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[[Image:KCh fig1.png|thumb|right|300px|<b>図1.カリウムチャネルの二次構造、結晶構造、ドメイン配置</b><br />2TM型の内向き整流性カリウムチャネル、4TM型のtwo-pore domainカリウムチャネル、6TM型の電位依存性カリウムチャネル・カルシウム活性化カリウムチャネルαサブユニットの二次構造(上段)、結晶構造のTop view(中段)そしてドメイン配置(下段)。結晶構造は、PBD Data Bankに登録されたPDBID 3SPI (Kir2.2)、3UKM (TWIK-1)、2R9R (Kv1.2-Kv2.1 paddle chimera channel)をもとにPyMolで作成。]] | [[Image:KCh fig1.png|thumb|right|300px|<b>図1.カリウムチャネルの二次構造、結晶構造、ドメイン配置</b><br />2TM型の内向き整流性カリウムチャネル、4TM型のtwo-pore domainカリウムチャネル、6TM型の電位依存性カリウムチャネル・カルシウム活性化カリウムチャネルαサブユニットの二次構造(上段)、結晶構造のTop view(中段)そしてドメイン配置(下段)。結晶構造は、PBD Data Bankに登録されたPDBID 3SPI (Kir2.2)、3UKM (TWIK-1)、2R9R (Kv1.2-Kv2.1 paddle chimera channel)をもとにPyMolで作成。]] | ||
ほとんどのカリウムチャネルはポアドメイン形成に関わるタンパク質(αサブユニット)が4つ一組になって働く。カリウムチャネルのαサブユニットの二次構造を図1に示す。代表的な構造として、電位依存性カリウムチャネルが含まれる六回膜貫通(6TM)型の構造と、内向き整流性カリウムチャネルが含まれる二回膜貫通(2TM)型の構造がある。膜貫通領域(セグメント)のS5とS6(2TM型ではTM1とTM2)はカリウムイオンを透過させるためのポアドメインを構成する。またこの二つの膜貫通領域間の細胞外リンカー部分にはカリウムチャネルで広く保持されたシグネチャ配列(signature | ほとんどのカリウムチャネルはポアドメイン形成に関わるタンパク質(αサブユニット)が4つ一組になって働く。カリウムチャネルのαサブユニットの二次構造を図1に示す。代表的な構造として、電位依存性カリウムチャネルが含まれる六回膜貫通(6TM)型の構造と、内向き整流性カリウムチャネルが含まれる二回膜貫通(2TM)型の構造がある。膜貫通領域(セグメント)のS5とS6(2TM型ではTM1とTM2)はカリウムイオンを透過させるためのポアドメインを構成する。またこの二つの膜貫通領域間の細胞外リンカー部分にはカリウムチャネルで広く保持されたシグネチャ配列(signature sequence、選択的特異配列とも; TXTTVGYG、特にGYGまたはGFGはよく保存されている)を含むP領域が存在し、ここは[[イオン選択フィルター]]機能に関わる。一方、S1-S4で構成される領域は電位センサーとして機能し、S4には正に帯電したアミノ酸が周期的に並んでいる。6TM型だが、膜電位ではなく細胞内[[カルシウム|Ca<sup>2+</sup>]]によって活性化されるカリウムチャネルも存在する。2TMの内向き整流性カリウムチャネルは6TM型の電位依存性カリウムチャネルの電位センサードメイン(S1-S4)に対応する構造をもっておらず、代わりに大きな細胞内領域をもつ。また、2TM及びP領域がサブユニット分子内で2回タンデムにつながった構造の4TM型のカリウムチャネルも存在する。このαサブユニットは二量体を形成しイオンチャネルとして機能する。ポアドメインを構成する領域を分子内に2つ有するためtwo-pore domainカリウム(K2P)チャネル、あるいはタンデム(直列)ポアドメイン(tandem pore domain)チャネルと呼ばれる。 | ||
=== 結晶構造 === | === 結晶構造 === | ||
カリウムチャネルの結晶化とその構造解析が進んでいる。1998年の[[wikipedia:ja:原核生物|原核生物]]由来の2TM型カリウムチャネルKcsAの[[wikipedia:ja:X線構造解析|X線構造解析]] | カリウムチャネルの結晶化とその構造解析が進んでいる。1998年の[[wikipedia:ja:原核生物|原核生物]]由来の2TM型カリウムチャネルKcsAの[[wikipedia:ja:X線構造解析|X線構造解析]]に始まり(図1、2)<ref name="ref3"><pubmed>9525859</pubmed></ref>、Ca依存的/活性化カリウムチャネル(MthK、hBK)、電位依存性カリウムチャネル(KvAP、Kv1.2-Kv2.1 paddle chimera channel)、Kirチャネル(KirBac、Kir2、Kir3)、K2Pチャネル(TRAAK、TWIK-1)と原核生物に留まらず近年では[[wikipedia:ja:真核生物|真核生物]]のカリウムチャネルの構造も相次いで報告されている。共通の性質として(図2)、①2つの膜貫通領域から水性のポアが形成される、②P領域がポアヘリックスとイオン選択フィルターを形成し、シグネチャ配列がイオン選択性フィルターの一部を形成し、それは細胞膜の中心から外側にかけて存在する、③イオン選択フィルターの細胞内側に中心腔(central cavity)とよばれる水性の空間が存在する、④ポアヘリックスが4対称軸の中心に向いておりC末側が中心腔に到達している、ことなどがあげられる。これらの水性ポアドメインの構造に関わる共通点から、カリウムチャネルの選択イオン透過機能に関わる立体構造はほぼ等価であるといえる。 | ||
=== 選択的イオン透過機能を支える構造基盤 === | === 選択的イオン透過機能を支える構造基盤 === | ||
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イオンチャネルの電気生理学的な解析によって、[[単一チャネル電流]]を定量的に記録することが可能である。この方法によって単一のイオンチャネルを透過するイオンの速度を見積もることが出来る。この実験から、カリウムチャネルではK<sup>+</sup>イオンがNa<sup>+</sup>イオンよりも1000倍ほど透過性が高いことが知られている(一価陽イオンの選択性序列は K<sup>+</sup>>Rb<sup>+</sup>>Cs<sup>+</sup>>Na<sup>+</sup>>Li<sup>+</sup>。これはEisenman IV型であり、イオン選択フィルターがやや弱い[[wikipedia:ja:静電場|静電場]]をもつことを示唆する)。しかも、開いた小孔を電気化学的な差に従って、イオンの水溶液中の拡散速度に匹敵する程の、1秒間に数百万個ものイオンが通過することが分かっている(単一イオンチャネルコンダクタンスが数百pSに達すものもある)。つまりカリウムチャネルは極めて高いイオン選択性と非常に早いイオン透過速度という一見相容れない特性を両立する。 | イオンチャネルの電気生理学的な解析によって、[[単一チャネル電流]]を定量的に記録することが可能である。この方法によって単一のイオンチャネルを透過するイオンの速度を見積もることが出来る。この実験から、カリウムチャネルではK<sup>+</sup>イオンがNa<sup>+</sup>イオンよりも1000倍ほど透過性が高いことが知られている(一価陽イオンの選択性序列は K<sup>+</sup>>Rb<sup>+</sup>>Cs<sup>+</sup>>Na<sup>+</sup>>Li<sup>+</sup>。これはEisenman IV型であり、イオン選択フィルターがやや弱い[[wikipedia:ja:静電場|静電場]]をもつことを示唆する)。しかも、開いた小孔を電気化学的な差に従って、イオンの水溶液中の拡散速度に匹敵する程の、1秒間に数百万個ものイオンが通過することが分かっている(単一イオンチャネルコンダクタンスが数百pSに達すものもある)。つまりカリウムチャネルは極めて高いイオン選択性と非常に早いイオン透過速度という一見相容れない特性を両立する。 | ||
特定のイオンを透過させる機構としては大きさによる分子フィルター機構がまず考えられる。しかしながら、[[wikipedia:ja:イオン半径|イオン半径]]では、Na<sup>+</sup>(イオン半径r=0.95 Å)はK<sup>+</sup>(r=1.33 Å)はよりも小さく、なぜK<sup>+</sup>を透過してNa<sup>+</sup>を透過させないのか説明がつかない。カリウムチャネルのこのカリウム選択的透過機構はこのチャネルがもつ小孔の最も狭い領域、[[イオン選択フィルター]]の構造に関係がある<ref name="ref3" /><ref name="ref4" />。イオンは水分子と相互作用(水和)した状態で水に溶けている(図3a)。イオンチャネルの細いフィルター内に入る際に、イオンは水分子との相互作用をフィルターを形成するアミノ酸の[[wikipedia:ja:酸素|酸素]]原子を含む[[wikipedia:ja:カルボニル基|カルボニル基]] | 特定のイオンを透過させる機構としては大きさによる分子フィルター機構がまず考えられる。しかしながら、[[wikipedia:ja:イオン半径|イオン半径]]では、Na<sup>+</sup>(イオン半径r=0.95 Å)はK<sup>+</sup>(r=1.33 Å)はよりも小さく、なぜK<sup>+</sup>を透過してNa<sup>+</sup>を透過させないのか説明がつかない。カリウムチャネルのこのカリウム選択的透過機構はこのチャネルがもつ小孔の最も狭い領域、[[イオン選択フィルター]]の構造に関係がある<ref name="ref3" /><ref name="ref4" />。イオンは水分子と相互作用(水和)した状態で水に溶けている(図3a)。イオンチャネルの細いフィルター内に入る際に、イオンは水分子との相互作用をフィルターを形成するアミノ酸の[[wikipedia:ja:酸素|酸素]]原子を含む[[wikipedia:ja:カルボニル基|カルボニル基]]との相互作用に置き換える(図3a、b)。小孔の大きさがK<sup>+</sup>イオンに適切であり、K<sup>+</sup>イオンは4つサブユニットのカルボニル基から均等に作用を受け、安定な8[[wikipedia:ja:水和|水和]]様構造をとり安定する(図3a、c)<ref name="ref5" /><ref name="ref6" />。一方、Na<sup>+</sup>イオンはイオン半径が小さくK<sup>+</sup>イオンのようには相互作用が出来ず(図3a)、K<sup>+</sup>イオンに比べ不安定に存在する。このような違いがK<sup>+</sup>イオンの選択的な透過に寄与していると考えられている。この機構は[[最適合close-fit説]]とよばれる。 | ||
カリウムチャネルの選択フィルターは12 Åほどの長さがあり結晶構造では4つのK<sup>+</sup>イオン結合部位が認められる(図3b)。しかし近接した結合部位にK<sup>+</sup>イオンが同時に結合するとイオン間で電気的な反発がおこり不安定であると考えられる。そのため4つの部位を細胞外側から1-4サイトとすると、K<sup>+</sup>イオンとチャネルの結合には[1,3]サイトに結合した状態と[2,4]サイトに結合した状態があると考えられる(図3c)。また、フィルター内に複数のイオンが同時に入ることによってイオン間に静電気的反発力が発生し、玉突き状態になることが早いイオン透過に寄与していると考えられている<ref><pubmed>11689935</pubmed></ref>。 | カリウムチャネルの選択フィルターは12 Åほどの長さがあり結晶構造では4つのK<sup>+</sup>イオン結合部位が認められる(図3b)。しかし近接した結合部位にK<sup>+</sup>イオンが同時に結合するとイオン間で電気的な反発がおこり不安定であると考えられる。そのため4つの部位を細胞外側から1-4サイトとすると、K<sup>+</sup>イオンとチャネルの結合には[1,3]サイトに結合した状態と[2,4]サイトに結合した状態があると考えられる(図3c)。また、フィルター内に複数のイオンが同時に入ることによってイオン間に静電気的反発力が発生し、玉突き状態になることが早いイオン透過に寄与していると考えられている<ref><pubmed>11689935</pubmed></ref>。 | ||
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=== 電位依存性カリウムチャネル === | === 電位依存性カリウムチャネル === | ||
電位依存性カリウム(Kv)チャネルは静止膜電位付近ではポアが閉じているが、[[脱分極]]によって活性化([[開口確率]]が上昇)し小孔が開口するカリウムチャネルである(図4)。Kvチャネルファミリーのαサブユニットの遺伝子はKv1-12の12クラス、さらにサブファミリーも存在し40種類ほど単離されている<ref><pubmed>14657415</pubmed></ref><ref name=PMID16382104><pubmed>16382104</pubmed></ref> | 電位依存性カリウム(Kv)チャネルは静止膜電位付近ではポアが閉じているが、[[脱分極]]によって活性化([[開口確率]]が上昇)し小孔が開口するカリウムチャネルである(図4)。Kvチャネルファミリーのαサブユニットの遺伝子はKv1-12の12クラス、さらにサブファミリーも存在し40種類ほど単離されている<ref><pubmed>14657415</pubmed></ref><ref name=PMID16382104><pubmed>16382104</pubmed></ref>。先に述べたように、6TM型の二次構造をとり、N末端から5番目、6番目の膜貫通領域(S5、S6)がポアドメインの形成に関与し、1番目から4番目の膜貫通領域(S1-S4)が電位センサーとして機能する構造を形成する。結晶構造が報告され、電位センサードメインが隣接するサブユニット由来のポアドメインと近接しているという特徴的なドメイン配置が明らかにされている(図1)。 | ||
Kvチャネルは、活性化の電位依存性や[[不活性化]]の有無、薬物感受性などから様々なタイプに細分類される。脱分極刺激による活性化後直ぐに不活性化され、一過的な電流を流す[[早期不活性化カリウムチャネル]](A型Kチャネル)と不活性化が殆どおこらず活性化が持続する[[遅延整流性カリウムチャネル]]に分けることができる。また活性化のスピードから「早い成分」と「遅い成分」とに、あるいは活性化の閾値から「低閾値(low-voltage- | Kvチャネルは、活性化の電位依存性や[[不活性化]]の有無、薬物感受性などから様々なタイプに細分類される。脱分極刺激による活性化後直ぐに不活性化され、一過的な電流を流す[[早期不活性化カリウムチャネル]](A型Kチャネル)と不活性化が殆どおこらず活性化が持続する[[遅延整流性カリウムチャネル]]に分けることができる。また活性化のスピードから「早い成分」と「遅い成分」とに、あるいは活性化の閾値から「低閾値(low-voltage-activated、LVA)型」と「高閾値(high-voltage-activated、HVA)型」とに分類されることもある。 | ||
Kvチャネルの活性化の機構としては、膜電位変化に応じて電位センサードメインの構造変化が起こることが想定されている。この電位センサードメインの構造変化が、チャネルの開閉時に測定されるゲート電流と呼ばれる小さな電流を担っていると考えられている。電位センサードメインが脂質二重膜を横切る膜電位の変化をどのように感知し、そして小孔の開閉を制御する仕組みが精力的に研究されているが、その分子機構は明らかではない。近年は電位センサードメインの結晶構造が報告され、その構造変化とその結果起こる小孔の開口のメカニズムに関して議論が続いている。 | Kvチャネルの活性化の機構としては、膜電位変化に応じて電位センサードメインの構造変化が起こることが想定されている。この電位センサードメインの構造変化が、チャネルの開閉時に測定されるゲート電流と呼ばれる小さな電流を担っていると考えられている。電位センサードメインが脂質二重膜を横切る膜電位の変化をどのように感知し、そして小孔の開閉を制御する仕組みが精力的に研究されているが、その分子機構は明らかではない。近年は電位センサードメインの結晶構造が報告され、その構造変化とその結果起こる小孔の開口のメカニズムに関して議論が続いている。 | ||
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カルシウム活性化カリウムチャネル(KCaチャネル)は[[wikipedia:ja:細胞質|細胞質]]のCa<sup>2+</sup>濃度上昇によって活性が増加するカリウムチャネルである<ref><pubmed>12678784</pubmed></ref><ref><pubmed>15378036</pubmed></ref><ref name="ref13"><pubmed>21942705</pubmed></ref>。シングルチャネルコンダクタンスの違いから[[大(Big)コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(BK)チャネル]]と[[小(Small)コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK)チャネル]]、そしてBKチャネルとIKチャネルの中間のコンダクタンスを持つ[[中間(Intermediate)コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(IK)チャネル]]に分類されている。BKチャネルは電位依存的な活性化がおこり、アミノ酸の相同性の面からも電位依存性カリウムチャネルに分類されることも多いが、本項ではKCaチャネルの項目で扱う。BKチャネルにCa<sup>2+</sup>が結合することで電位依存的な活性化の特性が影響をうける。一方、IK、SKチャネルは電位非依存的であるが、細胞内Ca<sup>2+</sup>濃度上昇(100-600 nM)によって開口する。この機構には細胞内[[カルモデュリン]](CaM)が必要である。 | カルシウム活性化カリウムチャネル(KCaチャネル)は[[wikipedia:ja:細胞質|細胞質]]のCa<sup>2+</sup>濃度上昇によって活性が増加するカリウムチャネルである<ref><pubmed>12678784</pubmed></ref><ref><pubmed>15378036</pubmed></ref><ref name="ref13"><pubmed>21942705</pubmed></ref>。シングルチャネルコンダクタンスの違いから[[大(Big)コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(BK)チャネル]]と[[小(Small)コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK)チャネル]]、そしてBKチャネルとIKチャネルの中間のコンダクタンスを持つ[[中間(Intermediate)コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(IK)チャネル]]に分類されている。BKチャネルは電位依存的な活性化がおこり、アミノ酸の相同性の面からも電位依存性カリウムチャネルに分類されることも多いが、本項ではKCaチャネルの項目で扱う。BKチャネルにCa<sup>2+</sup>が結合することで電位依存的な活性化の特性が影響をうける。一方、IK、SKチャネルは電位非依存的であるが、細胞内Ca<sup>2+</sup>濃度上昇(100-600 nM)によって開口する。この機構には細胞内[[カルモデュリン]](CaM)が必要である。 | ||
サブユニットの構造としてはKvチャネルと同様に六回膜貫通領域と一つのP領域を持つ6TM型である。SK、IKチャネルサブユニット(KCNN1- | サブユニットの構造としてはKvチャネルと同様に六回膜貫通領域と一つのP領域を持つ6TM型である。SK、IKチャネルサブユニット(KCNN1-3、or SK1-4)はS4に正電荷を帯びたアミノ酸が揃っておらず、機能的に電位非依存的であることに関連する。またS6のC末端側にCaMに結合する領域をもつ。一方、[[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]のBKチャネル[KCNMA1、MaxiK or Slo1([[ショウジョウバエ]]のslowpoke mutantから見つかったことに由来)]はS1-S6に加えN末端側にさらにS0膜貫通領域をもつ。S4が電位センサーの中心として機能し、C末端の二つのRCK(Regulators of the K conductance)領域はCa<sup>2+</sup>依存的な活性化機構に重要な役割を果す。これらはすべて四量体を形成しチャネルを構成する。BKチャネルのβサブユニットSlob(slowpoke channel binding protein)も同定されている。 | ||
BKチャネルと同じsloサブファミリーに属するSlo2(Slo2. | BKチャネルと同じsloサブファミリーに属するSlo2(Slo2.1、2.2)チャネルはCa<sup>2+</sup>によってではなく、Na<sup>+</sup>によって活性化される。このチャネルは神経細胞などで観察されるNa活性化カリウムチャネルの分子実体であると考えられている。 | ||
=== 内向き整流性カリウムチャネル === | === 内向き整流性カリウムチャネル === | ||
102行目: | 102行目: | ||
神経細胞、骨格筋細胞における興奮性の制御(遅延性整流性カリウム電流 Kv1.2) | 神経細胞、骨格筋細胞における興奮性の制御(遅延性整流性カリウム電流 Kv1.2) | ||
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[[4-アミノピリジン]] (4-AP)(< | [[4-アミノピリジン]] (4-AP)(< mM)、[[テトラエチルアンモニウム]] (TEA)(0.3 mM)(Kv1.1) | ||
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116行目: | 116行目: | ||
A-type電流、神経細胞における脱分極後過分極 (AHP) | A-type電流、神経細胞における脱分極後過分極 (AHP) | ||
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4-アミノピリジン(13 | 4-アミノピリジン(13 µM)、TEA(>100 mM) | ||
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心臓におけるIKur | 心臓におけるIKur | ||
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[[キニジン]](0.6 | [[キニジン]](0.6 µM)、[[プロパフェノン]](4.4 µM)、4-アミノピリジン(270 µM)、TEA(330 mM) | ||
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Kv2. | Kv2.1、2.2 | ||
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{{gene|KCNB1}}、{{gene|KCNB2}} | {{gene|KCNB1}}、{{gene|KCNB2}} | ||
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Shab-related | Shab-related | ||
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Kv5、6、8、9、KChaP | |||
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脱分極によって活性化、遅延性整流性 | 脱分極によって活性化、遅延性整流性 | ||
186行目: | 186行目: | ||
神経細胞、骨格筋細胞における興奮性の制御 | 神経細胞、骨格筋細胞における興奮性の制御 | ||
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[[ハナトキシン]](42 nM)(Kv2. | [[ハナトキシン]](42 nM)(Kv2.1)、細胞内TEA、細胞外TEA(2.6 mM)(Kv2.2)、4-アミノピリジン(18 mM for Kv2.1; 1.5 mM for Kv2.2) | ||
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Kv3. | Kv3.1、3.2 | ||
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{{gene|KCNC1}}、{{gene|KCNC2}} | {{gene|KCNC1}}、{{gene|KCNC2}} | ||
200行目: | 200行目: | ||
神経細胞の高頻度発火、fast spiking | 神経細胞の高頻度発火、fast spiking | ||
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4-アミノピリジン(29 µM for Kv3.1; 0.1 mM for Kv3. | 4-アミノピリジン(29 µM for Kv3.1; 0.1 mM for Kv3.2)、TEA(0.2 mM for Kv3.1; 0.1 mM for Kv3.2) | ||
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Kv3. | Kv3.3、3.4 | ||
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{{gene|KCNC3}} | {{gene|KCNC3}}、{{gene|KCNC4}} | ||
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213行目: | 213行目: | ||
骨格筋細胞における静止膜電位の形成 | 骨格筋細胞における静止膜電位の形成 | ||
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4-アミノピリジン(1.2 mM for Kv3. | 4-アミノピリジン(1.2 mM for Kv3.3)、TEA(0.14 mM for Kv3.3; 0.3 mM for Kv3.4) | ||
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223行目: | 223行目: | ||
Shal-related | Shal-related | ||
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KChiP1、KChiPs、DPPX、DPP10(Kv4.2) | |||
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脱分極によって活性化、早い不活性化(A-type) | 脱分極によって活性化、早い不活性化(A-type) | ||
229行目: | 229行目: | ||
心臓におけるIto(Kv4.2/Kv4.3/KChiP2)、神経細胞の細胞体におけるISA | 心臓におけるIto(Kv4.2/Kv4.3/KChiP2)、神経細胞の細胞体におけるISA | ||
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4-アミノピリジン(9 mM for Kv4.1; 5 mM for Kv4. | 4-アミノピリジン(9 mM for Kv4.1; 5 mM for Kv4.2)、TEA(>10 mM for Kv4.1) | ||
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263行目: | 263行目: | ||
{{gene|KCNQ1}} | {{gene|KCNQ1}} | ||
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KVLQT、KQT | |||
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KCNE1-3 | KCNE1-3 | ||
283行目: | 283行目: | ||
脱分極によって活性化、遅延性整流性 | 脱分極によって活性化、遅延性整流性 | ||
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神経細胞における[[M電流]](Kv7.2/7. | 神経細胞における[[M電流]](Kv7.2/7.3、Kv7.5)、[[内耳]]機能(Kv7.4) | ||
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315行目: | 315行目: | ||
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Kv10. | Kv10.1、10.2 | ||
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{{gene|KCNH1}}、{{gene|KCNH5}} | {{gene|KCNH1}}、{{gene|KCNH5}} | ||
335行目: | 335行目: | ||
erg | erg | ||
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minK、KCNE2(Kv11.1) | |||
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脱分極によって活性化、早い不活性化機構(C-type)による内向き整流性 | 脱分極によって活性化、早い不活性化機構(C-type)による内向き整流性 | ||
341行目: | 341行目: | ||
活動電位の再分極、心臓におけるIKr電流、LQT2の原因遺伝子、薬物誘発性不整脈の分子機構(Kv11.1) | 活動電位の再分極、心臓におけるIKr電流、LQT2の原因遺伝子、薬物誘発性不整脈の分子機構(Kv11.1) | ||
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アステミゾール(1 nM for Kv11. | アステミゾール(1 nM for Kv11.1)、ドフェチリド(15-35 nM for Kv11.1)、セルチンドール(3 nM for Kv11.1; 43 nM for Kv11.3) | ||
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362行目: | 362行目: | ||
{{gene|KCNMA1}} | {{gene|KCNMA1}} | ||
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Slo、Slo1、BK | |||
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369行目: | 369行目: | ||
神経細胞におけるfast AHP、シナプス前終末における伝達物質放出制御、[[wj:平滑筋|平滑筋]]細胞におけるCa<sup>2+</sup>スパークの効果器 | 神経細胞におけるfast AHP、シナプス前終末における伝達物質放出制御、[[wj:平滑筋|平滑筋]]細胞におけるCa<sup>2+</sup>スパークの効果器 | ||
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[[カリブドトキシン]](2.9 | [[カリブドトキシン]](2.9 nM)、[[イベリオトキシン]](1.7 nM)、TEA(0.14 mM) | ||
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385行目: | 385行目: | ||
神経細胞におけるAHP | 神経細胞におけるAHP | ||
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UCL1684(1 nM for KCa2.1; 250 pM for KCa2. | UCL1684(1 nM for KCa2.1; 250 pM for KCa2.2)、アパミン(8 nM for KCa2.1; 60-200 pM for KCa2.2; 10 nM for KCa2.3)、タマピン(42 nM for KCa2.1; 24 pM for KCa2.2) | ||
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EBIO(630 | EBIO(630 µM)、NS309(30 nM) | ||
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402行目: | 402行目: | ||
神経細胞におけるAHP | 神経細胞におけるAHP | ||
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カリブドトキシン(5 | カリブドトキシン(5 nM)、イベリオトキシン(1.7 nM)、TEA(24 mM)、ケトコナゾール(30 µM)、エコナゾール(12 µM) | ||
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EBIO、NS309(10 nM) | |||
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KCa4. | KCa4.1、4.2 | ||
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{{gene|KCNT2}} | {{gene|KCNT2}} | ||
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Slack、Slo2.2; Slick、Slo2.1 | |||
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447行目: | 447行目: | ||
[[wj:ネフロン|ネフロン]]におけるカリウムリサイクリンク、分泌 | [[wj:ネフロン|ネフロン]]におけるカリウムリサイクリンク、分泌 | ||
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Ba<sup>2+</sup> | Ba<sup>2+</sup>、Cs<sup>+</sup> | ||
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462行目: | 462行目: | ||
静止膜電位形成への関与、心臓におけるIK1電流(Kir2.1/Kir2.2) | 静止膜電位形成への関与、心臓におけるIK1電流(Kir2.1/Kir2.2) | ||
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Ba<sup>2+</sup> | Ba<sup>2+</sup>、Cs<sup>+</sup>、細胞内Mg<sup>2+</sup>、細胞内[[ポリアミン]] | ||
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477行目: | 477行目: | ||
神経細胞における遅延性の[[抑制性シナプス]]後電位の形成(Kir3.1/Kir3.2)、心臓における徐脈の分子機構(Kir3.1/Kir3.4) | 神経細胞における遅延性の[[抑制性シナプス]]後電位の形成(Kir3.1/Kir3.2)、心臓における徐脈の分子機構(Kir3.1/Kir3.4) | ||
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Ba<sup>2+</sup> | Ba<sup>2+</sup>、Cs<sup>+</sup>、terpiapin | ||
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Gβγ、細胞内Na<sup>+</sup>、[[ホスファチジルイノシトール|PIP<sub>2</sub>]]、GPCR活性化薬(三量体Gタンパク質シグナルを介して) | Gβγ、細胞内Na<sup>+</sup>、[[ホスファチジルイノシトール|PIP<sub>2</sub>]]、GPCR活性化薬(三量体Gタンパク質シグナルを介して) | ||
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{{gene|KCNJ10}}、{{gene|KCNJ15}} | {{gene|KCNJ10}}、{{gene|KCNJ15}} | ||
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KAB- | KAB-2、BIR(K)10 | ||
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493行目: | 493行目: | ||
脳内におけるグリア細胞によるカリウムバッファリング機構、内耳や腎臓におけるカリウム恒常性 | 脳内におけるグリア細胞によるカリウムバッファリング機構、内耳や腎臓におけるカリウム恒常性 | ||
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Ba<sup>2+</sup> | Ba<sup>2+</sup>、Cs<sup>+</sup>、細胞内Mg<sup>2+</sup>、細胞内ポリアミン | ||
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508行目: | 508行目: | ||
pHセンシング機構 | pHセンシング機構 | ||
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Ba<sup>2+</sup> | Ba<sup>2+</sup>、Cs<sup>+</sup>、細胞内H<sup>+</sup> | ||
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524行目: | 524行目: | ||
血管平滑筋の緊張度調節 | 血管平滑筋の緊張度調節 | ||
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Ba<sup>2+</sup> | Ba<sup>2+</sup>、Cs<sup>+</sup>、[[スルホニル尿素]]剤(SURに結合することによる) | ||
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カリウムチャネル開口薬([[ジアゾキシド]]、[[ピナシジル]]、[[ニコランジル]]など、SURに結合することによる) | カリウムチャネル開口薬([[ジアゾキシド]]、[[ピナシジル]]、[[ニコランジル]]など、SURに結合することによる) | ||
535行目: | 535行目: | ||
BIR | BIR | ||
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SUR1(膵臓β細胞)、SUR2A(心筋細胞)、SUR2B(血管平滑筋) | |||
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細胞内ATPによる抑制 | 細胞内ATPによる抑制 | ||
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膵臓β細胞からの[[インスリン]]分泌、脳内における酸素・[[グルコースセンサー]]機能、心臓、脳における虚血に対する細胞保護作用 | 膵臓β細胞からの[[インスリン]]分泌、脳内における酸素・[[グルコースセンサー]]機能、心臓、脳における虚血に対する細胞保護作用 | ||
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Ba<sup>2+</sup> | Ba<sup>2+</sup>、Cs<sup>+</sup>、スルホニル尿素剤(SURに結合することによる) | ||
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カリウムチャネル開口薬(ジアゾキシド、ピナシジル、ニコランジルなど、SURに結合することによる) | カリウムチャネル開口薬(ジアゾキシド、ピナシジル、ニコランジルなど、SURに結合することによる) | ||
555行目: | 555行目: | ||
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Ba<sup>2+</sup> | Ba<sup>2+</sup>、Cs<sup>+</sup>(他のKirファミリーに比べて感受性は低い) | ||
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812行目: | 812行目: | ||
神経系において、Kvチャネルは電位依存性ナトリウムチャネルと膜電位を介して機能的に共役し、活動電位の再分極、シナプス後細胞の興奮性の制御、振動性の興奮の制御、スパイク間隔の制御など重要な役割を果たしている。Kvチャネルの多様性が様々な生理機能のそれぞれに対応できるように、多種類の遅延整流性カリウムチャネルを形成している<ref name="ref18" /><ref><pubmed>16791144</pubmed></ref>。 | 神経系において、Kvチャネルは電位依存性ナトリウムチャネルと膜電位を介して機能的に共役し、活動電位の再分極、シナプス後細胞の興奮性の制御、振動性の興奮の制御、スパイク間隔の制御など重要な役割を果たしている。Kvチャネルの多様性が様々な生理機能のそれぞれに対応できるように、多種類の遅延整流性カリウムチャネルを形成している<ref name="ref18" /><ref><pubmed>16791144</pubmed></ref>。 | ||
神経細胞には[[Kv1]] | 神経細胞には[[Kv1]]、[[Kv2]]、[[Kv3]]、[[Kv4]]、[[Kv7]]、[[Kv11]]といったカリウムチャネルサブユニットの発現が認められている。各Kvチャネルクラスはサブファミリーをもち、それらのヘテロテトラマーとしてカリウムチャネルが構成されるので、その可能な組み合わせはサブユニットの数以上に膨大な数となる。 | ||
==== A電流 ==== | ==== A電流 ==== | ||
820行目: | 820行目: | ||
また、A電流が不活性化を受ける膜電位の範囲に静止膜電位が入っており、この電流は静止膜電位において一部不活性化を受けている。このことにより、静止膜電位付近の僅かな膜電位変化でもこの不活性化が制御され、A電流量に影響を及ぼす。例えば、過分極により不活性化が軽減され細胞膜の興奮性が下がる。さらに、[[PKA]]、[[PKC]]、[[MAPK]]、[[ERK]]などによる[[リン酸化]]など[[シグナル伝達]]による制御もよく知られている。このようなことから、神経細胞において小さな、局所的な膜電位変化である[[シナプス]]入力や[[GPCR]]を介した代謝性シグナル伝達がこのA電流を介して、膜の興奮性を制御することが可能である。 | また、A電流が不活性化を受ける膜電位の範囲に静止膜電位が入っており、この電流は静止膜電位において一部不活性化を受けている。このことにより、静止膜電位付近の僅かな膜電位変化でもこの不活性化が制御され、A電流量に影響を及ぼす。例えば、過分極により不活性化が軽減され細胞膜の興奮性が下がる。さらに、[[PKA]]、[[PKC]]、[[MAPK]]、[[ERK]]などによる[[リン酸化]]など[[シグナル伝達]]による制御もよく知られている。このようなことから、神経細胞において小さな、局所的な膜電位変化である[[シナプス]]入力や[[GPCR]]を介した代謝性シグナル伝達がこのA電流を介して、膜の興奮性を制御することが可能である。 | ||
[[Kv1.4]] | [[Kv1.4]]、[[Kv3.4]]、および[[Kv4]]サブユニットファミリー(Kv4.1-4.3)を細胞に発現させるとカリウムチャネルはA電流を流す(図5、Kv4電流)。その為、これらのサブユニットが生理的に計測されるA電流を担っていると考えられている。 | ||
神経細胞においては、[[細胞体]]や樹状突起からA電流が計測され、特に遠位樹状突起で大きなA電流が認められる。樹状突起におけるA電流はシナプス入力に対するシナプス後細胞の応答を制御しており、また細胞体から樹状突起への[[活動電位の逆伝搬現象]](backpropagating action | 神経細胞においては、[[細胞体]]や樹状突起からA電流が計測され、特に遠位樹状突起で大きなA電流が認められる。樹状突起におけるA電流はシナプス入力に対するシナプス後細胞の応答を制御しており、また細胞体から樹状突起への[[活動電位の逆伝搬現象]](backpropagating action potential、bAP)も制御している。Kv4サブファミリーは神経系におけるA電流のαサブユニットの主要な構成要素であり、例えば、[[CA1]][[錐体神経細胞]]では、[[Kv4.2]]サブユニットが細胞体樹状突起に豊富に発現している(図5)。しかし培養細胞にKv4ファミリーのαサブユニットのみを発現させただけでは、神経細胞で計測されるA電流の電気生理学的な特性を十分再現できない。 [[神経特異的カルシウムセンサータンパク質]](Neuronal Calcium sensor protein、NCS)のファミリーに属する[[K channel-interacting proteins]] (KChiPs)や [[dipeptidyl peptidase-like proteins]](DPPX、とくにDPP6やDPP10)というβサブユニットがKv4チャネルと複合体を形成し、その電流が神経細胞のA電流に類似していることから、その複合体が生理的に機能していると考えられる。 | ||
A電流の様に、非常に早く活性化され、その後速やかに不活性化される、一過性のカリウム電流であるが不活性化の膜電位がA電流と異なり、さらにカリウムチャネルに作用する薬物に対する感受性も明らかに異なる成分が認められることから、A電流とは分子実体の異なる[[D電流]]の存在が報告されている。[[Dendrotoxin]]感受性のD電流は、Kv4ではなく、Kv1サブファミリーが分子実体であると考えられる。 | A電流の様に、非常に早く活性化され、その後速やかに不活性化される、一過性のカリウム電流であるが不活性化の膜電位がA電流と異なり、さらにカリウムチャネルに作用する薬物に対する感受性も明らかに異なる成分が認められることから、A電流とは分子実体の異なる[[D電流]]の存在が報告されている。[[Dendrotoxin]]感受性のD電流は、Kv4ではなく、Kv1サブファミリーが分子実体であると考えられる。 | ||
846行目: | 846行目: | ||
=== カルシウム活性化カリウムチャネル === | === カルシウム活性化カリウムチャネル === | ||
神経細胞において活動電位後過分極(after | 神経細胞において活動電位後過分極(after hyperpolarization、AHP)が観察される。活動電位中に細胞内に流入したCa<sup>2+</sup>イオンによってKCaチャネルが活性化しAHPの形成に一部関与する<ref name="ref13" />。また、ある種類の神経細胞では電流を注入した時、始めは高頻度で発火するが次第に頻度が下がる順応反応[[spike frequency adaptation]]を呈する。KCaチャネルはこの順応反応にも関与する。KCaチャネルの活性化に必要なカルシウムシグナルは電位依存性Caチャネルと[[リアノジン受容体]]の働きにより形成されるが、結合膜構造が必要であるとの結果も出ている。また、[[初代培養|培養海馬細胞]]においてSKチャネルが[[スパイン]]に局在していることが報告され、シナプスにおけるカルシウムシグナルによって活性化されてシナプス後電位の形成にも関与することが示されている<ref name="ref13" />。 | ||
=== 内向き整流性カリウムチャネル === | === 内向き整流性カリウムチャネル === | ||
856行目: | 856行目: | ||
====Gタンパク質活性化カリウム(GIRK)チャネル==== | ====Gタンパク質活性化カリウム(GIRK)チャネル==== | ||
Gタンパク質活性化カリウム(GIRK)チャネルは三量体Gタンパク質のGβγサブユニットとの結合によって活性化されるカリウムチャネルである。このチャネルは心臓の徐脈に関与するイオンチャネルとしてよく知られている。中枢神経系においては[[GABAB受容体|GABA<sub>B</sub>受容体]]などと機能的に共役し、抑制性シナプスにおいて観察される遅延性の抑制性シナプス後電流(slow inhibitory postsynaptic | Gタンパク質活性化カリウム(GIRK)チャネルは三量体Gタンパク質のGβγサブユニットとの結合によって活性化されるカリウムチャネルである。このチャネルは心臓の徐脈に関与するイオンチャネルとしてよく知られている。中枢神経系においては[[GABAB受容体|GABA<sub>B</sub>受容体]]などと機能的に共役し、抑制性シナプスにおいて観察される遅延性の抑制性シナプス後電流(slow inhibitory postsynaptic current、sIPSC)を担う。GIRKチャネルはKir3サブファミリーで構成されるKirチャネルであり、神経細胞においてはKir3.1とKir3.2とで構成されるGIRKチャネルが主要な構成要素であると考えられている。しかし生化学的にはKir3.3や心臓型のKir3.4サブユニットの発現も認められる。 | ||
====ATP感受性カリウムチャネル==== | ====ATP感受性カリウムチャネル==== | ||
[[wikipedia:ja:ATP感受性K|ATP感受性K]](K<sub>ATP</sub>)はチャネルのポアを形成するイオンチャネルもKirチャネルファミリーに属する(Kir6サブファミリー)。Kir6.2にATPが結合することでチャネルが閉口する。ABCタンパク質ファミリーに属し、[[wikipedia:ja:スルホニルウレア|スルホニルウレア]]剤の標的として知られる[[wikipedia:ja:スルホニルウレア受容体|スルホニルウレア受容体]](sulfonylurea | [[wikipedia:ja:ATP感受性K|ATP感受性K]](K<sub>ATP</sub>)はチャネルのポアを形成するイオンチャネルもKirチャネルファミリーに属する(Kir6サブファミリー)。Kir6.2にATPが結合することでチャネルが閉口する。ABCタンパク質ファミリーに属し、[[wikipedia:ja:スルホニルウレア|スルホニルウレア]]剤の標的として知られる[[wikipedia:ja:スルホニルウレア受容体|スルホニルウレア受容体]](sulfonylurea receptor、SUR)はK<sub>ATP</sub>チャネルに必須のβサブユニットであり、Kir6とSURは4:4のヘテロオクタマーを形成し機能する。 | ||
K<sub>ATP</sub>チャネルの細胞内ATPによる閉口は、[[wikipedia:ja:グルコース|グルコース]]依存的な[[wikipedia:ja:膵臓β細胞|膵臓β細胞]]からの[[wikipedia:ja:インスリン|インスリン]]分泌の分子機構として役割が最もよく知られている。加えて、[[視床下部]]などで認められるいくつかの神経細胞で観察される、膜の電気的な興奮性のグルコース感受性の機構の一つとして知られている。グルコース濃度上昇によって、細胞へのグルコース取り込み増し、細胞内ATP産生増によるK<sub>ATP</sub>チャネル阻害がおこり、結果として膜の脱分極、細胞興奮性の亢進がおこる。他にも心筋細胞、[[wikipedia:ja:平滑筋|平滑筋]]細胞などにも発現しており、やはり細胞の代謝レベルと膜の興奮性の共役を担っている。 | K<sub>ATP</sub>チャネルの細胞内ATPによる閉口は、[[wikipedia:ja:グルコース|グルコース]]依存的な[[wikipedia:ja:膵臓β細胞|膵臓β細胞]]からの[[wikipedia:ja:インスリン|インスリン]]分泌の分子機構として役割が最もよく知られている。加えて、[[視床下部]]などで認められるいくつかの神経細胞で観察される、膜の電気的な興奮性のグルコース感受性の機構の一つとして知られている。グルコース濃度上昇によって、細胞へのグルコース取り込み増し、細胞内ATP産生増によるK<sub>ATP</sub>チャネル阻害がおこり、結果として膜の脱分極、細胞興奮性の亢進がおこる。他にも心筋細胞、[[wikipedia:ja:平滑筋|平滑筋]]細胞などにも発現しており、やはり細胞の代謝レベルと膜の興奮性の共役を担っている。 | ||
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== 病気との関連 -カリウムチャネルのチャネル病 == | == 病気との関連 -カリウムチャネルのチャネル病 == | ||
心臓病、筋肉病、脳疾患、腎疾患、代謝性疾患など様々な疾患で、イオンチャネルをコードする遺伝子の異常を原因とするものが知られるようになってきた。いわゆる、[[チャネル病]](Channelopathy)という概念が定着してきている<ref><pubmed>16554803</pubmed></ref><ref><pubmed>22290238</pubmed></ref>。代表的なものとして、先天性[[wikipedia:ja:QT延長症候群|QT延長症候群]](Long QT | 心臓病、筋肉病、脳疾患、腎疾患、代謝性疾患など様々な疾患で、イオンチャネルをコードする遺伝子の異常を原因とするものが知られるようになってきた。いわゆる、[[チャネル病]](Channelopathy)という概念が定着してきている<ref><pubmed>16554803</pubmed></ref><ref><pubmed>22290238</pubmed></ref>。代表的なものとして、先天性[[wikipedia:ja:QT延長症候群|QT延長症候群]](Long QT syndrome、LQTs)を引き起こす電位依存的カリウムチャネルのαサブユニットKv7.1(KCNQ1)の遺伝子異常が多数見つかっている(タイプ1、LQT1)。また、このチャネルのβサブユニットであるminK(KCNE1)の異常がLQT5の患者から見つかっている。LQT2の場合は、Kv11.1(HERG)遺伝子に異常が見つかっている。これらの遺伝子異常により、心筋の遅延整流性カリウム電流の遅い成分(''I''<sub>Ks</sub>)や早い成分(''I''<sub>Kr</sub>)を担うカリウムチャネルは機能欠損(loss-of-function)になり、それによって心筋細胞を再分極させる外向き電流が減少することが、活動電位の延長やQT時間の延長の原因である。また、[[wikipedia:ja:不整脈|不整脈]](QT 延長)に両側性[[wikipedia:ja:感音性難聴|感音性難聴]]を伴う[[wikipedia:ja:Jervell & Lange-Nielson症候群|Jervell & Lange-Nielson症候群]] (JLN) の機能欠損変異もKv7.1(KCNQ1) 、minK(KCNE1)で見つかっている。不整脈、突発性の筋脱力、形態異常など全身性の症状を呈する[[wikipedia:ja:Andersen-Tawil症候群|Andersen-Tawil症候群]](LQT7)の患者からはKir2.1の機能欠損変異が見つかっている。逆に、KCNQ1、hERG、Kir2.1の遺伝子の機能獲得(gain-of-function)変異が[[wikipedia:ja:QT短縮症候群|QT短縮症候群]](Short QT syndrome、SQTs) 患者から見つかっている。 | ||
脳疾患では、神経性のM電流を欠損するKv7.2(KCNQ2)やKv7.3(KCNQ3)の機能欠損変異が[[家族性良性新生児痙攣]](Benign familial neonatal | 脳疾患では、神経性のM電流を欠損するKv7.2(KCNQ2)やKv7.3(KCNQ3)の機能欠損変異が[[家族性良性新生児痙攣]](Benign familial neonatal epilepsy、BFNE)の原因として報告されている <ref><pubmed>9430594</pubmed></ref><ref><pubmed>9872318</pubmed></ref><ref><pubmed>9425900</pubmed></ref><ref><pubmed>9425895</pubmed></ref>。また、Kv1.1の機能欠損変異が[[発作性運動失調症]](episodic ataxia、EA)を引き起こすこと知られている<ref><pubmed>7842011</pubmed></ref>。さらに、Kv7.4(KCNQ4)やKir4.1の変異が難聴に繋がることも分かっている。(KCNQ4遺伝子は[[wikipedia:ja:常染色体優性遺伝|常染色体優性遺伝]]形式を取るDFNA2の原因遺伝子として報告された) | ||
[[wikipedia:ja:腎|腎]]疾患、代謝性疾患で代表的なものは、[[wikipedia:ja:腎尿細管|腎尿細管]]上皮細胞頂上膜に局在するKir1.1(ROMK1)の異常が[[wikipedia:ja:代謝性アルカローシス|代謝性アルカローシス]]や[[wikipedia:ja:低K<sup>+</sup>血症|低K<sup>+</sup>血症]]を伴う[[wikipedia:ja:Bartter症候群|Bartter症候群]](II型)を引き起こすことが分かっている。さらにKir6.2、SUR1の変異による膵臓β細胞K<sub>ATP</sub>チャネルの機能獲得変異によって[[wikipedia:ja:新生児糖尿病|新生児糖尿病]](permenent neonatal diabetes)で、逆に機能欠損変異で[[wikipedia:ja:新生児持続性高インスリン性低血糖症|新生児持続性高インスリン性低血糖症]](Persistent hyperinsulinemic hypoglycemia of | [[wikipedia:ja:腎|腎]]疾患、代謝性疾患で代表的なものは、[[wikipedia:ja:腎尿細管|腎尿細管]]上皮細胞頂上膜に局在するKir1.1(ROMK1)の異常が[[wikipedia:ja:代謝性アルカローシス|代謝性アルカローシス]]や[[wikipedia:ja:低K<sup>+</sup>血症|低K<sup>+</sup>血症]]を伴う[[wikipedia:ja:Bartter症候群|Bartter症候群]](II型)を引き起こすことが分かっている。さらにKir6.2、SUR1の変異による膵臓β細胞K<sub>ATP</sub>チャネルの機能獲得変異によって[[wikipedia:ja:新生児糖尿病|新生児糖尿病]](permenent neonatal diabetes)で、逆に機能欠損変異で[[wikipedia:ja:新生児持続性高インスリン性低血糖症|新生児持続性高インスリン性低血糖症]](Persistent hyperinsulinemic hypoglycemia of infancy、PHHI)などで見つかっている。 | ||
チャネル病の遺伝性を解析してみると、表現型が常染色体優性遺伝で遺伝されることが多い。カリウムチャネルはα、βサブユニットの複合体であるため、異常なサブユニットが一つでも入ることで複合体の機能が欠失するドミナントネガティブ効果でイオンチャネル機能が阻害されることがある。一方、[[wikipedia:ja:ハプロ不全|ハプロ不全]](haplo-insufficiency)で発病する場合も多く報告されている。しかもその場合、機能欠損変異のみならず機能獲得変異によるチャネル病も報告されている。このことはイオンチャネルの機能が欠損していても過剰になっていても生体にとっては不適で、言い換えると適切な発現レベルや活性の範囲が存在することを示している。 | チャネル病の遺伝性を解析してみると、表現型が常染色体優性遺伝で遺伝されることが多い。カリウムチャネルはα、βサブユニットの複合体であるため、異常なサブユニットが一つでも入ることで複合体の機能が欠失するドミナントネガティブ効果でイオンチャネル機能が阻害されることがある。一方、[[wikipedia:ja:ハプロ不全|ハプロ不全]](haplo-insufficiency)で発病する場合も多く報告されている。しかもその場合、機能欠損変異のみならず機能獲得変異によるチャネル病も報告されている。このことはイオンチャネルの機能が欠損していても過剰になっていても生体にとっては不適で、言い換えると適切な発現レベルや活性の範囲が存在することを示している。 | ||
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近年、Kvチャネル電流を増加させる薬物も報告されており、それらは不活性化機構や脱感作機構に影響を及ぼしていると報告されている。 | 近年、Kvチャネル電流を増加させる薬物も報告されており、それらは不活性化機構や脱感作機構に影響を及ぼしていると報告されている。 | ||
KCaチャネルのBKチャネルはサソリ毒の[[charybdotoxin]]、[[iberiotoxin]]、そして比較的低濃度のTEA(<1 mM)によって阻害される。またSKチャネルはハチ毒[[apamin]]によって強力に阻害される。この薬物感受性の違いはCa活性化Kチャネルの分子種の特定に利用される。また、1- | KCaチャネルのBKチャネルはサソリ毒の[[charybdotoxin]]、[[iberiotoxin]]、そして比較的低濃度のTEA(<1 mM)によって阻害される。またSKチャネルはハチ毒[[apamin]]によって強力に阻害される。この薬物感受性の違いはCa活性化Kチャネルの分子種の特定に利用される。また、1-EBIOなどKCaチャネル(IK、SKチャネル)の開口薬が存在し、これらはCa<sup>2+</sup>感受性を高めることが報告されているが詳細なメカニズムは不明である。 | ||
K<sub>ATP</sub>チャネルの[[阻害薬]]と[[活性化薬]]が薬物治療に用いられている。スルホニルウレア剤(tolbutamide、glibenclamideなど)は膵臓β細胞のK<sub>ATP</sub> | K<sub>ATP</sub>チャネルの[[阻害薬]]と[[活性化薬]]が薬物治療に用いられている。スルホニルウレア剤(tolbutamide、glibenclamideなど)は膵臓β細胞のK<sub>ATP</sub>チャネルを阻害し細胞を脱分極させ、インスリン分泌を促す作用があり糖尿病の治療に用いられる。スルホニルウレア(sulfonylurea、SU)剤の受容サイトがあることから、K<sub>ATP </sub>チャネルのβサブユニットはスルホニルウレア受容体(sulfonylurea receptor、SUR)と呼ばれる。また、[[wikipedia:diazoxide|diazoxide]]や[[wikipedia:pinacidil|pinacidil]]などカリウムチャネル開口薬(K channel opener、KCO)とはK<sub>ATP</sub>チャネルの開口薬である。これらは血管の緊張を緩和し、血管拡張剤として用いられている。KCOもK<sub>ATP</sub>チャネルのβサブユニットSURに作用する。 | ||
[[wikipedia:ja:吸引性麻酔薬|吸引性麻酔薬]]である[[wikipedia:halothane|halothane]]がK2Pチャネルを活性化することが知られており、この作用は局所麻酔薬の分子作用機序として考えられている<ref><pubmed>10321245</pubmed></ref>。 | [[wikipedia:ja:吸引性麻酔薬|吸引性麻酔薬]]である[[wikipedia:halothane|halothane]]がK2Pチャネルを活性化することが知られており、この作用は局所麻酔薬の分子作用機序として考えられている<ref><pubmed>10321245</pubmed></ref>。 |