは酸性域に至適[[wikipedia:JA:水素イオン指数|pH]]を持つため、酸性加水分解酵素(acid hydrolase)と総称される。これらはA-B + | リソソーム内腔には[[wikipedia:JA:生体高分子|生体高分子]]([[wikipedia:JA:タンパク質|タンパク質]]、[[wikipedia:JA:脂質|脂質]]、[[wikipedia:JA:炭水化物|糖質]]など)を構成単位([[wikipedia:JA:アミノ酸|アミノ酸]]、[[wikipedia:JA:リン脂質|リン脂質]]、[[wikipedia:JA:糖|糖]]、[[wikipedia:JA:核酸|核酸]]など)にまで分解できる約60種類の[[wikipedia:JA:加水分解酵素|加水分解酵素]]が存在する。[[wikipedia:JA:プロテアーゼ|プロテアーゼ]]([[wikipedia:protease|protease]])、[[wikipedia:JA:グリコシダーゼ|グリコシダーゼ]]([[wikipedia:glycosidase|glycosidase]])、[[wikipedia:JA:リパーゼ|リパーゼ]]([[wikipedia:lipase|lipase]])、[[wikipedia:JA:ホスファターゼ|ホスファターゼ]]([[wikipedia:phosphatase|phosphatase]])、[[wikipedia:JA:ヌクレアーゼ|ヌクレアーゼ]]([[wikipedia:nuclease|nuclease]])、[[wikipedia:JA:ホスホリパーゼ|ホスホリパーゼ]]([[wikipedia:phospholipase|phospholipase]])、[[wikipedia:JA:スルファターゼ|スルファターゼ]]([[wikipedia:sulfatase|sulfatase]])などがあり、多くは酸性域に至適[[wikipedia:JA:水素イオン指数|pH]]を持つため、酸性加水分解酵素(acid hydrolase)と総称される。これらはA-B + H<sub>2</sub>O → A-H + B-OHという[[wikipedia:JA:加水分解|加水分解]]反応によって基質を分解する。 | ||
リソソームに局在するプロテアーゼは20種類以上あり、それらは[[カテプシン]]([[wikipedia:Cathepsin|cathepsin]])と名付けられ、A-Zまで存在する。リソソームにはカテプシン以外の名称のプロテアーゼも存在する([[wikipedia:LGMN|Legumain]]、[[wikipedia:NAPSA|Napsin]]、[[wikipedia:TPP1|TPP1]]など)。これらのプロテアーゼは[[wikipedia:JA:活性中心|活性中心]]のアミノ酸残基の違いから、[[wikipedia:JA:システインプロテアーゼ|システインプロテアーゼ]](カテプシン[[wikipedia:Cathepsin B|B]]、[[wikipedia:Cathepsin C|C/J/DPP1]]、[[wikipedia:Cathepsin F|F]]、[[wikipedia:Cathepsin H|H/I]]、[[wikipedia:Cathepsin K|K/O2]]、[[wikipedia:Cathepsin L|L]]、[[wikipedia:Cathepsin O|O]]、[[wikipedia:Cathepsin S|S]]、[[wikipedia:Cathepsin L2|V/L2/U]]、[[wikipedia:Cathepsin W|W]]、[[wikipedia:cathepsin Z|X/P/Z/Y]]、[[wikipedia:LGMN|Legumain]])、[[wikipedia:JA:アスパラギン酸プロテアーゼ|アスパラギン酸プロテアーゼ]](カテプシン[[wikipedia:cathepsin D|D]]、[[wikipedia:Cathepsin E|E]]、[[wikipedia:NAPSA|Napsin]])、[[wikipedia:JA:セリンプロテアーゼ|セリンプロテアーゼ]](カテプシン[[wikipedia:Cathepsin A|A]]、[[wikipedia:Cathepsin G|G]]、[[wikipedia:TPP1|TPP1]])に分類される。 | リソソームに局在するプロテアーゼは20種類以上あり、それらは[[カテプシン]]([[wikipedia:Cathepsin|cathepsin]])と名付けられ、A-Zまで存在する。リソソームにはカテプシン以外の名称のプロテアーゼも存在する([[wikipedia:LGMN|Legumain]]、[[wikipedia:NAPSA|Napsin]]、[[wikipedia:TPP1|TPP1]]など)。これらのプロテアーゼは[[wikipedia:JA:活性中心|活性中心]]のアミノ酸残基の違いから、[[wikipedia:JA:システインプロテアーゼ|システインプロテアーゼ]](カテプシン[[wikipedia:Cathepsin B|B]]、[[wikipedia:Cathepsin C|C/J/DPP1]]、[[wikipedia:Cathepsin F|F]]、[[wikipedia:Cathepsin H|H/I]]、[[wikipedia:Cathepsin K|K/O2]]、[[wikipedia:Cathepsin L|L]]、[[wikipedia:Cathepsin O|O]]、[[wikipedia:Cathepsin S|S]]、[[wikipedia:Cathepsin L2|V/L2/U]]、[[wikipedia:Cathepsin W|W]]、[[wikipedia:cathepsin Z|X/P/Z/Y]]、[[wikipedia:LGMN|Legumain]])、[[wikipedia:JA:アスパラギン酸プロテアーゼ|アスパラギン酸プロテアーゼ]](カテプシン[[wikipedia:cathepsin D|D]]、[[wikipedia:Cathepsin E|E]]、[[wikipedia:NAPSA|Napsin]])、[[wikipedia:JA:セリンプロテアーゼ|セリンプロテアーゼ]](カテプシン[[wikipedia:Cathepsin A|A]]、[[wikipedia:Cathepsin G|G]]、[[wikipedia:TPP1|TPP1]])に分類される。 | ||
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===膜タンパク質=== | ===膜タンパク質=== | ||
リソソーム膜タンパク質は100種類以上存在し、多くは内腔側に向け高度に[[wikipedia:JA:糖鎖|糖鎖]]修飾されている。それらの糖鎖修飾は、加水分解酵素の作用から逃れるために重要であると考えられている。主要なリソソーム膜タンパク質としては、[[wikipedia:LAMP1|LAMP-1]]、[[wikipedia:LAMP2|LAMP-2]]、[[wikipedia:SCARB2|LIMP-2]]などがあり、これらは全リソソーム膜タンパク質量の50%以上を占める<ref name="ref4"><pubmed> 19672277 </pubmed></ref>。LAMP- | リソソーム膜タンパク質は100種類以上存在し、多くは内腔側に向け高度に[[wikipedia:JA:糖鎖|糖鎖]]修飾されている。それらの糖鎖修飾は、加水分解酵素の作用から逃れるために重要であると考えられている。主要なリソソーム膜タンパク質としては、[[wikipedia:LAMP1|LAMP-1]]、[[wikipedia:LAMP2|LAMP-2]]、[[wikipedia:SCARB2|LIMP-2]]などがあり、これらは全リソソーム膜タンパク質量の50%以上を占める<ref name="ref4"><pubmed> 19672277 </pubmed></ref>。LAMP-2は[[wikipedia:JA:リソソーム病|リソソーム病]]の[[wikipedia:JA:ダノン病|ダノン病]]([[wikipedia:Danon disease|Danon disease]])の原因遺伝子として知られている。 | ||
リソソーム膜には液胞型プロトンポンプ(V型/液胞型[[wikipedia:JA:ATPアーゼ|ATPアーゼ]]、vacuolar type H+- | リソソーム膜には液胞型プロトンポンプ(V型/液胞型[[wikipedia:JA:ATPアーゼ|ATPアーゼ]]、vacuolar type H+-ATPase、V-ATPase)や[[塩化物イオンチャネル]](chloride channel)が存在し、リソソーム内腔にそれぞれ[[wikipedia:JA:水素イオン|水素イオン]]、[[wikipedia:JA:塩化物|塩化物イオン]]を輸送することで、内腔を低いpHに維持している。V-ATPaseは多数の[[wikipedia:JA:サブユニット|サブユニット]]から構成される[[wikipedia:JA:超分子|超分子]]複合体であり、[[wikipedia:JA:アデノシン三リン酸|ATP]]を加水分解する親水性の触媒頭部(V1)と、水素イオンを輸送する膜内在性部分(V0)から構成される。ATPの加水分解反応と共役した回転触媒機構によって水素イオンをリソソーム内に輸送する。V-ATPaseは進化的、構造的に[[ミトコンドリア]]に局在する[[wikipedia:F-ATPase|F-ATPase]]に類似している。 | ||
リソソーム膜には最終分解産物([[wikipedia:JA:アミノ酸|アミノ酸]]、[[wikipedia:JA:ジペプチド|ジペプチド]]、[[wikipedia:JA:トリペプチド|トリペプチド]]、[[wikipedia:JA:糖|糖]]、[[wikipedia:JA:核酸|核酸]]、無機[[wikipedia:JA:イオン|イオン]]、[[wikipedia:JA:ビタミン|ビタミン]]、[[wikipedia:JA:コレステロール|コレステロール]]、[[wikipedia:JA:リン脂質|リン脂質]]など)を[[wikipedia:JA:細胞質|細胞質]]に送り出す様々な[[wikipedia:JA:膜輸送体|トランスポーター]]が存在しており、分解産物の再利用に重要である<ref name="ref5"><pubmed> 19146888 </pubmed></ref>。これらのトランスポーターの多くは水素イオンの濃度勾配を利用した二次性[[wikipedia:JA:能動輸送|能動輸送]]によって基質を共輸送すると考えられている。例えば最初に同定されたリソソーム膜トランスポーターである[[wikipedia:Cystinosin|Cystinosin]]は、アミノ酸の[[wikipedia:JA:シスチン|シスチン]]を水素イオンとともにリソソーム外へ共輸送するアミノ酸トランスポーターである。Cystinosinはリソソーム病のシスチノーシス([[wikipedia:Cystinosis|Cystinosis]])の原因遺伝子として同定されている。 | リソソーム膜には最終分解産物([[wikipedia:JA:アミノ酸|アミノ酸]]、[[wikipedia:JA:ジペプチド|ジペプチド]]、[[wikipedia:JA:トリペプチド|トリペプチド]]、[[wikipedia:JA:糖|糖]]、[[wikipedia:JA:核酸|核酸]]、無機[[wikipedia:JA:イオン|イオン]]、[[wikipedia:JA:ビタミン|ビタミン]]、[[wikipedia:JA:コレステロール|コレステロール]]、[[wikipedia:JA:リン脂質|リン脂質]]など)を[[wikipedia:JA:細胞質|細胞質]]に送り出す様々な[[wikipedia:JA:膜輸送体|トランスポーター]]が存在しており、分解産物の再利用に重要である<ref name="ref5"><pubmed> 19146888 </pubmed></ref>。これらのトランスポーターの多くは水素イオンの濃度勾配を利用した二次性[[wikipedia:JA:能動輸送|能動輸送]]によって基質を共輸送すると考えられている。例えば最初に同定されたリソソーム膜トランスポーターである[[wikipedia:Cystinosin|Cystinosin]]は、アミノ酸の[[wikipedia:JA:シスチン|シスチン]]を水素イオンとともにリソソーム外へ共輸送するアミノ酸トランスポーターである。Cystinosinはリソソーム病のシスチノーシス([[wikipedia:Cystinosis|Cystinosis]])の原因遺伝子として同定されている。 | ||
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===局在化機構=== | ===局在化機構=== | ||
リソソーム可溶性タンパク質の多くは、生合成経路およびエンドサイトーシス経路を介してリソソームに輸送される(図)。[[粗面小胞体]] | リソソーム可溶性タンパク質の多くは、生合成経路およびエンドサイトーシス経路を介してリソソームに輸送される(図)。[[粗面小胞体]]で合成された加水分解酵素などの可溶性タンパク質は、シスゴルジ体で糖鎖部分にマンノース6-リン酸([[wikipedia:mannose 6-phosphate|mannose 6-phosphate]]: M6P)の付加を受け、トランスゴルジ網でマンノース6-リン酸受容体([[wikipedia:Mannose 6-phosphate receptor|mannose 6-phosphate receptor]])と結合し、[[クラスリン]]/[[アダプタータンパク質]]小胞に取り込まれる。その後、クラスリン被覆は脱重合し、被覆を失った小胞は後期エンドソームと融合する。後期エンドソームに入ったリソソーム酵素は、酸性環境下におかれることでM6P受容体から解離し、マンノース残基のリン酸基が除去され、リソソームへ輸送される。被覆タンパク質とM6P受容体はトランスゴルジ網に回収され再利用される。なおM6P非依存的な局在化機構も存在する<ref name="ref4" />。 | ||
リソソーム可溶性タンパク質への特異的なM6Pの付加は、ゴルジ体に局在するN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)-1-リン酸転移酵素([[wikipedia:N-acetylglucosamine-1-phosphate transferase|N-acetylglucosamine-1-phosphate transferase]])およびGlcNAc-1-リン酸ジエステルα-GlcNAc転移酵素([[wikipedia:N-acetylglucosamine-1-phosphodiester alpha-N-acetylglucosaminidase|N-acetylglucosamine-1-phosphodiester-α-N-acetylglucosaminidase]] | リソソーム可溶性タンパク質への特異的なM6Pの付加は、ゴルジ体に局在するN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)-1-リン酸転移酵素([[wikipedia:N-acetylglucosamine-1-phosphate transferase|N-acetylglucosamine-1-phosphate transferase]])およびGlcNAc-1-リン酸ジエステルα-GlcNAc転移酵素([[wikipedia:N-acetylglucosamine-1-phosphodiester alpha-N-acetylglucosaminidase|N-acetylglucosamine-1-phosphodiester-α-N-acetylglucosaminidase]])が担っている。多くのリソソーム酵素は前者に特異的に認識されるアミノ酸配列を持ち、この酵素が欠損すると様々なリソソーム酵素がリソソームに輸送されず、リソソーム病の[[wikipedia:ja:ムコ脂質症Ⅱ型|ムコ脂質症Ⅱ型]](I細胞病、[[wikipedia:I-cell disease|I-cell disease]])・[[wikipedia:ja:ムコ脂質症ⅡI型|IⅡ型]]を引き起こす。 | ||
リソソーム膜タンパク質の局在化機構の詳細は十分に明らかにされていないが、細胞質領域に輸送シグナル(チロシンモチーフ、ジロイシンモチーフなど)を持つものはトランスゴルジ網でクラスリン/アダプタータンパク質小胞に取り込まれ、後期エンドソームを経てリソソームに運ばれると考えられている<ref name="ref4" />。またLAMP-1などの膜タンパク質の一部は構成性分泌経路(constitutive secretory pathway)を介してもリソソームに運ばれる。この場合は、ゴルジ体を出たあと[[wikipedia:JA:細胞膜|細胞膜]]表面に運ばれ、エンドサイトーシス経路でリソソームに到達すると考えられている<ref name="ref4" />。 | リソソーム膜タンパク質の局在化機構の詳細は十分に明らかにされていないが、細胞質領域に輸送シグナル(チロシンモチーフ、ジロイシンモチーフなど)を持つものはトランスゴルジ網でクラスリン/アダプタータンパク質小胞に取り込まれ、後期エンドソームを経てリソソームに運ばれると考えられている<ref name="ref4" />。またLAMP-1などの膜タンパク質の一部は構成性分泌経路(constitutive secretory pathway)を介してもリソソームに運ばれる。この場合は、ゴルジ体を出たあと[[wikipedia:JA:細胞膜|細胞膜]]表面に運ばれ、エンドサイトーシス経路でリソソームに到達すると考えられている<ref name="ref4" />。 |