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== 神経変性疾患とBMPシグナル == | == 神経変性疾患とBMPシグナル == | ||
[[神経変性疾患]]の中には原因遺伝子のいくつかが同定されているものがあるが、その中にはBMPシグナルとの関連が認められる場合がある。 | |||
===遺伝性痙性対麻痺 === | |||
[[遺伝性痙性対麻痺]](hereditary spastic paraplegia)にみられる変異遺伝子の一つである[[NIPA1]]のショウジョウバエホモログである[[spichthyin]]の変異体では、リン酸化Madが正常の4倍ほどに増え、神経筋接合部の[[シナプスボタン]](synaptic bouton)の数も2倍に増えてしまう。哺乳類細胞の培養実験からもNIPA1がBMPシグナルを抑制することが示されている。 | |||
[[多発性硬化症]](Multiple | |||
===筋萎縮性側索硬化症=== | |||
[[筋萎縮性側索硬化症]](Amyotrophic Lateral Sclerosis, ALS)の場合、90%は自然発症だが、家族性のものには[[VapB]]遺伝子に変異があるケースがある。ショウジョウバエのVapB変異体では神経筋接合部のシナプスボタンの数が減少し、過剰発現した場合にはシナプスボタンの数の増加と神経筋接合部の肥大がおこる。このような表現型はそれぞれリン酸化Madの減少、増加を伴っており、やはりBMPシグナルとの関連が示唆される。また、自然発症型ALS患者の運動ニューロンにおいて、リン酸化SMADの減少が報告されている。 | |||
===脊髄性筋萎縮=== | |||
I型の[[脊髄性筋萎縮]] (spinal muscular atrophy00の患者ではしばしば[[Survival of Motor Neuron 1]](Smn1)遺伝子の欠損やコピー数の異常がみられる。Smn1遺伝子の異常と脊髄性筋萎縮との関連はまだはっきりしないが、ショウジョウバエのSmn1変異体では神経筋接合部のシナプスボタンの数が減少し、リン酸化Madの量も減少する。また、この表現型はBMPシグナルの低下によって増強される。 | |||
===多発性硬化症=== | |||
[[多発性硬化症]](Multiple Sclerosis)については、[[Clec16A]]遺伝子の多型との関連が示唆されている。ショウジョウバエのClec16Aホモログである[[endosomal maturation defective]](ema)変異体では[[シナプスボタン]]の肥大が見られ、[[Tkv]]の発現量が2倍、リン酸化Madも4倍に増加する。多発性硬化症患者の異常部位ではBMP4やBMP5、多発性硬化症モデルマウスではBMP4、6、7の発現上昇が報告されている。これらのことから、さまざまな神経変性疾患とBMPシグナルの異常の関連が示唆されており、治療への応用が期待される。 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |