「高速液体クロマトグラフィー」の版間の差分

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===神経伝達モノアミンとその代謝物、およびアセチルコリンの分析(電気化学検出法)===
===神経伝達モノアミンとその代謝物、およびアセチルコリンの分析(電気化学検出法)===


#電気化学検出の原理<br> [[wikipedia:JA:酸化還元活性|酸化還元活性]]を有する物質を高感度に検出する方法である。一定の電位を印加した電極上で物質が[[wikipedia:JA:酸化|酸化]]又は[[wikipedia:JA:還元|還元]]された時に流れる電流を検出する。電流量は濃度に比例する為、定量分析が可能である。検出器には、電流測定検出器 (Amperometric detector) と電量検出器(Coulometric detector) の2種類があり、一般的にHPLCにおいては電流測定検出器を用いることが多い。これは、電量検出器に比べて電解効率が大幅に低いものの、良いシグナルノイズ比・感度が得られるためである。検出セルは作用電極、参照電極、対極電極からなり、作用電極は測定対象に応じて[[wikipedia:JA:グラッシーカーボン|グラッシーカーボン]]、[[wikipedia:JA:グラファイト|グラファイト]]、[[wikipedia:JA:白金|白金]]などを使用する。電気化学検出は1950年代にKemuraによって最初にクロマトグラフィーの検出法として用いられ、1960年代後半から1970年代前半にかけてAdamsらにより[[カテコールアミン]]および[[wikipedia:JA:アスコルビン酸|アスコルビン酸]]の分析に応用された。それからさらなる改良が重ねられ、現在神経伝達物質およびその代謝物の定量方法として、一般的な技術となっている。詳細な測定原理や方法については、Meffordによる総説<ref name=ref2><pubmed>6163932</pubmed></ref>やZapataらのプロトコル<ref name=ref3><pubmed>19575473</pubmed></ref>等が参考となる。
 
#アセチルコリンおよびコリンの分析<br> [[アセチルコリン]]のHPLC-ECDを用いた分析は、1983年にPotterらによって最初に報告された。アセチルコリンは電気化学的に不活性である為、分離用の本カラムの下流に[[アセチルコリンエステラーゼ]] (AChE)および [[コリンオキシダーゼ]] (ChO) を固定化した酵素カラムを配置し、オンラインで加水分解・酸化することで生成した[[wikipedia:JA:過酸化水素|過酸化水素]]を白金電極にて検出する (印加電圧 +450 mV vs Ag/AgCl) 。陽イオン交換カラムとともに、移動相にリン酸バッファーを用いることで、アセチルコリンとコリンの分離、そして短時間分析の両立が可能である。
#アセチルコリンおよびコリンの分析<br> [[アセチルコリン]]のHPLC-ECDを用いた分析は、1983年にPotterらによって最初に報告された。アセチルコリンは電気化学的に不活性である為、分離用の本カラムの下流に[[アセチルコリンエステラーゼ]] (AChE)および [[コリンオキシダーゼ]] (ChO) を固定化した酵素カラムを配置し、オンラインで加水分解・酸化することで生成した[[wikipedia:JA:過酸化水素|過酸化水素]]を白金電極にて検出する (印加電圧 +450 mV vs Ag/AgCl) 。陽イオン交換カラムとともに、移動相にリン酸バッファーを用いることで、アセチルコリンとコリンの分離、そして短時間分析の両立が可能である。
#モノアミンおよびその代謝物の分析(測定例)<br> グラファイト電極に +700 mV 程度の電位を印加することでカテコールアミン([[ドーパミン]]、[[ノルアドレナリン]]、[[アドレナリン]]等)や、インドールアミン([[セロトニン]]等)、およびその代謝物の酸化反応をfmolオーダーで検出する(図4-A)。酸化還元電位は物質に固有であり、印加電位を変えることで選択的な検出が可能である。カテコールアミンは特に酸化を受けやすく、印加電位を +500 mV 程度まで下げることで選択的に検出することができる。HPLCにおける各成分の分離はアイソクラティック法で行われ、移動相に用いる有機溶媒の種類および濃度、イオンペア試薬の濃度、 pH が大きな影響を及ぼす。有機溶媒には主にメタノールおよびアセトニトリルが用いられるが、濃度を上げることでアミンとその代謝物の溶出時間は早くなり、イオンペア試薬の濃度を上げることでアミンの溶出時間のみ遅くなる。またpH を上げると、ジオキシフェニル酢酸(DOPAC)やホモバニリン酸(HVA)など酸性の代謝物の溶出時間は早くなる。最適な印加電圧、移動相条件、カラムの種類を選択することで、脳組織中のモノアミンとその代謝物の一斉分析や、脳透析液中のドーパミンおよびセロトニンの短時間での高感度同時分析も可能である。<br>[測定例] マウス脳組織中のモノアミンとその代謝物の一斉分析(図4-B,C,D)<br /> [[マウス]][[線条体]]片側および[[小脳]]を各々摘出し、120 μL の0.2 M過塩素酸(100 μM EDTA・2Na含有)でホモジナイズ後、氷上で15分放置した。次に、遠心分離 (15,000 rpm, 20 分, 4 ℃) を行い、上清をpH3付近に調製後、0.45 μm フィルターでろ過したものを測定試料とした。分析条件はエイコム情報<ref name=ref4>エイコム情報 No.25 モノアミンおよびそれらの代謝物の分析2; EICOMPAK SC-5ODS(φ3 mm)カラムによる脳ホモジネートサンプルの分析<br />''エイコム株式会社'', 2001.4.</ref>に従い、アイソクラティック法で行った。その結果、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンとその代謝物の合計10成分の同時分析が30分で可能であった(ISO:[[イソプロテレノール]], 内部標準物質)。同条件にて、脳組織を用いたサンプルにおいても妨害ピークなく分析ができる。
#モノアミンおよびその代謝物の分析(測定例)<br> グラファイト電極に +700 mV 程度の電位を印加することでカテコールアミン([[ドーパミン]]、[[ノルアドレナリン]]、[[アドレナリン]]等)や、インドールアミン([[セロトニン]]等)、およびその代謝物の酸化反応をfmolオーダーで検出する(図4-A)。酸化還元電位は物質に固有であり、印加電位を変えることで選択的な検出が可能である。カテコールアミンは特に酸化を受けやすく、印加電位を +500 mV 程度まで下げることで選択的に検出することができる。HPLCにおける各成分の分離はアイソクラティック法で行われ、移動相に用いる有機溶媒の種類および濃度、イオンペア試薬の濃度、 pH が大きな影響を及ぼす。有機溶媒には主にメタノールおよびアセトニトリルが用いられるが、濃度を上げることでアミンとその代謝物の溶出時間は早くなり、イオンペア試薬の濃度を上げることでアミンの溶出時間のみ遅くなる。またpH を上げると、ジオキシフェニル酢酸(DOPAC)やホモバニリン酸(HVA)など酸性の代謝物の溶出時間は早くなる。最適な印加電圧、移動相条件、カラムの種類を選択することで、脳組織中のモノアミンとその代謝物の一斉分析や、脳透析液中のドーパミンおよびセロトニンの短時間での高感度同時分析も可能である。<br>[測定例] マウス脳組織中のモノアミンとその代謝物の一斉分析(図4-B,C,D)<br /> [[マウス]][[線条体]]片側および[[小脳]]を各々摘出し、120 μL の0.2 M過塩素酸(100 μM EDTA・2Na含有)でホモジナイズ後、氷上で15分放置した。次に、遠心分離 (15,000 rpm, 20 分, 4 ℃) を行い、上清をpH3付近に調製後、0.45 μm フィルターでろ過したものを測定試料とした。分析条件はエイコム情報<ref name=ref4>エイコム情報 No.25 モノアミンおよびそれらの代謝物の分析2; EICOMPAK SC-5ODS(φ3 mm)カラムによる脳ホモジネートサンプルの分析<br />''エイコム株式会社'', 2001.4.</ref>に従い、アイソクラティック法で行った。その結果、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンとその代謝物の合計10成分の同時分析が30分で可能であった(ISO:[[イソプロテレノール]], 内部標準物質)。同条件にて、脳組織を用いたサンプルにおいても妨害ピークなく分析ができる。

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