145
回編集
細 (→チロシンフォスファターゼ) |
細編集の要約なし |
||
101行目: | 101行目: | ||
=== 受容体型チロシンキナーゼ=== | === 受容体型チロシンキナーゼ=== | ||
受容体型チロシンキナーゼは、細胞外のリガンド結合ドメイン、細胞内のチロンシンキナーゼドメイン、そして両者をつなぐ膜貫通ドメインを持つ。神経系で重要な役割を果たすものとして、[[trk|TrkA]]、TrkB、TrkC、[[wikipedia:Fibroblast_growth_factor_receptor|FGF受容体]]、[[wikipedia:Insulin_receptor|インスリン受容体]]、[[Eph受容体]] | 受容体型チロシンキナーゼは、細胞外のリガンド結合ドメイン、細胞内のチロンシンキナーゼドメイン、そして両者をつなぐ膜貫通ドメインを持つ。神経系で重要な役割を果たすものとして、[[trk|TrkA]]、TrkB、TrkC、[[wikipedia:Fibroblast_growth_factor_receptor|FGF受容体]]、[[wikipedia:Insulin_receptor|インスリン受容体]]、[[Eph受容体]]などがある。リガンド結合ドメインへのリガンド結合により、二量体化したチロシンキナーゼが活性化され、さらに下流のシグナル伝達を制御している。キナーゼドメイン中には自己リン酸化部位およびATP結合部位を含み、自己リン酸化によりキナーゼ活性を調節している。 | ||
(詳細は「受容体型チロシンキナーゼ」の項に記載) | (詳細は「受容体型チロシンキナーゼ」の項に記載) | ||
108行目: | 108行目: | ||
非受容体型チロシンキナーゼは、分子構造として細胞外領域をもたず、細胞内領域にチロシンキナーゼドメインをもつ。受容体型チロシンキナーゼと異なり、非受容体型チロシンキナーゼには、直接的に結合するリガンドはない。上位の制御因子は細胞膜上に存在する種々の受容体タンパク質であり、非受容体型チロシンキナーゼは、様々な膜受容体と会合して、膜受容体から細胞内への情報伝達を担う。受容体型チロシンキナーゼと同様に、非受容体型チロシンキナーゼもキナーゼドメイン中には自己リン酸化部位およびATP結合部位を含み、自己リン酸化によりキナーゼ活性を調節している。 | 非受容体型チロシンキナーゼは、分子構造として細胞外領域をもたず、細胞内領域にチロシンキナーゼドメインをもつ。受容体型チロシンキナーゼと異なり、非受容体型チロシンキナーゼには、直接的に結合するリガンドはない。上位の制御因子は細胞膜上に存在する種々の受容体タンパク質であり、非受容体型チロシンキナーゼは、様々な膜受容体と会合して、膜受容体から細胞内への情報伝達を担う。受容体型チロシンキナーゼと同様に、非受容体型チロシンキナーゼもキナーゼドメイン中には自己リン酸化部位およびATP結合部位を含み、自己リン酸化によりキナーゼ活性を調節している。 | ||
代表的な非受容体型チロシンキナーゼとしてSrcファミリーチロシンキナーゼがある。現在までに[[wikipedia:Src_(gene)|Src]]、[[wikipedia:YES1|Yes]]、[[wikipedia:FYN|Fyn]]、[[wikipedia:FGR_(gene)|Fgr]]、[[wikipedia:LYN|Lyn]]、[[wikipedia:Lck|Lck]]、[[wikipedia:HCK|Hck]]、[[wikipedia:Tyrosine-protein kinase BLK|Blk]]、[[wikipedia:Fyn-related kinase|Frk]]の9種が同定されており、脳では、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lckが高発現を示す。発現部位ごとに[[wikipedia:ja:スプライシング|スプライシング]]多様性がみられるものもある。Srcファミリーチロシンキナーゼの場合、N末端領域に[[ミリスチル化]]部位や[[パルミトイル化]]部位を有し、これらの[[wikipedia:ja:脂肪酸|脂肪酸]] | 代表的な非受容体型チロシンキナーゼとしてSrcファミリーチロシンキナーゼがある。現在までに[[wikipedia:Src_(gene)|Src]]、[[wikipedia:YES1|Yes]]、[[wikipedia:FYN|Fyn]]、[[wikipedia:FGR_(gene)|Fgr]]、[[wikipedia:LYN|Lyn]]、[[wikipedia:Lck|Lck]]、[[wikipedia:HCK|Hck]]、[[wikipedia:Tyrosine-protein kinase BLK|Blk]]、[[wikipedia:Fyn-related kinase|Frk]]の9種が同定されており、脳では、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lckが高発現を示す。発現部位ごとに[[wikipedia:ja:スプライシング|スプライシング]]多様性がみられるものもある。Srcファミリーチロシンキナーゼの場合、N末端領域に[[ミリスチル化]]部位や[[パルミトイル化]]部位を有し、これらの[[wikipedia:ja:脂肪酸|脂肪酸]]結合により細胞膜に付着し、膜近辺に局在する様になる。これまでに、cadherin-related neuronal receptor (CNR)ファミリーに属する分子がFynと会合しシナプス機能を制御する、等の研究報告がある<ref><pubmed>11672833</pubmed></ref>。脳神経系で機能する他の非受容体型チロシンキナーゼには、SrcファミリーチロシンキナーゼC末端のチロシン残基をリン酸化して不活性化するCsk(C-Src tyrosine kinase)、細胞接着に関わるFAK(Focal Adhesion Kinase)およびPyk2(FAKファミリーチロシンキナーゼ)、神経突起伸長に関わるFes/FpsおよびFer(Fesファミリーチロシンキナーゼ)があり、それぞれ脳神経機能に重要な役割を担っている。 | ||
多くの非受容体型チロシンキナーゼには、[[wikipedia:ja:SH2ドメイン|Src Homology 2]] (SH2)ドメインおよび[[wikipedia:SH3_domain|SH3]]ドメインとよばれるドメイン構造が存在する。SH2ドメインはリン酸化チロシン残基(pTyr)を、SH3ドメインは[[wikipedia:ja:プロリン|プロリン]]リッチ領域(X-Pro-X-X-Pro)を、それぞれ認識して結合することで、細胞内情報伝達系におけるタンパク質-タンパク質結合を制御する。これらのドメインは構造的に保存されたアミノ酸配列を持ち、Srcファミリーチロシンキナーゼにおいて最初に見出された。更に、[[wikipedia:Abl gene|Abl]]、[[wikipedia:Feline sarcoma oncogene|Fes]]、[[wikipedia:Syk|Syk]]/Zap70、[[wikipedia:TEC (gene)|Tec]]、[[wikipedia:TNK2|Ack]]、[[wikipedia:C-src tyrosine kinase|Csk]]、[[wikipedia:Srm|Srm]]、[[wikipedia:Fyn-related kinase|Rak]]等の非受容体型チロシンキナーゼや、[[フォスファチジルイノシトール-3キナーゼ]] (PI3K)、[[フォスフォリパーゼC]] (PLC)-γ等のセリン・スレオニンキナーゼ、また[[wikipedia:Grb2|Grb2]]、[[wikipedia:NCK1|Nck]]等のアダプタータンパク質もこれらのドメイン構造を持つことが明らかになった。SH2ドメインは、約100アミノ酸残基の領域であり、2つの[[wikipedia:ja:αヘリックス|αヘリックス]]と7つの[[wikipedia:ja:βシート|βシート]]から構成される。SH3ドメインは、約60アミノ酸残基の領域であり、5つないし6つのβシートからなる典型的な[[wikipedia:ja:βバレル|βバレル]]構造をもつ。 | 多くの非受容体型チロシンキナーゼには、[[wikipedia:ja:SH2ドメイン|Src Homology 2]] (SH2)ドメインおよび[[wikipedia:SH3_domain|SH3]]ドメインとよばれるドメイン構造が存在する。SH2ドメインはリン酸化チロシン残基(pTyr)を、SH3ドメインは[[wikipedia:ja:プロリン|プロリン]]リッチ領域(X-Pro-X-X-Pro)を、それぞれ認識して結合することで、細胞内情報伝達系におけるタンパク質-タンパク質結合を制御する。これらのドメインは構造的に保存されたアミノ酸配列を持ち、Srcファミリーチロシンキナーゼにおいて最初に見出された。更に、[[wikipedia:Abl gene|Abl]]、[[wikipedia:Feline sarcoma oncogene|Fes]]、[[wikipedia:Syk|Syk]]/Zap70、[[wikipedia:TEC (gene)|Tec]]、[[wikipedia:TNK2|Ack]]、[[wikipedia:C-src tyrosine kinase|Csk]]、[[wikipedia:Srm|Srm]]、[[wikipedia:Fyn-related kinase|Rak]]等の非受容体型チロシンキナーゼや、[[フォスファチジルイノシトール-3キナーゼ]] (PI3K)、[[フォスフォリパーゼC]] (PLC)-γ等のセリン・スレオニンキナーゼ、また[[wikipedia:Grb2|Grb2]]、[[wikipedia:NCK1|Nck]]等のアダプタータンパク質もこれらのドメイン構造を持つことが明らかになった。SH2ドメインは、約100アミノ酸残基の領域であり、2つの[[wikipedia:ja:αヘリックス|αヘリックス]]と7つの[[wikipedia:ja:βシート|βシート]]から構成される。SH3ドメインは、約60アミノ酸残基の領域であり、5つないし6つのβシートからなる典型的な[[wikipedia:ja:βバレル|βバレル]]構造をもつ。 | ||
115行目: | 115行目: | ||
チロシンフォスファターゼには、107種が存在する。チロシンキナーゼと同様に、チロシンフォスファターゼは、膜貫通領域を持つ受容体型および膜貫通領域を持たない非受容体型に大別される<ref><pubmed>17057753</pubmed></ref>。チロシンキナーゼ同様に、チロシンフォスファターゼも、受容体型は細胞膜上に、非受容体型は細胞質に存在する。チロシンフォスファターゼはチロシンキナーゼと違いその基質特異性は低く、リン酸化チロシンを含む多くのタンパク質を認識してそれぞれ脱リン酸化する。神経発生の過程における神経接着や軸索の伸長とガイダンス、シナプス形成、シナプス可塑性の調節におけるチロシンフォスファターゼの機能が明らかにされている。 | チロシンフォスファターゼには、107種が存在する。チロシンキナーゼと同様に、チロシンフォスファターゼは、膜貫通領域を持つ受容体型および膜貫通領域を持たない非受容体型に大別される<ref><pubmed>17057753</pubmed></ref>。チロシンキナーゼ同様に、チロシンフォスファターゼも、受容体型は細胞膜上に、非受容体型は細胞質に存在する。チロシンフォスファターゼはチロシンキナーゼと違いその基質特異性は低く、リン酸化チロシンを含む多くのタンパク質を認識してそれぞれ脱リン酸化する。神経発生の過程における神経接着や軸索の伸長とガイダンス、シナプス形成、シナプス可塑性の調節におけるチロシンフォスファターゼの機能が明らかにされている。 | ||
=== 受容体型チロシンフォスファターゼ=== | === 受容体型チロシンフォスファターゼ=== |
回編集