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Hidekikashiwadani (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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=== 鋤鼻上皮におけるゾーン構造 === | === 鋤鼻上皮におけるゾーン構造 === | ||
哺乳類では、主嗅覚系とは別にフェロモンを受容するための感覚系として副嗅覚系(鋤鼻嗅覚系)が存在する。フェロモン受容体を発現する鋤鼻神経は鋤鼻器の鋤鼻上皮に細胞体を持ち、その軸索を副嗅覚系一次中枢である副嗅球へ投射する。鋤鼻神経に発現するフェロモン受容体はその構造からV1RとV2Rの2群に分類される(Dulac and Axel 1995, Herrada and Dulac 1997,Ryba and Tirindelli 1997, Matsunami and Buck 1997)。げっ歯類ではV1RはGi2αタンパク質と共役して鋤鼻上皮上層部(apical zone)の鋤鼻神経に発現し、V2RはGoαタンパク質と共役して鋤鼻上皮基底部(basal zone)の鋤鼻神経に発現する。つまりV1Rを発現する鋤鼻神経細胞とV2Rを発現する鋤鼻神経細胞は排他的な2つのゾーンを鋤鼻上皮上で形成している(Berghard and Buck 1996, Jia and Halpern 1996)(図2)。 <br> | 哺乳類では、主嗅覚系とは別にフェロモンを受容するための感覚系として副嗅覚系(鋤鼻嗅覚系)が存在する。フェロモン受容体を発現する鋤鼻神経は鋤鼻器の鋤鼻上皮に細胞体を持ち、その軸索を副嗅覚系一次中枢である副嗅球へ投射する。鋤鼻神経に発現するフェロモン受容体はその構造からV1RとV2Rの2群に分類される(Dulac and Axel 1995, Herrada and Dulac 1997,Ryba and Tirindelli 1997, Matsunami and Buck 1997)。げっ歯類ではV1RはGi2αタンパク質と共役して鋤鼻上皮上層部(apical zone)の鋤鼻神経に発現し、V2RはGoαタンパク質と共役して鋤鼻上皮基底部(basal zone)の鋤鼻神経に発現する。つまりV1Rを発現する鋤鼻神経細胞とV2Rを発現する鋤鼻神経細胞は排他的な2つのゾーンを鋤鼻上皮上で形成している(Berghard and Buck 1996, Jia and Halpern 1996)(図2)。 <br> | ||
=== <br>副嗅球におけるゾーン構造 === | === <br>副嗅球におけるゾーン構造 === | ||
鋤鼻上皮上で異なるゾーンに位置するV1R鋤鼻神経、V2R鋤鼻神経は、副嗅球の異なるゾーンに投射することが知られている。V1R鋤鼻神経はGi2αを、V2R鋤鼻神経はGoαを共発現するが、鋤鼻神経の投射先である副嗅球でその発現を調べると、副嗅球前方部(rostral zone)はGi2α陽性の鋤鼻神経が、副嗅球後方部(caudal zone)にはGoα陽性鋤鼻神経が軸索投射することが明らかになった。これはV1R鋤鼻神経は、鋤鼻上皮apical zoneから副嗅球rostral zoneへ、V2R鋤鼻神経は鋤鼻上皮basal zoneから副嗅球caudal zoneへ、zone-to-zone | 鋤鼻上皮上で異なるゾーンに位置するV1R鋤鼻神経、V2R鋤鼻神経は、副嗅球の異なるゾーンに投射することが知られている。V1R鋤鼻神経はGi2αを、V2R鋤鼻神経はGoαを共発現するが、鋤鼻神経の投射先である副嗅球でその発現を調べると、副嗅球前方部(rostral zone)はGi2α陽性の鋤鼻神経が、副嗅球後方部(caudal zone)にはGoα陽性鋤鼻神経が軸索投射することが明らかになった。これはV1R鋤鼻神経は、鋤鼻上皮apical zoneから副嗅球rostral zoneへ、V2R鋤鼻神経は鋤鼻上皮basal zoneから副嗅球caudal zoneへ、zone-to-zone projectionすることを表している。実際、個々のV1RやV2Rにレポーター遺伝子を発現させ、それぞれの受容体を発現する鋤鼻神経の投射パターンを調べると、V1R発現細胞は副嗅球rostral zoneのいくつかの糸球に、V2R発現細胞ではcaudal zoneのいくつかの糸球に軸索投射する様子があきらかになった(Belluscio et al 1999)。このゾーン選択的な軸索投射を反映して、V1Rと共発現するOCAMの発現パターンとしても副嗅球におけるゾーン構造を観察することができる(Yoshihara and Mori 1997)(図2)。 <br> | ||
=== <br>副嗅覚系におけるゾーン構造の機能 === | === <br>副嗅覚系におけるゾーン構造の機能 === | ||
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Zebrin IIの発現で区別される2つのゾーンの機能の違いはまだ明らかになっていない。しかしPLCβ(代謝型グルタミン酸受容体等7回膜貫通型受容体のシグナル伝達に重要)のサブタイプPLCβ3はZebrin II発現プルキンエ細胞に、PLCβ4はzebrin II非発現プルキンエ細胞に特異的に発現することから、zebrin IIで区分される2つのゾーンは異なるシナプス伝達特性を持つ可能性が考えられる(Sarna et al 2006)。<br> | Zebrin IIの発現で区別される2つのゾーンの機能の違いはまだ明らかになっていない。しかしPLCβ(代謝型グルタミン酸受容体等7回膜貫通型受容体のシグナル伝達に重要)のサブタイプPLCβ3はZebrin II発現プルキンエ細胞に、PLCβ4はzebrin II非発現プルキンエ細胞に特異的に発現することから、zebrin IIで区分される2つのゾーンは異なるシナプス伝達特性を持つ可能性が考えられる(Sarna et al 2006)。<br> | ||
図1: Mori et al 1999 (fig2)より転載 | 図1: Mori et al 1999 (fig2)より転載 | ||
図2: Mori et al 2000 (fig6)より転載 | 図2: Mori et al 2000 (fig6)より転載 | ||
図3: Apps and Hawkes 2009 (fig 4)より転載 | 図3: Apps and Hawkes 2009 (fig 4)より転載 | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
Apps and Hawkes 2009 PMID=19693030 | Apps and Hawkes 2009 PMID=19693030 | ||
Belluscio et al 1999 PMID=10219242<br>Berghard and Buck 1996 PMID=8558259<br>Brochu et al 1990 PMID=2329190 | |||
Dulac and Axel 1995 PMID=<br>Haga et al 2010 PMID=20596023<br>Herrada and Dulac 1997 PMID=<br>Isogai et al 2011 PMID=21937988<br>Jia and Halpern 1996 PMID=8782871<br>Kobayakawa et al 2007 PMID=17989651<br>Krieger et al 1999 PMID=9988702 | |||
Matsunami and Buck 1997 PMID=<br>Miyamichi et al 2005 PMID=15814789 | |||
Mori et al | Mori et al 1999 PMID= | ||
Ryba and Tirindelli 1997 PMID= | Mori et al 2000 PMID=<br>Namba et al 2011 PMID=21456012<br>Ressler et al 1993 PMID=7683976<br>Ressler et al 1994 PMID=7528109 | ||
Ryba and Tirindelli 1997 PMID= | |||
Sarna et al 2006 PMID=16566000<br>Sugihara and Shinoda 2004 PMID=15470143<br>Vasser et al 1993 PMID=8343958<br>Vasser et al 1994 PMID=8001145<br>Yoshihara et al 1997 PMID=9221781<br>Yoshihara and Mori 1997 PMID=9321710<br><br> | Sarna et al 2006 PMID=16566000<br>Sugihara and Shinoda 2004 PMID=15470143<br>Vasser et al 1993 PMID=8343958<br>Vasser et al 1994 PMID=8001145<br>Yoshihara et al 1997 PMID=9221781<br>Yoshihara and Mori 1997 PMID=9321710<br><br> |
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