「めまい」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
161 バイト追加 、 2013年5月12日 (日)
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
1行目: 1行目:
= めまい  =
= めまい  =


== '''めまいの定義と種類<sup>1)</sup>  ''' ==
== '''めまいの定義と種類'''&lt;ref&gt;'''宇川義一編'''&lt;br&gt;特集:めまい-vertigo, dizziness or else?&lt;br&gt;'' Clinical Neuroscience 30(1)'':2012&lt;/ref&gt;    ==


めまいは身体の安定感が失われたと言う自覚的な症状を総称する言葉である。医療機関を訪れる主要な症状の中でもめまいは特に頻度の高いものの一つであるが、めまいと言う言葉で表現されているものは医学的には一様ではない。その多くは大きく以下の3種類に分けられるが、混在して見られる場合も多い。  
めまいは身体の安定感が失われたと言う自覚的な症状を総称する言葉である。医療機関を訪れる主要な症状の中でもめまいは特に頻度の高いものの一つであるが、めまいと言う言葉で表現されているものは医学的には一様ではない。その多くは大きく以下の3種類に分けられるが、混在して見られる場合も多い。  
17行目: 17行目:
ふらふらする、気が遠くなると言った症状が典型的であるが、浮動性めまいとしばしば区別が困難である。多くは起立位で増悪し臥位で改善する。起立性低血圧などによる一過性の脳循環不全に起因する。重度の場合は失神に至る。  
ふらふらする、気が遠くなると言った症状が典型的であるが、浮動性めまいとしばしば区別が困難である。多くは起立位で増悪し臥位で改善する。起立性低血圧などによる一過性の脳循環不全に起因する。重度の場合は失神に至る。  


 
<br>


== '''めまいの原因'''  ==
== '''めまいの原因'''  ==
35行目: 35行目:
何らかの原因による脳循環の一過性の低下はやはりめまいとして自覚される。多くは起立性低血圧や血管迷走神経反射などにより、症状が強度の場合は失神に至る。多くの場合、循環系の異常に起因するめまいでは立位で症状が生じるが、臥位では脳循環の改善にともないめまい症状も改善する。後述の通り一方でめまいは、不安障害など精神疾患の身体症状として見られることも多い。  
何らかの原因による脳循環の一過性の低下はやはりめまいとして自覚される。多くは起立性低血圧や血管迷走神経反射などにより、症状が強度の場合は失神に至る。多くの場合、循環系の異常に起因するめまいでは立位で症状が生じるが、臥位では脳循環の改善にともないめまい症状も改善する。後述の通り一方でめまいは、不安障害など精神疾患の身体症状として見られることも多い。  


 
<br>


== '''めまいを呈する代表的な疾患'''  ==
== '''めまいを呈する代表的な疾患'''  ==
67行目: 67行目:
正確な頻度は不明であるが、患者数は多いと考えられる。めまいは不安障害やパニック障害などでも多く見られる症状の一つであり、身体の動揺感と不安感は深く関連している。例えば東日本大震災の後、余震の続く被災地では余震の無いときでも身体動揺感が持続する様な浮動性めまいの患者が急増した。これはメンタルストレスがめまいと言う症状と直結していることを強く示唆している。前庭皮質の一部は大脳辺縁系と密接に関連しており、平衡機能を司る神経系は情動の調節系とも密接に関わっていることが示唆される。  
正確な頻度は不明であるが、患者数は多いと考えられる。めまいは不安障害やパニック障害などでも多く見られる症状の一つであり、身体の動揺感と不安感は深く関連している。例えば東日本大震災の後、余震の続く被災地では余震の無いときでも身体動揺感が持続する様な浮動性めまいの患者が急増した。これはメンタルストレスがめまいと言う症状と直結していることを強く示唆している。前庭皮質の一部は大脳辺縁系と密接に関連しており、平衡機能を司る神経系は情動の調節系とも密接に関わっていることが示唆される。  


 
<br>


== '''めまいの治療<sup>2)</sup>'''<sup></sup>  ==
== '''めまいの治療<sup>2)</sup>'''<sup></sup>  ==
83行目: 83行目:
良性発作性頭位性眩暈ではめまい発作の原因となっている耳石断片等の浮遊物を問題部位から除去するための理学療法(Epley法など)が推奨されている。メニエール病では内リンパ水腫を改善させるためにイソソルビドなどの利尿剤やステロイド剤も用いられる。重症例には外科治療も試みられる。前庭神経炎の多くは対症療法でめまい症状の改善を図る内に軽快して行くが重症例ではやはりステロイド剤が用いられる。椎骨脳底動脈不全症では通常、脳血流改善薬を使用する。循環動態の異常に起因する場合は循環系の治療を優先する。例えば不整脈の治療、昇圧剤による低血圧の治療などを行う。  
良性発作性頭位性眩暈ではめまい発作の原因となっている耳石断片等の浮遊物を問題部位から除去するための理学療法(Epley法など)が推奨されている。メニエール病では内リンパ水腫を改善させるためにイソソルビドなどの利尿剤やステロイド剤も用いられる。重症例には外科治療も試みられる。前庭神経炎の多くは対症療法でめまい症状の改善を図る内に軽快して行くが重症例ではやはりステロイド剤が用いられる。椎骨脳底動脈不全症では通常、脳血流改善薬を使用する。循環動態の異常に起因する場合は循環系の治療を優先する。例えば不整脈の治療、昇圧剤による低血圧の治療などを行う。  


<br> 参考文献
<br>&lt;references/&gt;<br>


1. 宇川義一編、特集:めまい-vertigo, dizziness or else? Clinical Neuroscience 30(1), 2012.  
1. 宇川義一編、特集:めまい-vertigo, dizziness or else? Clinical Neuroscience 30(1), 2012.  
91行目: 91行目:
3. Ziemann AE., et al. The amygdala is a chemosensor that detects carbon dioxide and acidosis to elicit fear behavior, Cell 139: 1012–1021, 2009.  
3. Ziemann AE., et al. The amygdala is a chemosensor that detects carbon dioxide and acidosis to elicit fear behavior, Cell 139: 1012–1021, 2009.  


 
<br>


(執筆者:武田 篤、担当編集委員: )
(執筆者:武田 篤、担当編集委員: )
11

回編集

案内メニュー