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Yutakafurutani (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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神経系においてIgSF分子群は、細胞間の接着と認識、軸索の伸長とガイダンス、樹状突起の形態形成、さらにはシナプスの形成や成熟などの様々な発達ステップにおいて重要な機能を果たしている。以下にIgSF分子群の代表的な3つの機能を紹介する。 | 神経系においてIgSF分子群は、細胞間の接着と認識、軸索の伸長とガイダンス、樹状突起の形態形成、さらにはシナプスの形成や成熟などの様々な発達ステップにおいて重要な機能を果たしている。以下にIgSF分子群の代表的な3つの機能を紹介する。 | ||
=== | === 細胞接着 === | ||
インテグリンやカドヘリンなど他のファミリーに属する細胞接着分子群がMg2+やCa2+などの2価カチオン依存的に結合するのに対して、ほとんどのIgSF分子群の結合はカチオンを必要としない。細胞接着分子の結合様式には、同一細胞膜上に存在する分子間の結合(cis結合)と、対面する他の細胞に発現する分子との結合 (trans結合)があり、多くのIgSF分子群はこれら2種類両方の結合を担う。また、細胞外マトリックス蛋白質をリガンドとするIgSF分子群も数多く報告されている。 | インテグリンやカドヘリンなど他のファミリーに属する細胞接着分子群がMg2+やCa2+などの2価カチオン依存的に結合するのに対して、ほとんどのIgSF分子群の結合はカチオンを必要としない。細胞接着分子の結合様式には、同一細胞膜上に存在する分子間の結合(cis結合)と、対面する他の細胞に発現する分子との結合 (trans結合)があり、多くのIgSF分子群はこれら2種類両方の結合を担う。また、細胞外マトリックス蛋白質をリガンドとするIgSF分子群も数多く報告されている。 | ||
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軸索ガイダンスにおける機能とともに、多くのIsSF分子群は樹状突起の発達およびシナプス形成過程においても重要な役割を果たしている。 発達期において多くの神経細胞の樹状突起には、まるで薔薇の棘のように細く、長い突起構造が観察される。これは樹状突起フィロポディア(dendritic filopodia)と呼ばれ、その後スパインへと形態的かつ機能的に成熟して、シナプスの形成へと至る。テレンセファリン(Telencephalin; ICAM-5)は哺乳類終脳の神経細胞特異的な発現かつ樹状突起選択的な局在を示すIgSF分子である。テレンセファリンは、樹状突起フィロポディアに豊富に存在しており、樹状突起フィロポディアの形成及び維持を促進することで、スパインへの急速な成熟にブレーキをかけて臨界期を保つというユニークな機能を現す(図5)<ref><pubmed>21804538</pubmed></ref><ref><pubmed>17699668</pubmed></ref><ref><pubmed>16467526</pubmed></ref>。 特異的シナプスの形成過程においても多種多様なIgSF分子群が重要な役割を果たしている。Necl-2 (SynCAM 1)はシナプス前部と後部の両方に局在しており、ホモフィリックなcis結合及びtrans結合によって多量体を形成して、興奮性シナプスの形成を促進している<ref><pubmed>21145003</pubmed></ref>。Dscam, DscamL, Sidekick-1,-2はニワトリの網膜においてそれぞれ異なる介在神経細胞と網膜神経節細胞に発現しており、ホモフィリックな結合によってこれらの神経細胞間での特異的シナプス形成を制御している<ref><pubmed>18216854</pubmed></ref>。PTP&deltaはシナプス前部に局在しており、シナプス後部に局在するIL1RAPL1と、trans結合することによってシナプス形成を促進する。IL1RAPL1の遺伝子変異は非症候性精神遅滞や自閉症に関連している<ref><pubmed>21940441</pubmed></ref>。SALMは軸索伸長及びシナプス形成に関与しており、特にSALM5遺伝子は自閉症や家族性統合失調症への関連が示唆されている<ref><pubmed>21736948</pubmed></ref>。 以上のようにIgSF分子群は様々な神経システムにおいて、神経細胞タイプ特異的な発現パターンを呈し、軸索を適切な方向へと伸長し、樹状突起の形態を構築し、標的細胞を正しく認識して機能的シナプス結合を形成するための目印になっていると考えられる。これらIgSF分子群の発現・機能障害は、神経回路の形成不全を招き、多様な精神疾患の一因となっていると考えられている。 <br> | 軸索ガイダンスにおける機能とともに、多くのIsSF分子群は樹状突起の発達およびシナプス形成過程においても重要な役割を果たしている。 発達期において多くの神経細胞の樹状突起には、まるで薔薇の棘のように細く、長い突起構造が観察される。これは樹状突起フィロポディア(dendritic filopodia)と呼ばれ、その後スパインへと形態的かつ機能的に成熟して、シナプスの形成へと至る。テレンセファリン(Telencephalin; ICAM-5)は哺乳類終脳の神経細胞特異的な発現かつ樹状突起選択的な局在を示すIgSF分子である。テレンセファリンは、樹状突起フィロポディアに豊富に存在しており、樹状突起フィロポディアの形成及び維持を促進することで、スパインへの急速な成熟にブレーキをかけて臨界期を保つというユニークな機能を現す(図5)<ref><pubmed>21804538</pubmed></ref><ref><pubmed>17699668</pubmed></ref><ref><pubmed>16467526</pubmed></ref>。 特異的シナプスの形成過程においても多種多様なIgSF分子群が重要な役割を果たしている。Necl-2 (SynCAM 1)はシナプス前部と後部の両方に局在しており、ホモフィリックなcis結合及びtrans結合によって多量体を形成して、興奮性シナプスの形成を促進している<ref><pubmed>21145003</pubmed></ref>。Dscam, DscamL, Sidekick-1,-2はニワトリの網膜においてそれぞれ異なる介在神経細胞と網膜神経節細胞に発現しており、ホモフィリックな結合によってこれらの神経細胞間での特異的シナプス形成を制御している<ref><pubmed>18216854</pubmed></ref>。PTP&deltaはシナプス前部に局在しており、シナプス後部に局在するIL1RAPL1と、trans結合することによってシナプス形成を促進する。IL1RAPL1の遺伝子変異は非症候性精神遅滞や自閉症に関連している<ref><pubmed>21940441</pubmed></ref>。SALMは軸索伸長及びシナプス形成に関与しており、特にSALM5遺伝子は自閉症や家族性統合失調症への関連が示唆されている<ref><pubmed>21736948</pubmed></ref>。 以上のようにIgSF分子群は様々な神経システムにおいて、神経細胞タイプ特異的な発現パターンを呈し、軸索を適切な方向へと伸長し、樹状突起の形態を構築し、標的細胞を正しく認識して機能的シナプス結合を形成するための目印になっていると考えられる。これらIgSF分子群の発現・機能障害は、神経回路の形成不全を招き、多様な精神疾患の一因となっていると考えられている。 <br> | ||
== 関連項目 == | |||
細胞接着分子、L1 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |
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