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[[wikipedia:ja:サソリ|サソリ]]や[[wikipedia:ja:イソギンチャク|イソギンチャク]]、[[wikipedia:ja:クモ|クモ]]などの種々の生物毒はNavチャネルに結合することが知られているが、結合性はαサブユニット間で異なる。[[フグ毒]]として知られている[[テトロドトキシン]](tetrodotoxin, TTX)はNavチャネルの細胞外側に結合し、ナトリウムイオン透過を阻害する。テトロドトキシンは多くのナトリムチャネルに結合するが、Nav1.5、Nav1.8およびNav1.9はテトロドトキシン抵抗性である。 | [[wikipedia:ja:サソリ|サソリ]]や[[wikipedia:ja:イソギンチャク|イソギンチャク]]、[[wikipedia:ja:クモ|クモ]]などの種々の生物毒はNavチャネルに結合することが知られているが、結合性はαサブユニット間で異なる。[[フグ毒]]として知られている[[テトロドトキシン]](tetrodotoxin, TTX)はNavチャネルの細胞外側に結合し、ナトリウムイオン透過を阻害する。テトロドトキシンは多くのナトリムチャネルに結合するが、Nav1.5、Nav1.8およびNav1.9はテトロドトキシン抵抗性である。 | ||
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|+ '''表 各αサブユニットの発現場所、および機能等''' | |+ '''表 各αサブユニットの発現場所、および機能等''' | ||
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2011年、Catterallらは[[wikipedia:ja:真正細菌|真正細菌]]の一種である[[wikipedia:Arcobacter|Arcobacter butzleri]]由来の電位依存性ナトリウムチャネル(NaChBac)を用いてX線結晶構造解析を行い、その[[wikipedia:JA:三次元構造|三次元構造]]を明らかにした<ref><pubmed> 21743477 </pubmed></ref>。[[wikipedia:ja:真核生物|真核生物]]のNavチャネルが1分子に4つのリピート構造を含んでいるのに対して、NachBacはホモ4量体として機能する。電位依存性カリウムチャネルの構造と同様に、αサブユニットの各リピートのS5およびS6が集まってポアドメインを形成し、その四隅にS1からS4によって構成される電位センサーが配置する(図3参照)。 | 2011年、Catterallらは[[wikipedia:ja:真正細菌|真正細菌]]の一種である[[wikipedia:Arcobacter|Arcobacter butzleri]]由来の電位依存性ナトリウムチャネル(NaChBac)を用いてX線結晶構造解析を行い、その[[wikipedia:JA:三次元構造|三次元構造]]を明らかにした<ref><pubmed> 21743477 </pubmed></ref>。[[wikipedia:ja:真核生物|真核生物]]のNavチャネルが1分子に4つのリピート構造を含んでいるのに対して、NachBacはホモ4量体として機能する。電位依存性カリウムチャネルの構造と同様に、αサブユニットの各リピートのS5およびS6が集まってポアドメインを形成し、その四隅にS1からS4によって構成される電位センサーが配置する(図3参照)。 | ||
イオン選択性は孔が一番狭くなっている[[イオン選択性フィルター]] | イオン選択性は孔が一番狭くなっている[[イオン選択性フィルター]]と呼ばれる部分で決定されている。Navチャネルは[[wikipedia:JA:グアニジン|グアニジウムイオン]]などの[[wikipedia:ja:イオン半径|イオン半径]]の大きいイオンに対してもある程度の透過性を持つことから、Navチャネルのイオン選択性フィルターの幅はナトリウムイオンよりも大きく、ナトリウムイオン1分子に対し、1分子の水を配位した状態で、孔を選択的に透過するという考えが提唱されてきた<ref>'''Bertil Hille''' <br>Ion Channels of Excitable Membrane third edition<br>Sinauer Associates,Inc.(Massachusetts,USA)</ref>。実際、NaChBacの立体構造を見てみると、イオン選択性フィルターの一番狭くなっている部分の幅は、ちょうどナトリウムイオンに水分子が1つ配位したときのサイズに近いことが明らかになった。 | ||
== イオン選択性 == | == イオン選択性 == | ||
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”遅い”不活性化については”速い”不活性化ほど分子機構は明瞭ではない。[[ヒト]]の[[wikipedia:JA:骨格筋|骨格筋]]や[[wikipedia:JA:心筋|心筋]]の興奮性の異常を示すいくつかの遺伝病の研究により、”遅い”不活性化の異常を引き起こすアミノ酸変異が見つかっている。変異は複数の部分に渡っているため、”遅い”不活性化の過程には複数のドメインが関与していると考えられる。 | ”遅い”不活性化については”速い”不活性化ほど分子機構は明瞭ではない。[[ヒト]]の[[wikipedia:JA:骨格筋|骨格筋]]や[[wikipedia:JA:心筋|心筋]]の興奮性の異常を示すいくつかの遺伝病の研究により、”遅い”不活性化の異常を引き起こすアミノ酸変異が見つかっている。変異は複数の部分に渡っているため、”遅い”不活性化の過程には複数のドメインが関与していると考えられる。 | ||
通常、Navチャネルは不活性化が速いため、一過的にしか内向き電流は流れないが、[[小脳]]の[[プルキンエ細胞]]をはじめ多くの[[神経細胞]]では、長時間にわたり不活性化せずに開き続ける持続的な内向き電流が存在する([[持続性ナトリウム電流]])。また、これに加えて小脳のプルキンエ細胞などでは、不活性化状態ののち再開口が起こりやすく(Resurgent電流)、これにより[[スパイク]]の後に[[脱分極]] | 通常、Navチャネルは不活性化が速いため、一過的にしか内向き電流は流れないが、[[小脳]]の[[プルキンエ細胞]]をはじめ多くの[[神経細胞]]では、長時間にわたり不活性化せずに開き続ける持続的な内向き電流が存在する([[持続性ナトリウム電流]])。また、これに加えて小脳のプルキンエ細胞などでは、不活性化状態ののち再開口が起こりやすく(Resurgent電流)、これにより[[スパイク]]の後に[[脱分極]]が引き起こされることが知られているが、その分子メカニズムについては十分には分かっていない。 | ||
== 薬剤による機能の修飾 == | == 薬剤による機能の修飾 == | ||
Navチャネルに特異的に結合し、その性質を変える種々の薬剤が知られている(表参照)。最も早く発見されたのは、フグ毒として知られているテトロドトキシン<ref><pubmed>14426011</pubmed></ref><ref><pubmed>14155438</pubmed></ref>で、Navチャネルのポアドメインに結合して、イオン透過を阻害する。[[ | Navチャネルに特異的に結合し、その性質を変える種々の薬剤が知られている(表参照)。最も早く発見されたのは、フグ毒として知られているテトロドトキシン<ref><pubmed>14426011</pubmed></ref><ref><pubmed>14155438</pubmed></ref>で、Navチャネルのポアドメインに結合して、イオン透過を阻害する。[[&beta-サソリ毒]]はNavチャネルの電位センサー部分に結合し、不活性化を阻害する。また、[[アコニチニン]](トリカブトの成分)、[[グラヤノトキシン]]、[[ベラトリジン]]、[[バトラコトキシン]]は[[wikipedia:ja:細胞膜|細胞膜]]を透過し、細胞の内側からNavチャネルに結合して、Navチャネルが開いている時間を長くする作用がある。また[[局所麻酔薬]]として知られている[[リドカイン]]は不活性化状態を安定化し電流量を減らす作用がある。 | ||
== 転写の制御 == | == 転写の制御 == | ||
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*[[電位依存性イオンチャネル]] | *[[電位依存性イオンチャネル]] | ||
*[[イオン選択性フィルター]] | *[[イオン選択性フィルター]] | ||
*[[膜電位センサー]] | *[[膜電位センサー]] | ||
*[[ゲート]] | *[[ゲート]] | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |
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