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全ての神経細胞が同定されており、神経細胞同士の接続関係が完全に分かっている唯一の生物である。この神経地図を利用した神経科学研究が行える。[[緑色蛍光タンパク質]]([[GFP]])を多細胞生物で初めて人工的に発現させた生物であり、そのことが示すように蛍光タンパク質を使った研究と相性がよい。そのため神経発生における研究が行いやすい。近年は[[カルシウムセンサー]]を使った神経活動の測定や、[[チャネルロドプシン]]を使った光遺伝学も盛んに利用されており、個々の神経細胞の機能や、神経回路としての働きを解明することに役だっている。非常に単純な神経回路を持ちながらも、[[wikipedia:ja:化学走性|化学走性]]、[[wikipedia:ja:温度走性|温度走性]]などの行動を示し、[[記憶]]・[[学習]]についての研究が行える。 | 全ての神経細胞が同定されており、神経細胞同士の接続関係が完全に分かっている唯一の生物である。この神経地図を利用した神経科学研究が行える。[[緑色蛍光タンパク質]]([[GFP]])を多細胞生物で初めて人工的に発現させた生物であり、そのことが示すように蛍光タンパク質を使った研究と相性がよい。そのため神経発生における研究が行いやすい。近年は[[カルシウムセンサー]]を使った神経活動の測定や、[[チャネルロドプシン]]を使った光遺伝学も盛んに利用されており、個々の神経細胞の機能や、神経回路としての働きを解明することに役だっている。非常に単純な神経回路を持ちながらも、[[wikipedia:ja:化学走性|化学走性]]、[[wikipedia:ja:温度走性|温度走性]]などの行動を示し、[[記憶]]・[[学習]]についての研究が行える。 | ||
==神経細胞の特徴== | ===神経細胞の特徴=== | ||
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全ての神経細胞が同定、命名されており、インターネット上のデータベースにおいて、形態、位置、接続関係、細胞系譜などの情報が公開されている(編集部コメント:この文章は、一つ前の段落と重複しています)。頭部に神経細胞が密集している部位があり、リング状に神経繊維が束になった[[ナーブリング]]と呼ばれる構造を持つ。[[電位依存性ナトリウムチャネル]]を持たないため、[[wikipedia:ja:マウス|マウス]]などの神経細胞と違い、[[スパイク]]様に数ms単位で変化する電位変化は観察されない(ただしこれについては議論もあり)。細胞の大きさが小さく(10μm程度)、体表面を覆っている[[wikipedia:ja:キューティクル|キューティクル]]が比較的硬いため、電気生理学的手法はマウスなどと比べると技術的に難しいが、それでもいくつかの研究室で神経細胞に対する電気生理的手法が確立されている。 | |||
神経活動の測定においては、透明な体を活かして、蛍光プローブを用いた[[カルシウムイメージング]]などの測定方法が広く利用されている。特定の細胞に選択的に遺伝子発現する[[プロモーター]]を利用することで非侵襲に特定の細胞の活動を計測することができる。他生物では一般的に抑制性を示す[[GABA]]依存性神経細胞で、興奮性を示すものが知られている。 | 神経活動の測定においては、透明な体を活かして、蛍光プローブを用いた[[カルシウムイメージング]]などの測定方法が広く利用されている。特定の細胞に選択的に遺伝子発現する[[プロモーター]]を利用することで非侵襲に特定の細胞の活動を計測することができる。他生物では一般的に抑制性を示す[[GABA]]依存性神経細胞で、興奮性を示すものが知られている。 | ||
==行動== | ===行動=== | ||
(編集部コメント:見出しレベルを下げました) | |||
分子遺伝学が強力なツールとして使えるため、以下のような特定の行動を引き起こす分子機構について詳細に研究されており、関連する遺伝子や細胞が多く同定されている。 | 分子遺伝学が強力なツールとして使えるため、以下のような特定の行動を引き起こす分子機構について詳細に研究されており、関連する遺伝子や細胞が多く同定されている。 | ||
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==研究者コミュニティ== | ==研究者コミュニティ== | ||
線虫を扱う研究者コミュニティは比較的体系立っている。これは1960年代に線虫をモデル生物にしようと提唱した[[wikipedia:ja:シドニー・ブレナー|シドニー・ブレナー]] | 線虫を扱う研究者コミュニティは比較的体系立っている。これは1960年代に線虫をモデル生物にしようと提唱した[[wikipedia:ja:シドニー・ブレナー|シドニー・ブレナー]]とその同僚、弟子たちの成功と、研究者間の細かな情報交換を大切にする文化に依る。現在[[wikipedia:ja:カリフォルニア大学ロサンゼルス校|UCLA]]で隔年で行われるinternational ''C. elegans'' meetingには神経科学や発生生物学などの分野を問わず、世界中の線虫研究者が集まり、1500人規模の大会となっている。情報交換は学術論文に限らず、上述した詳細なデータベースやオンライン教科書が整備されている。Worm Breeder's Gazetteという冊子は線虫研究者コミュニティの特徴を表している。これは飼育方法や細かな実験のコツなどを共有するための冊子で、学術論文に載る前のデータや、実験方法などが掲載される。しばらく発行を停止していたが、2009年から[http://www.wormbook.org/wbg/ オンライン]で復活した。実験材料の共有として、線虫株の管理センターも整備されている。 | ||
*現在[[wikipedia:ja:ミネソタ大学|ミネソタ大学]]にある''C. elegans'' genetic center (CGC)は登録された変異体を保管、配布しており、このセンターに問い合わせることで、論文で発表された変異体を手に入れることができる。 | *現在[[wikipedia:ja:ミネソタ大学|ミネソタ大学]]にある''C. elegans'' genetic center (CGC)は登録された変異体を保管、配布しており、このセンターに問い合わせることで、論文で発表された変異体を手に入れることができる。 | ||
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*[http://www.wormbase.org/ Wormbase(主にゲノム情報データベース)] | *[http://www.wormbase.org/ Wormbase(主にゲノム情報データベース)] | ||
*[http://www.wormbook.org/ Wormbook(オンライン線虫教科書)] | *[http://www.wormbook.org/ Wormbook(オンライン線虫教科書)] | ||
*[http://www.wormbook.org/wbg/ Worm Breeder's Gazette] | |||
==文献== | ==文献== |