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====免疫系==== | ====免疫系==== | ||
胸腺・[[wj:骨髄|骨髄]]・[[wj:脾臓|脾臓]]・[[wj:リンパ節|リンパ節]]などの免疫系組織は、自律神経系の支配を受けている。また、リンパ球などの[[wj:免疫担当細胞|免疫担当細胞]]の膜表面には様々なホルモンや[[神経伝達物質]]に対する[[レセプター]]が発現しており、ストレス負荷時にはこれらのレセプターや[[伝達物質]]を介して免疫系も影響される(図3参照)。急性ストレス時にはNK活性の亢進、リンパ球[[wj:CD4|CD4]]/[[wj:CD8|CD8]]比の低下、[[wj:唾液|唾液]]中[[wj:IgA|IgA]]の上昇などが認められ、慢性ストレスではNK活性低下・細胞数減少、[[wj:ConA/PHAリンパ球幼若化試験|ConA/PHAリンパ球幼若化試験]]によって測られる[[wj:T細胞]]増殖能低下、唾液中IgA低下などが認められる。 | 胸腺・[[wj:骨髄|骨髄]]・[[wj:脾臓|脾臓]]・[[wj:リンパ節|リンパ節]]などの免疫系組織は、自律神経系の支配を受けている。また、リンパ球などの[[wj:免疫担当細胞|免疫担当細胞]]の膜表面には様々なホルモンや[[神経伝達物質]]に対する[[レセプター]]が発現しており、ストレス負荷時にはこれらのレセプターや[[伝達物質]]を介して免疫系も影響される(図3参照)。急性ストレス時にはNK活性の亢進、リンパ球[[wj:CD4|CD4]]/[[wj:CD8|CD8]]比の低下、[[wj:唾液|唾液]]中[[wj:IgA|IgA]]の上昇などが認められ、慢性ストレスではNK活性低下・細胞数減少、[[wj:ConA/PHAリンパ球幼若化試験|ConA/PHAリンパ球幼若化試験]]によって測られる[[wj:T細胞|T細胞]]増殖能低下、唾液中IgA低下などが認められる。 | ||
===身体から脳へ=== | ===身体から脳へ=== | ||
こころと体がつながっているというのは、現在のニューロサイエンスの中では大きな注目を集めている。特に、上記に述べてきたように、従来、こころ(脳)が身体をコントロールしている部分が大きいことは広く認知されていたわけだが、逆に身体状態もまたこころを形作るということが、最近の[[脳機能イメージング]]などを主体としたニューロサイエンスなどでトピックスになっているからである。 | こころと体がつながっているというのは、現在のニューロサイエンスの中では大きな注目を集めている。特に、上記に述べてきたように、従来、こころ(脳)が身体をコントロールしている部分が大きいことは広く認知されていたわけだが、逆に身体状態もまたこころを形作るということが、最近の[[脳機能イメージング]]などを主体としたニューロサイエンスなどでトピックスになっているからである。 | ||
Damasioらは、特にWilliams Jamesらの考え方をベースにして、意思決定や意識、主観的な感情体験などは、身体の状態を基礎として形成される、という一連の考えを提唱している<ref>''' Damasio, A.R.. '''<br> Descartes' Error: Emotion, Reason, and the Human Brain <br>'' New York Putnam..'': 1994</ref>。特に「[[ソマティック・マーカー仮説]] | Damasioらは、特にWilliams Jamesらの考え方をベースにして、意思決定や意識、主観的な感情体験などは、身体の状態を基礎として形成される、という一連の考えを提唱している<ref>''' Damasio, A.R.. '''<br> Descartes' Error: Emotion, Reason, and the Human Brain <br>'' New York Putnam..'': 1994</ref>。特に「[[ソマティック・マーカー仮説]]」と呼ばれる考え方(意志決定は「合理的、理性的」になされると考えられがちであるが、実際は、無意識のうちに起こる身体的な反応がそのオプションを絞り込み、合理的思考が働くのはそのあとである、という考え)は多くの支持を呼んだ。また、DamasioやCraigは、[[島]]皮質が、身体表象から主観的な感情体験を生み出すもとであると考えている。Craigは、「内受容感覚」への気づき(Interoceptive awareness)が情動・意識を生み出すもとであり、それには[[前島皮質]]が関与しているというエビデンスを詳細にレビューし、従来不明な部分が多かった島皮質の機能を明るみにしたものとして注目されている<ref name=ref16 /> <ref name=ref17 />。 | ||
100年以上前から続く、James-Lange、 Schachter-Singerなどの情動理論からは、やはり心身が不可分で密接につながっているという認識から、情動や意識の問題を扱っていたのだが、現在になってその考えが見直されてきている。今後は、身体→脳、脳→身体という双方向のダイナミズムが脳科学の研究の対象になっていき、心身症の病態解明にすすむことが予想される。 | 100年以上前から続く、James-Lange、 Schachter-Singerなどの情動理論からは、やはり心身が不可分で密接につながっているという認識から、情動や意識の問題を扱っていたのだが、現在になってその考えが見直されてきている。今後は、身体→脳、脳→身体という双方向のダイナミズムが脳科学の研究の対象になっていき、心身症の病態解明にすすむことが予想される。 | ||
==診断== | ==診断== | ||
身体症状・身体疾患に対しては、まず各診療科・専門科別の機能的・器質的変化の評価がある。さらに、精神科的な心の問題・さらに広い心理社会的問題などの評価があり、全体として心身症としての治療の対象になるのかどうかが決められる。多くの身体疾患は、隠れた心理社会的背景が多かれ少なかれ存在する。そうするとすべての身体疾患は心身症ということになるが、現実的には心理社会的な側面も含んだ統合的なアプローチが臨床の中で効果的だと判断して、初めて「心身症」と診断することが多い。 | |||
評価の際に最も重要なのが「心身相関」の把握である。この把握にマジックはなく、問題となっている身体症状がどのような心理社会的背景を持っているのかを、病歴・現象、検査所見と、生活史・行動観察、周囲からの情報の収集などを、時間をかけて、徹底した傾聴を基本として問診・診察を行う必要がある。 | 評価の際に最も重要なのが「心身相関」の把握である。この把握にマジックはなく、問題となっている身体症状がどのような心理社会的背景を持っているのかを、病歴・現象、検査所見と、生活史・行動観察、周囲からの情報の収集などを、時間をかけて、徹底した傾聴を基本として問診・診察を行う必要がある。 |