「迷路」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
35 バイト追加 、 2012年9月28日 (金)
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
9行目: 9行目:
 [[wikipedia:ja:カール・ラシュレー|Lashley]]<ref>'''K Lashley'''<br>Brain mechanisms and intelligence: A quantitative study of injuries to the brain.<br>''University of Chicago Press'':1929</ref>は、迷路学習に必要な認知機能と関連脳部位を明らかにするために、より単純化された「Ⅲ型迷路」を使用した。この迷路は3つの選択点をもつ単純な構造で、出発地点から左、右、左へ曲がると報酬にたどりつける(図1)。この課題をラットに学習させた後に[[皮質]]の様々な部位を損傷し、同じ課題のテストを行った。再学習の成績は、損傷の場所に関わらず、損傷の量が大きくなるにつれて悪くなった。Lashleyは脳における記憶のありかをつきとめることはできなかった。その後、主にラットやマウスを対象とした膨大な数の脳破壊実験により、空間処理を必要とする迷路学習には海馬が関与しているという共通認識が得られた。
 [[wikipedia:ja:カール・ラシュレー|Lashley]]<ref>'''K Lashley'''<br>Brain mechanisms and intelligence: A quantitative study of injuries to the brain.<br>''University of Chicago Press'':1929</ref>は、迷路学習に必要な認知機能と関連脳部位を明らかにするために、より単純化された「Ⅲ型迷路」を使用した。この迷路は3つの選択点をもつ単純な構造で、出発地点から左、右、左へ曲がると報酬にたどりつける(図1)。この課題をラットに学習させた後に[[皮質]]の様々な部位を損傷し、同じ課題のテストを行った。再学習の成績は、損傷の場所に関わらず、損傷の量が大きくなるにつれて悪くなった。Lashleyは脳における記憶のありかをつきとめることはできなかった。その後、主にラットやマウスを対象とした膨大な数の脳破壊実験により、空間処理を必要とする迷路学習には海馬が関与しているという共通認識が得られた。


 1990年代には、発達過程のある時期に脳のある領域に限定して、マウスの遺伝子を操作する方法が利根川らにより確立された。長期増強の誘発に必要なNMDA受容体サブユニットを海馬CA1領域でノックアウトすると、長期増強が起こりにくくなるとともに、水迷路における場所課題の学習障害がみられた。空間的・時間的に限局した精巧なノックアウト技術の確立、電気生理学的手法による神経活動の記録および迷路での行動評価を行ったこの研究は、分子と行動の関連を明らかにしようとする脳科学研究の突破口となった。
 1990年代には、発達過程のある時期に脳のある領域に限定して、マウスの遺伝子を操作する方法が利根川ら<ref><pubmed>8980238</pubmed></ref>により確立された。長期増強の誘発に必要なNMDA受容体サブユニットを海馬CA1領域でノックアウトすると、長期増強が起こりにくくなるとともに、水迷路における場所課題の学習障害がみられた。空間的・時間的に限局した精巧なノックアウト技術の確立、電気生理学的手法による神経活動の記録および迷路での行動評価を行ったこの研究は、分子と行動の関連を明らかにしようとする脳科学研究の突破口となった。


== 迷路実験の手続きと測定される認知機能  ==
== 迷路実験の手続きと測定される認知機能  ==
214

回編集

案内メニュー