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チロシンフォスファターゼには、107種が存在する。 | チロシンフォスファターゼには、107種が存在する。 | ||
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チロシンキナーゼは構造的に、[[wikipedia:ja:|膜貫通領域]]を持つ[[受容体]]型と膜貫通領域を持たない非受容体型(以下に記載)とに大別される。ヒトには58種の[[受容体型チロシンキナーゼ]]と32種の非受容体型チロシンキナーゼが存在する。同様に、チロシンフォスファターゼは、膜貫通領域を持つ受容体型および膜貫通領域を持たない非受容体型に大別される。チロシンキナーゼ、チロシンフォスファターゼ共に、受容体型は細胞膜上に、非受容体型は細胞質に存在する。 | |||
1979年Tony Hunterにより、[[wikipedia:ja:|癌遺伝子産物]][[wikipedia|V-Src]]および[[wikipedia:ja:|癌原遺伝子産物]][[wikipedia|C-Src]]がチロシンリン酸化活性を持つことが発見された<ref><pubmed>19269802</pubmed></ref>。これが最初のチロシンキナーゼの報告例であり、以後、多くのチロシンキナーゼが同定された。Srcを含む非受容体型チロシンキナーゼは、分子構造として細胞外領域をもたず、細胞内領域にチロシンキナーゼドメインをもつ。受容体型チロシンキナーゼと同様に、非受容体型チロシンキナーゼもキナーゼドメイン中には自己リン酸化部位およびATP結合部位を含み、自己リン酸化によりキナーゼ活性を調節している。受容体型チロシンキナーゼと異なり、非受容体型チロシンキナーゼには、直接的に結合するリガンドはない。上位の制御因子は細胞膜上に存在する種々の受容体タンパク質であり、非受容体型チロシンキナーゼは、神経系においても様々な膜受容体と会合して、膜受容体から細胞内への情報伝達を担う。Srcファミリーチロシンキナーゼは、現在までに[[wikipedia:|Src]]、[[wikipedia:|Yes]]、[[wikipedia:|Fyn]]、[[wikipedia:|Fgr]]、[[wikipedia:|Lyn]]、[[wikipedia:|Lck]]、[[wikipedia:|Hck]]、[[wikipedia:|Blk]]、[[wikipedia:|Frk]]の9種が同定されており、脳では、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lckが高発現を示す。発現部位ごとに[[wikipedia:ja:|スプライシング]]多様性がみられるものもある。Srcファミリーチロシンキナーゼの場合、N末端領域に[[ミリスチル化]]部位や[[パルミトイル化]]部位を有し、これらの[[wikipedia:ja:|脂肪酸]]結合により細胞膜に付着し、膜近辺に局在する様になる。 | |||
タンパク質間の結合を制御する機構として、多くの非受容体型チロシンキナーゼには、[[wikipedia:|Src Homology 2]] (SH2)ドメインおよび[[wikipedia:|SH3]]ドメインとよばれるドメイン構造が存在する。SH2ドメインはリン酸化チロシン残基(pTyr)を、SH3は[[wikipedia:ja:|プロリン]]リッチ領域(X-Pro-X-X-Pro)を、それぞれ認識して結合することで、細胞内情報伝達系におけるタンパク質-タンパク質結合を制御する。これらのドメインは構造的に保存されたアミノ酸配列を持ち、Srcファミリーチロシンキナーゼにおいて最初に見出された。更に、[[wikipedia:|Abl]]、[[wikipedia:|Fes]]、[[wikipedia:|Syk]]/Zap70、[[wikipedia:|Tec]]、[[wikipedia:|Ack]]、[[wikipedia:|Csk]]、[[wikipedia:|Srm]]、[[wikipedia:|Rak]]等の非受容体型チロシンキナーゼや、[[フォスファチジルイノシトール-3キナーゼ]] (PI3K)、[[フォスフォリパーゼC]] (PLC)-γ等のセリン・スレオニンキナーゼ、また[[wikipedia:|Grb2]]、[[wikipedia:|Nck]]等のアダプタータンパク質もこれらのドメイン構造を持つことが明らかになった。SH2ドメインは、約100アミノ酸残基の領域であり、2つの[[wikipedia:ja:|αヘリックス]]と7つの[[wikipedia:ja:|βシート]]から構成される。SH3ドメインは、約60アミノ酸残基の領域であり、5つないし6つのβシートからなる典型的な[[wikipedia:ja:|βバレル]]構造をもつ。 | |||
チロシンリン酸化の神経機能における役割としては、[[シナプス前膜]]側からの[[神経伝達物質]]放出の調節、様々な[[電位依存性イオンチャネル]]および[[リガンド依存性イオンチャネル]]の[[コンダクタンス]]と[[開口確率]]の制御<ref><pubmed>11668044</pubmed></ref>、[[グルタミン酸受容体]]をはじめとした多くのタンパク質分子の[[シナプス]]での局在と輸送過程の制御が報告されている。更に、それらに伴い、神経可塑性と個体レベルの行動に変化がおこることが知られている。また、他の役割として、神経回路、[[神経筋接合部]]や[[ミエリン]]構造の形成、樹状[[突]]起の形態形成や[[軸索伸長]]等の過程において、チロシンリン酸化依存的な制御が挙げられる<ref><pubmed>21508038</pubmed></ref>。 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |