「セプチン」の版間の差分

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== 神経系における生理機能  ==
== 神経系における生理機能  ==


 セプチンを最も大量に発現する組織が神経系であることやヒトの精神・神経・筋疾患との関連から神経系におけるセプチン機能に関心が集まっている。[[ショウジョウバエ]]の致死性セプチン変異体''pnut''は初期胚の表割(細胞膜形成/cellularization)の異常を呈し、神経系の形質は不明であるが、眼の[[光受容細胞]]R7を欠損する''sina''変異体の[[wikipedia:ja:エンハンサー|エンハンサー]]であることが知られている。[[wikipedia:ja:線虫|線虫]]の運動障害(''unc'')変異体として見出されたセプチン欠損変異体''unc-59/-61''では細胞分裂は顕在化せず、[[神経突起]]形成ないし[[ガイダンス]]の異常を呈する<ref><pubmed>12941631</pubmed></ref>。[[マウス]]では脳におけるセプチンの発現・局在パターンはサブユニットや細胞ごとに大きく異なる。[[Image:図3.jpg|330px|thumb|right|図2:ニューロンやグリアの特定の膜ドメインにおけるセプチンクラスター]]
 セプチンを最も大量に発現する組織が神経系であることやヒトの精神・神経・筋疾患との関連から神経系におけるセプチン機能に関心が集まっている。[[ショウジョウバエ]]の致死性セプチン変異体''pnut''は初期胚の表割(細胞膜形成/cellularization)の異常を呈し、神経系の形質は不明であるが、眼の[[光受容細胞]]R7を欠損する''sina''変異体の[[wikipedia:ja:エンハンサー|エンハンサー]]であることが知られている。[[wikipedia:ja:線虫|線虫]]の運動障害(''unc'')変異体として見出されたセプチン欠損変異体''unc-59/-61''では細胞分裂は顕在化せず、[[神経突起]]形成ないし[[ガイダンス]]の異常を呈する<ref><pubmed>12941631</pubmed></ref>。[[マウス]]では脳におけるセプチンの発現・局在パターンはサブユニットや細胞ごとに大きく異なる。[[Image:図3.jpg|330px|thumb|right|'''図2 ニューロンやグリアの特定の膜ドメインにおけるセプチンクラスター''']]
例えばSEPT3,5はニューロンに発現して[[樹状突起棘]]や軸索末端に局在し、SEPT2,4は[[グリア]]に発現して突起の特定の膜ドメインを裏打ちする(図3)<ref><pubmed>11064363</pubmed></ref>。これまでに報告されたセプチン遺伝子欠損マウスのうち、''Sept7'',''9''の欠損は胎生致死となる一方、''Sept3'',''4'',''5'',''6''の欠損による神経系の異常は軽度なレベルにとどまる<ref>'''木下 専'''<br>セプチン細胞骨格の変幻自在な高次集合性と多彩な生理機能<br>''蛋白質・核酸・酵素'' 2009, 54(9);1150-8</ref>。後者の理由として同じグループに属する機能重複遺伝子による代償が推測されるが、興味深い事実も明らかになってきた。例えば''Sept4''欠損マウスでは聴覚性[[プレパルス抑制]]の減弱から、[[黒質]]-[[線条体]]投射系の[[ドパミン]]ニューロンの軸索末端においてドパミン代謝機構がダウンレギュレーションしていることがわかった<ref><pubmed>17296554</pubmed></ref>。一方、''Sept5''欠損マウスでは[[聴覚]]系[[シナプス]][[calyx of Held]]の軸索末端における[[シナプス小胞]]の開口放出の調節が異常となる<ref><pubmed>20624595</pubmed></ref>。いずれも足場ないし拡散障壁機能の欠損によるものと想定されるが、詳細なメカニズムの解明や他のニューロンやグリアにおけるセプチン機能の探索は今後の課題である。
例えばSEPT3,5はニューロンに発現して[[樹状突起棘]]や軸索末端に局在し、SEPT2,4は[[グリア]]に発現して突起の特定の膜ドメインを裏打ちする(図3)<ref><pubmed>11064363</pubmed></ref>。これまでに報告されたセプチン遺伝子欠損マウスのうち、''Sept7'',''9''の欠損は胎生致死となる一方、''Sept3'',''4'',''5'',''6''の欠損による神経系の異常は軽度なレベルにとどまる<ref>'''木下 専'''<br>セプチン細胞骨格の変幻自在な高次集合性と多彩な生理機能<br>''蛋白質・核酸・酵素'' 2009, 54(9);1150-8</ref>。後者の理由として同じグループに属する機能重複遺伝子による代償が推測されるが、興味深い事実も明らかになってきた。例えば''Sept4''欠損マウスでは聴覚性[[プレパルス抑制]]の減弱から、[[黒質]]-[[線条体]]投射系の[[ドパミン]]ニューロンの軸索末端においてドパミン代謝機構がダウンレギュレーションしていることがわかった<ref><pubmed>17296554</pubmed></ref>。一方、''Sept5''欠損マウスでは[[聴覚]]系[[シナプス]][[calyx of Held]]の軸索末端における[[シナプス小胞]]の開口放出の調節が異常となる<ref><pubmed>20624595</pubmed></ref>。いずれも足場ないし拡散障壁機能の欠損によるものと想定されるが、詳細なメカニズムの解明や他のニューロンやグリアにおけるセプチン機能の探索は今後の課題である。


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