「追従眼球運動」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/kenichiromiura 三浦 健一郎]、[http://researchmap.jp/kenjikawano 河野 憲二]</font><br>
''京都大学 大学院医学研究科''<br>
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2012年5月24日 原稿完成日:2013年月日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadashiisa 伊佐 正](自然科学研究機構生理学研究所)<br>
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英語名:ocular following response、英略語:OFR  
英語名:ocular following response、英略語:OFR  


同義語:OFR  
同義語:OFR  


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 追従眼球運動とは眼前のテクスチャパターンが突然動く時に誘発される反射的な[[眼球運動]]である。視覚刺激が動き始めてから眼の動きが起こるまでの潜時が非常に短いことがその特徴として挙げられる。[[大脳皮質]][[MST野]]、[[脳幹]]の[[背外側橋核]]、脳幹の[[視索核]]、[[小脳]]の[[腹側傍片葉]]を含み、最終的に脳幹の[[wikipedia:ja:外眼筋|外眼筋]][[運動神経]]核に到る経路が追従眼球運動の発現に関わると考えられている。  
 追従眼球運動とは眼前のテクスチャパターンが突然動く時に誘発される反射的な[[眼球運動]]である。視覚刺激が動き始めてから眼の動きが起こるまでの潜時が非常に短いことがその特徴として挙げられる。[[大脳皮質]][[MST野]]、[[脳幹]]の[[背外側橋核]]、脳幹の[[視索核]]、[[小脳]]の[[腹側傍片葉]]を含み、最終的に脳幹の[[wikipedia:ja:外眼筋|外眼筋]][[運動神経]]核に到る経路が追従眼球運動の発現に関わると考えられている。  
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== 追従眼球運動とは ==
== 追従眼球運動とは ==
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 観察者が注視している平面上を動く視覚刺激に対しては良く反応するが、[[両眼視差]]をつけることで、それよりも前あるいは後ろの平面上の刺激をシミュレートすると、その刺激の動きに対する反応は注視平面から離れるにつれて急激に小さくなる。眼前に広がる3次元空間の中で、観察者がその時に注視している平面上の対象の[[網膜]]像を安定化するように働いていると考えられる<ref><pubmed> 9753150 </pubmed></ref>。  
 観察者が注視している平面上を動く視覚刺激に対しては良く反応するが、[[両眼視差]]をつけることで、それよりも前あるいは後ろの平面上の刺激をシミュレートすると、その刺激の動きに対する反応は注視平面から離れるにつれて急激に小さくなる。眼前に広がる3次元空間の中で、観察者がその時に注視している平面上の対象の[[網膜]]像を安定化するように働いていると考えられる<ref><pubmed> 9753150 </pubmed></ref>。  


 追従眼球運動反応は視覚刺激のサイズに依存する。広い視野を覆う視覚刺激は追従眼球運動の有効刺激であるが、視野全体を覆うテクスチャパターンは最適刺激ではない。横に細長い帯状の刺激(高さ1度、幅45度)を用い、それを画面上に間欠的に配置して調べると、帯状刺激の本数が多くなるにつれて反応が増大するが数本配置すると飽和する。さらに、視野全体を覆う刺激に対する反応は、たった一本の帯状刺激で起こる反応よりも小さい。このサイズの影響は、追従眼球運動の視覚情報処理に、[[正規化]](divisive normalization)や[[周辺抑制]](surround inhibitory mechanism)といった[[wikipedia:ja:非線形|非線形]]機構が関わることを示唆している<ref><pubmed> 18603279 </pubmed></ref>。  
 追従眼球運動反応は視覚刺激のサイズに依存する。広い視野を覆う視覚刺激は追従眼球運動の有効刺激であるが、視野全体を覆うテクスチャパターンは最適刺激ではない。横に細長い帯状の刺激(高さ1度、幅45度)を用い、それを画面上に間欠的に配置して調べると、帯状刺激の本数が多くなるにつれて反応が増大するが数本配置すると飽和する。さらに、視野全体を覆う刺激に対する反応は、たった一本の帯状刺激で起こる反応よりも小さい。このサイズの影響は、追従眼球運動の視覚情報処理に、[[正規化]](divisive normalization)や[[周辺抑制]](surround inhibitory mechanism)といった[[wikipedia:ja:非線形|非線形]]機構が関わることを示唆している<ref><pubmed> 18603279 </pubmed></ref>。  


 追従眼球運動は視覚刺激の[[wikipedia:ja:空間周波数|空間周波数]]と[[wikipedia:ja:時間周波数|時間周波数]]に依存する<ref><pubmed> 21421006 </pubmed></ref>。様々な空間周波数の[[wikipedia:ja:正弦波|正弦波]]運動縞に対する反応からその周波数特性を調べると、刺激の時間周波数が25Hzの時には平均0.2-0.3 cycles/度の刺激が最適であることが報告されている。また、高い時間周波数の正弦波運動縞に対して早く大きく応答する。サルでは20-40Hzの刺激で眼球運動濳時が最も短くなる。ヒトでは16-20 Hz程度が最適と報告されている。  
 追従眼球運動は視覚刺激の[[wikipedia:ja:空間周波数|空間周波数]]と[[wikipedia:ja:時間周波数|時間周波数]]に依存する<ref><pubmed> 21421006 </pubmed></ref>。様々な空間周波数の[[wikipedia:ja:正弦波|正弦波]]運動縞に対する反応からその周波数特性を調べると、刺激の時間周波数が25Hzの時には平均0.2-0.3 cycles/度の刺激が最適であることが報告されている。また、高い時間周波数の正弦波運動縞に対して早く大きく応答する。サルでは20-40Hzの刺激で眼球運動濳時が最も短くなる。ヒトでは16-20 Hz程度が最適と報告されている。  
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
<references />
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(執筆者:三浦健一郎、河野憲二 担当編集委員:伊佐正)