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==音韻ループの構造== | ==音韻ループの構造== | ||
音韻ループは、他のワーキングメモリ要素に比べ、最も研究が進んでいるとされる。[[ファイル:PhonologicalLoop.jpg|300x250px|thumb| | 音韻ループは、他のワーキングメモリ要素に比べ、最も研究が進んでいるとされる。[[ファイル:PhonologicalLoop.jpg|300x250px|thumb|音韻ループの構造。Baddeley (1986, 2003, 2012) <ref name=ref5 /><ref name=ref2><pubmed>14523382</pubmed></ref><ref name=ref3><pubmed>21961947</pubmed></ref>を参考に作成。]]Baddeley (1986)<ref name =ref5>'''A D Baddeley'''<br>Working Memory<br>''Oxford University Press'':1986</ref> によれば、音韻ループは、音韻ループは音韻貯蔵庫 (phonological store) と、構音リハーサル (arituclatory rehearsal) という大きく2つのシステムから構成されている。入力信号は音韻貯蔵庫と出力バッファとの間で構音リハーサルを繰り返しながら記憶痕跡を強め、[[中央実行系]]の指令を受けて音声として出力される。このモデルによれば、聴覚呈示された音声入力は音韻貯蔵庫へと直接入力されるのに対し、視覚呈示された文字や語は貯蔵庫には直接入らず、視覚コードから聴覚コードへの変換後に構音リハーサルされることで音韻貯蔵庫へと入力されるのだという<ref name=ref2 />。 | ||
ただし、音韻ループは言語や音声に関する研究が主流であり、非言語の聴覚刺激(環境音や音楽等)処理ついてはほとんど研究がなされておらず、今後の研究が待たれる<ref name=ref3 />。 | |||
==心理学的証拠== | ==心理学的証拠== | ||
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==神経基盤== | ==神経基盤== | ||
ヒトの脳画像研究では、音韻ループの構成要素である音韻貯蔵庫と構音リハーサルがそれぞれ左半球の異なる部位で担われている事が明らかにされている。Paulesu et al (1993) は、ポジトロン断層法(PET)を用い、左の下部頭頂葉([[ブロードマン40野]])は音韻貯蔵に関与する一方、左の下前頭回(ブローカ野、[[ブロードマン44野]])は構音リハーサルに関わっている事を示した<ref><pubmed>8455719</pubmed></ref>。後のfMRI研究<ref><pubmed>10683393</pubmed></ref> や損傷患者研究<ref><pubmed>9204486</pubmed></ref> も概ねこの知見を支持している。 | |||
しかし、音韻貯蔵庫と構音リハーサルがそれぞれ単一の領域によって担われているとする知見は、必ずしも全ての研究で支持されているわけではない。音韻貯蔵庫は音声刺激からの直接入力を受けると仮定されているが、受動的な音声聴取のみでは下部頭頂葉は活性化せず、後部側頭葉の活性化を認めるなど<ref><pubmed>10847601</pubmed></ref>、音韻ループの下位要素は単一脳領域ではなく、複数の領域によって担われているとする知見も多い<ref><pubmed>10536084</pubmed></ref>。Buchsbaum & D'Esposito (2008) は、音韻ループの下位要素を単一領域に帰属させるような仕方ではなく、会話の知覚と生成に関与する会話処理の感覚運動系という観点から、音韻記憶という概念を整理すべきであると主張し、左の後部側頭平面 (planum temporale) が聴覚-運動のインタフェースとして働いているとした<ref><pubmed>18201133</pubmed></ref>。 | |||
==関連項目== | ==関連項目== | ||
*[[中央実行系]] | *[[中央実行系]] | ||
*[[ワーキングメモリー]] | *[[ワーキングメモリー]] |
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