16,039
回編集
細編集の要約なし |
細編集の要約なし |
||
1行目: | 1行目: | ||
(要約をお願いいたします。) | |||
{{Chembox | {{Chembox | ||
| verifiedrevid = 409517204 | | verifiedrevid = 409517204 | ||
24行目: | 27行目: | ||
}} | }} | ||
==構造と種類== | ==構造と種類==(この節、文章の順番を入れ替えました。ホスファチジルイノシトール(リン酸が入っていない骨格そのもの)を先に定義し、次に、ホスフォイノシタイドについて説明するようにしました。内容をご確認いただければ幸いです。) | ||
ホスファチジルイノシトールは正確には1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-1-myo-イノシトールという名称の脂質である(オリジナルには-4,5-ビスリン酸とありましたが、これはPI(4,5)P2のことかと思います。[[wikipedia:ja:脂肪酸|脂肪酸]]部分と[[wikipedia:ja:イノシトール|イノシトール]]イノシトール環部分からなる。脂肪酸部分は二つの[[wikipedia:ja:アシル基|アシル基]]からなり、組成は1-[[wikipedia:ja:ステアリン酸|ステアロイル]]-2-[[wikipedia:ja:アラキドン酸|アラキドノイル]]型が多い。 | |||
ホスファチジルイノシトールのイノシトール環にリン酸基がエステル結合した分子も生体内には見いだされる。従って、ほ乳類の含有するホスホイノシタイドは、PI(ホスファチジルイノシトール)、PIP(ホスファチジルイノシトール一リン酸)、PIP<sub>2</sub>(ホスファチジルイノシトール二リン酸)とPIP<sub>3</sub>(ホスファチジルイノシトール三リン酸)から成り、このうちPIP、PIP2とPIP3のことを総称して(ポリ)ホスホイノシチドと呼ぶ。これらはその[[wikipedia:ja:リン酸|リン酸]]基に位置によってさらに分類される。PIPには[[PI(3)P]](ホスファチジルイノシトール-3-一リン酸)、[[PI(4)P]](ホスファチジルイノシトール-4-一リン酸)、[[PI(5)P]](ホスファチジルイノシトール-5-一リン酸)の3種類が、PIP<sub>2</sub>には[[PI(3,4)P2|PI(3,4)P<sub>2</sub>]](ホスファチジルイノシトール-3,4-二リン酸)、[[PI(3,5)P2|PI(3,5)P<sub>2</sub>]](ホスファチジルイノシトール-3,5-二リン酸)[[PI(4,5)P2|PI(4,5)P<sub>2</sub>]](ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸)の3種類が存在する。[[PI(3,4,5)P3|PI(3,4,5)P<sub>3</sub>]]はイノシトール環の3、4、5位の3カ所にリン酸基が入ったもので1種類のみ存在する。 | |||
ホスファチジルイノシトールが見つかって60年以上が経過しているが、1988年のCantleyによる[[PI3キナーゼ]]を同定によって、現在は7種類すべてのホスホイノシタイドが見つかっている。ホスホイノシタイド(これで正しいでしょうか?)は全リン脂質量の0.1%〜1%を占めているが、これはホスファチジルイノシトールが5%〜10%を占めるのに比べても非常に少ない。 | |||
特にホスホイノシチドには様々な生理活性が知られており、本項目では、それらを中心に解説する。 | |||
==役割== | ==役割== | ||
ホスファチジルイノシトールの機能は大きく三つに分類される。 | |||
一つは細胞内情報伝達経路におけるセカンドメッセンジャー物質産生の基質としての機能である。PI(4,5)P<sub>2</sub>からPLCによってDGとIP<sub>3</sub>が産生され、小胞体からのカルシウム放出を促進するのがこの例に当たる。 | |||
二つ目は細胞内の物質輸送の調節である<ref><pubmed>18784754 </pubmed></ref>。ホスファチジルイノシトールは、種類によって局在がきわめて限られている。細胞内小胞輸送に直接関与する多くの分子がホスファチジルイノシトール結合ドメインを介して、エンドソームやゴルジ体など細胞の特定のコンパートメントに集まる結果、小胞輸送が活発になると考えられている。これらの分子の中には細胞膜や小胞膜の大きさや曲率を認識する機能を持ち、膜の形態そのものを変形させる活性を持っている場合も多い。これが細胞内の膜輸送において重要な機能である。 | |||
三つ目は細胞内シグナル伝達経路の制御である。AktやBtkなど多くのシグナル伝達分子やタンパクキナーゼが脂質結合ドメインを持っており、ホスファチジルイノシトールとの結合によってキナーゼ活性が制御されている例も見られる。後述のPI3キナーゼシグナル伝達経路はアポトーシスの抑制やタンパク質合成などの細胞の生存に不可欠なものであることが明らかとなっている。<ref><pubmed>16847462 </pubmed></ref> | |||
さらに、ホスファチジルイノシトールの代謝異常は多くの重大かつ重篤な疾患と密接に関連していることも明らかとなっている。PI(3,4,5)P<sub>3</sub>の代謝異常はがんや糖尿病の患者に多く認められている。これはがん細胞の増殖や浸潤転移、インスリンによる骨格筋や脂肪細胞への糖取込みにおいてPI(3,4,5)P<sub>3</sub>が必要であることに起因している。また、PI(4,5)P<sub>2</sub>の代謝異常がLowe症候群などの遺伝性疾患患者に認められている。 | |||
==各ホスファチジルイノシトールの生合成経路と機能== | ==各ホスファチジルイノシトールの生合成経路と機能== |