「色覚」の版間の差分

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色弁別の課題を行うに際して,検査対象となる個別の色みが知覚されている必要はなく,信号としての差が検出できればよい.個別の色みとして評価できる知覚を「色の見え(color appearance )」と言う.色の見えは日常生活で経験している,対象物や光の色として知覚/評価されるものを指している.
色弁別の課題を行うに際して,検査対象となる個別の色みが知覚されている必要はなく,信号としての差が検出できればよい.個別の色みとして評価できる知覚を「色の見え(color appearance )」と言う.色の見えは日常生活で経験している,対象物や光の色として知覚/評価されるものを指している.
=====3色説,反対色過程=====
=====3色説,反対色過程=====
Edwald Hering は,赤みと緑み,青みと黄色みがそれぞれ同時に知覚されない現象面に着目し,反対色による色の表現を提案した.これは3錐体により色の情報が必要十分に表現できると考えたThomas Young, Hermann von Helmnolz による3色説と対立した概念として捉えられていた.3色説は網膜における3錐体の存在に対応し,反対色説は,後に[[網膜]]において発見されたL錐体とM錐体が対立的に入力する[[双極細胞]](bipolar cell) の存在により,生理学的対応が裏付けられたと考えられた.反対色空間の赤ー緑,青ー黄の2軸を構成する4色は基本色相(landmark color)と呼ばれる.また,この反対色空間に対応する生理学的な過程を反対色過程(cone-opponent process)と呼ぶ.
<span style="line-height: 1.5em;">Edwald Hering は,赤みと緑み,青みと黄色みがそれぞれ同時に知覚されない現象面に着目し,反対色による色の表現を提案した.これは3錐体により色の情報が必要十分に表現できると考えたThomas Young, Hermann von Helmnolz による3色説と対立した概念として捉えられていた.3色説は網膜における3錐体の存在に対応し,反対色説は,後に[[網膜]]において発見されたL錐体とM錐体が対立的に入力する[[双極細胞]](bipolar cell) の存在により,生理学的対応が裏付けられたと考えられた.反対色空間の赤ー緑,青ー黄の2軸を構成する4色は基本色相(landmark color)と呼ばれる.また,この反対色空間に対応する生理学的な過程を反対色過程(cone-opponent process)と呼ぶ.</span>
錐体応答が選択的かつ対立的に刺激される軸は,錐体分光感度から計算により導出することができる.このようにして導出された,L/M錐体が対立して刺激される軸と,S錐体のみが選択的に刺激される軸の2軸を取った等輝度平面における色座標系を錐体拮抗色空間(cone-opponent color space)と言う.代表的な物として,Derrington, Krauskopf & Lennie が提唱した DKL 空間,MacLeod と Boynton が提唱した MacLeod-Boynton 空間が存在する.両者は軸の正規化の方法が異なる.
====色空間====
<span style="line-height: 1.5em;">錐体応答が選択的かつ対立的に刺激される軸は,錐体分光感度から計算により導出することができる.このようにして導出された,L/M錐体が対立して刺激される軸と,S錐体のみが選択的に刺激される軸の2軸を取った等輝度平面における色座標系を錐体拮抗色空間(cone-opponent color space)と言う.代表的な物として,Derrington, Krauskopf & Lennie が提唱した DKL 空間,MacLeod と Boynton が提唱した MacLeod-Boynton 空間が存在する.両者は軸の正規化の方法が異なる.</span>
 
<span style="line-height: 1.5em;">国際照明委員会(Commission internationale de l'éclairage: CIE)において標準化された色空間は,1931年に制定された CIE XYZ 空間,1976年に提案された CIE LUV 空間,CIE LAB 空間などが存在する.これらの基本となる CIE XYZ 空間は,可視波長域の色光を基本3波長の色光によって視覚的に一致させる実験(等色実験: color matching experiment)によって導出された架空の分光感度(等色関数: color matching functions)によって定義された.この空間の定義は3錐体の応答の組み合わせにより色光が一意に表現できるという3色説の概念に基づいていると考えることができる.</span>
 
<span style="line-height: 1.5em;">錐体や神経説細胞の応答とは別に,色の見え方を基本とした色空間の構成方法も存在する.色の見え方の要素として明るさ(明度),色相,彩度の3つが挙げられる.これらの要素を視感的に系統化した色空間として,Munsell 色空間,NCS 色空間などが存在する.主に色を塗装した紙(色票)を系統的に並べた色見本により定義する方法が取られている.
 
=====反対色過程後の色情報表現と色の見え=====
=====反対色過程後の色情報表現と色の見え=====
他の色みを感じない純粋な基本色相(ユニーク色:unique hue)とは必ずしも1:1に対応しない事が指摘されている (Jameson & Hurvich, ; De Valois et al., 2000).例えばL錐体とM錐体のみが選択的かつ拮抗的に刺激される光と,ユニーク赤(unique red)およびユニーク緑(unique green)は一致しない.Jameson & Hurvich は,可視波長の光に対し,赤/緑,青/黄の成分を補色によって打ち消す実験を行い,それぞれの基本色成分に対する波長感度分布を導出した.しかし,これらの波長分布感度曲線は錐体分光感度の線形和では表現することができなかった.De Valois et al. はコンピュータ画面上に,錐体拮抗的色空間における色相環上の色光を呈示し,基本色相(赤,緑,青,黄)の成分で評価させる実験を行った.その結果,錐体拮抗軸とユニーク色とは一致しなかった.Webster & Miyahara は,ユニーク色の錐体拮抗色空間上での個人差の分布について調べた.顕著な個人差が確認されたが,特に青と黄はこの空間上で直線に並ぶ事が無いことが示された.
<span style="line-height: 1.5em;">他の色みを感じない純粋な基本色相(ユニーク色:unique hue)とは必ずしも1:1に対応しない事が指摘されている (Jameson & Hurvich, ; De Valois et al., 2000).例えばL錐体とM錐体のみが選択的かつ拮抗的に刺激される光と,ユニーク赤(unique red)およびユニーク緑(unique green)は一致しない.Jameson & Hurvich は,可視波長の光に対し,赤/緑,青/黄の成分を補色によって打ち消す実験を行い,それぞれの基本色成分に対する波長感度分布を導出した.しかし,これらの波長分布感度曲線は錐体分光感度の線形和では表現することができなかった.De Valois et al. はコンピュータ画面上に,錐体拮抗的色空間における色相環上の色光を呈示し,基本色相(赤,緑,青,黄)の成分で評価させる実験を行った.その結果,錐体拮抗軸とユニーク色とは一致しなかった.Webster & Miyahara は,ユニーク色の錐体拮抗色空間上での個人差の分布について調べた.顕著な個人差が確認されたが,特に青と黄はこの空間上で直線に並ぶ事が無いことが示された.</span>
これらの心理物理学的な実験結果は,錐体拮抗軸が色の見えの基本要素であるユニーク色と対応しない可能性を強く指摘している.
<span style="line-height: 1.5em;">これらの心理物理学的な実験結果は,錐体拮抗軸が色の見えの基本要素であるユニーク色と対応しない可能性を強く指摘している.従って「色の見え」を表現している生理学的なメカニズムは反対色過程以降(post cone-opponent process)に存在すると考えられ,研究が推進されている.</span>
従って「色の見え」を表現している生理学的なメカニズムは反対色過程以降(post cone-opponent-color system)に存在すると考えられ,研究が推進されている.
=====色差=====
=====色差=====


====色空間====
明度/彩度/色相


====色カテゴリー(鯉田さん?)====
====色カテゴリー(鯉田さん?)====
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