「転写制御因子」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0193859 室山 優子]、[http://researchmap.jp/tetsuichirosaito 斎藤 哲一郎]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0193859 室山 優子]、[http://researchmap.jp/tetsuichirosaito 斎藤 哲一郎]</font><br>
''千葉大学大学院 医学研究院''<br>
''千葉大学大学院 医学研究院''<br>
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2013年11月8日 原稿完成日:2013年月日<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2013年11月8日 原稿完成日:2013年月日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/noriko1128 大隅 典子](東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 脳神経科学コアセンター 発生発達神経科学分野)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/noriko1128 大隅 典子](東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター [[脳神経]]科学コアセンター 発生発達神経科学分野)<br>
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==転写制御因子とは==
==転写制御因子とは==
 遺伝子の転写は、[[wikipedia:ja:RNA|RNA]]ポリメラーゼがDNAを鋳型として相補的な[[wikipedia:ja: RNA|RNA]]を5’から3’の方向へ合成する反応である。転写においてRNAポリメラーゼの他に必要とされるタンパク質を転写因子 (transcription factor) という。その中で、転写制御因子はDNAに結合し、転写を調節するタンパク質であり、転写を促進するものを転写活性化因子、抑えるものを転写抑制因子という<ref name=ref1 />。一方、DNAに直接結合せず、転写制御因子とRNAポリメラーゼなどとの仲介役として転写を調節するタンパク質複合体は[[メディエーター]]である。メディエーターの機能は多岐に渡り、転写を活性化する[[コアクチベーター]]や、転写を抑制する[[コリプレッサー]]として働く<ref name=ref4><pubmed>15680973</pubmed></ref><ref name=ref5><pubmed>20940737</pubmed></ref>。メディエーター以外にも、コアクチベーターやコリプレッサーと呼ばれる因子があり、[[ヒストン]]の[[アセチル化]]や[[メチル化]]などを介して、[[クロマチン]]の状態を制御する<ref name=ref5 /><ref name=ref8><pubmed>21321607</pubmed></ref>。DNA上で転写の活性化に働く領域は[[エンハンサー]]、転写を抑制する領域が[[サイレンサー]]であり、それぞれ複数の転写制御因子が結合することが多い<ref name=ref15><pubmed>12853946</pubmed></ref><ref name=ref6><pubmed>21358745</pubmed></ref><ref name=ref7><pubmed>22868264</pubmed></ref>。
 遺伝子の転写は、[[wikipedia:ja:RNA|RNA]]ポリメラーゼがDNAを鋳型として相補的な[[wikipedia:ja: RNA|RNA]]を5’から3’の方向へ合成する反応である。転写においてRNAポリメラーゼの他に必要とされるタンパク質を[[転写因子]] (transcription factor) という。その中で、転写制御因子はDNAに結合し、転写を調節するタンパク質であり、転写を促進するものを転写活性化因子、抑えるものを転写抑制因子という<ref name=ref1 />。一方、DNAに直接結合せず、転写制御因子とRNAポリメラーゼなどとの仲介役として転写を調節するタンパク質複合体は[[メディエーター]]である。メディエーターの機能は多岐に渡り、転写を活性化する[[コアクチベーター]]や、転写を抑制する[[コリプレッサー]]として働く<ref name=ref4><pubmed>15680973</pubmed></ref><ref name=ref5><pubmed>20940737</pubmed></ref>。メディエーター以外にも、コアクチベーターやコリプレッサーと呼ばれる因子があり、[[ヒストン]]の[[アセチル化]]や[[メチル化]]などを介して、[[クロマチン]]の状態を制御する<ref name=ref5 /><ref name=ref8><pubmed>21321607</pubmed></ref>。DNA上で転写の活性化に働く領域は[[エンハンサー]]、転写を抑制する領域が[[サイレンサー]]であり、それぞれ複数の転写制御因子が結合することが多い<ref name=ref15><pubmed>12853946</pubmed></ref><ref name=ref6><pubmed>21358745</pubmed></ref><ref name=ref7><pubmed>22868264</pubmed></ref>。


==転写制御機構==
==転写制御機構==
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===転写抑制の機構===
===転写抑制の機構===
 転写抑制では、サイレンサーに結合した転写抑制因子が[[transducin-like Enhancer of split]]/[[groucho-related gene]]([[TLE]]/[[Grg]])や[[nuclear receptor corepressor]]/[[silencing mediator for retinoic and thyroid receptors]]([[NcoR]]/[[SMRT]])などのコリプレッサーを介して[[ヒストンデアセチラーゼ]]を引き寄せ、ヒストンのアセチル基を除去することによりヌクレオソームを安定化させ遺伝子を不活化する<ref><pubmed>18721877</pubmed></ref><ref><pubmed>21049000</pubmed></ref>。また、[[ヒストンメチルトランスフェラーゼ]]を引き寄せ、ヒストンの特定の部位をメチル化し、転写が起きないクロマチン状態を維持することにより抑制する場合もある<ref name=ref5 /><ref name=ref8 />。
 転写抑制では、サイレンサーに結合した転写抑制因子が[[transducin-like Enhancer of split]]/[[groucho-related gene]]([[TLE]]/[[Grg]])や[[nuclear receptor corepressor]]/[[silencing mediator for retinoic and thyroid receptors]]([[NcoR]]/[[SMRT]])などのコリプレッサーを介して[[ヒストン脱アセチル化酵素]]を引き寄せ、ヒストンの[[アセチル基]]を除去することによりヌクレオソームを安定化させ遺伝子を不活化する<ref><pubmed>18721877</pubmed></ref><ref><pubmed>21049000</pubmed></ref>。また、[[ヒストンメチル基転移酵素]]を引き寄せ、ヒストンの特定の部位を[[メチル化]]し、転写が起きないクロマチン状態を維持することにより抑制する場合もある<ref name=ref5 /><ref name=ref8 />。


 転写抑制因子の[[neuron-restrictive silencer factor]]/[[RE1-silencing transcription factor]]([[NRSF]]/[[REST]])は、サイレンサー中の塩基配列[[neural restrictive silencer element]]/[[repressor element 1]]([[NRSE]]/[[RE1]])に結合し、コリプレッサーを介したヒストンデアセチラーゼやヒストンメチルトランスフェラーゼの作用により、神経細胞で働く''[[superior cervical ganglia 10]]([[SCG10]])'' などの遺伝子の転写を非神経細胞で抑える<ref><pubmed>16150588</pubmed></ref>。
 転写抑制因子の[[neuron-restrictive silencer factor]]/[[RE1-silencing transcription factor]]([[NRSF]]/[[REST]])は、サイレンサー中の塩基配列[[neural restrictive silencer element]]/[[repressor element 1]]([[NRSE]]/[[RE1]])に結合し、コリプレッサーを介したヒストン脱アセチル化酵素やヒストンメチル基転移酵素の作用により、神経細胞で働く''[[superior cervical ganglia 10]]([[SCG10]])'' などの遺伝子の転写を非神経細胞で抑える<ref><pubmed>16150588</pubmed></ref>。


 [[Cyclin dependent kinase 8]]([[CDK8]])などのコリプレッサーは、転写制御因子をリン酸化し分解を促進したり、基本転写因子をリン酸化し転写開始前複合体の形成を阻害する<ref name=ref5 /><ref name=ref17 />。
 [[Cyclin dependent kinase 8]]([[CDK8]])などのコリプレッサーは、転写制御因子をリン酸化し分解を促進したり、基本転写因子をリン酸化し転写開始前複合体の形成を阻害する<ref name=ref5 /><ref name=ref17 />。
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 転写活性化因子の転写活性化ドメインは、コアクチベーターなどのタンパク質と結合し、[[酸性アミノ酸]]、もしくは[[グルタミン酸]]、[[プロリン]]のいずれかに富む領域などに分類される。転写抑制因子の転写抑制ドメインには、[[トリプトファン]]、[[アルギニン]]、プロリンからなる[[WRPWドメイン]]や、[[芳香族アミノ酸]]と[[疎水性アミノ酸]]からなる[[engrailed homology 1]]([[eRNA]])ドメインなどがあり、コリプレッサーとの結合に必須である<ref><pubmed>18254933</pubmed></ref><ref><pubmed>16309560</pubmed></ref>。[[ジンクフィンガー]]型因子などは、リガンドと結合するドメインも有する。
 転写活性化因子の転写活性化ドメインは、コアクチベーターなどのタンパク質と結合し、[[酸性アミノ酸]]、もしくは[[グルタミン酸]]、[[プロリン]]のいずれかに富む領域などに分類される。転写抑制因子の転写抑制ドメインには、[[トリプトファン]]、[[アルギニン]]、プロリンからなる[[WRPWドメイン]]や、[[芳香族アミノ酸]]と[[疎水性アミノ酸]]からなる[[engrailed homology 1]]([[eRNA]])ドメインなどがあり、コリプレッサーとの結合に必須である<ref><pubmed>18254933</pubmed></ref><ref><pubmed>16309560</pubmed></ref>。[[ジンクフィンガー]]型因子などは、リガンドと結合するドメインも有する。


 転写制御因子の構造については、[http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do Protein Data Bank]や[http://pfam.sanger.ac.uk/ Pfam]などのデータベースで検索できる。
 転写制御因子の構造については、[http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do Protein Data Bank]や[http://pfam.sanger.ac.uk/ Pfam]などのデータベースで[[検索]]できる。


===DNA結合ドメインによる分類===
===DNA結合ドメインによる分類===
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====ホメオドメイン====
====ホメオドメイン====
homeodomain
[[homeodomain]]


 ホメオボックスがコードする約60個のアミノ酸配列である。[[ショウジョウバエ]]の体節形成の研究で発見され、ヒトを含む高等動物までホモログ間でよく保存されている<ref><pubmed>11470884</pubmed></ref>。[[へリックス・ターン・へリックス構造]]をとり、2番目のヘリックスがDNAの主溝に入り込んで結合する。アミノ酸配列の類似性やホメオドメインの外のモチーフから、さらにサブファミリーに分けられる。ホメオドメインが結合するコンセンサス配列の代表としてATTAが知られ、サブファミリーにより認識配列が異なる<ref><pubmed>18585359</pubmed></ref>。
 [[ホメオボックス]]がコードする約60個のアミノ酸配列である。[[ショウジョウバエ]]の体節形成の研究で発見され、[[ヒト]]を含む高等動物までホモログ間でよく保存されている<ref><pubmed>11470884</pubmed></ref>。[[へリックス・ターン・へリックス構造]]をとり、2番目のヘリックスがDNAの主溝に入り込んで結合する。アミノ酸配列の類似性やホメオドメインの外のモチーフから、さらにサブファミリーに分けられる。ホメオドメインが結合するコンセンサス配列の代表としてATTAが知られ、サブファミリーにより認識配列が異なる<ref><pubmed>18585359</pubmed></ref>。


====ジンクフィンガー====
====ジンクフィンガー====
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basic helix-loop-helix、bHLH
basic helix-loop-helix、bHLH
   
   
 [[mammalian achaete-scute homolog 1]]/[[achaete-scute complex homolog 1]]([[Mash1]]/[[Ascl1]])や[[mammalian atonal homolog 1]]/[[atonal homolog 1]]([[Math1]]/[[Atoh1]])などの神経分化を開始させるプロニューラル因子などに見られる<ref name=ref10><pubmed>12094208</pubmed></ref>。[[transcription factor 3]]([[E12]]/[[Tcf3]])タンパク質などのへリックス・ループ・へリックスドメインとヘテロ[[wikipedia:ja:二量体|二量体]]を形成し、DNAに結合する。コンセンサス配列として、プロニューラル因子などの転写活性化因子が結合する[[E box]] (CANNTG) と、[[hairy, Enhancer of split 1]]([[Hes1]])などの転写抑制因子が結合する[[N box]] ([[CACNAG]]) などが知られている<ref name=ref11><pubmed>17329370</pubmed></ref>。
 [[mammalian achaete-scute homolog 1]]/[[achaete-scute complex homolog 1]]([[Mash1]]/[[Ascl1]])や[[mammalian atonal homolog 1]]/[[atonal homolog 1]]([[Math1]]/[[Atoh1]])などの神経[[分化]]を開始させるプロニューラル因子などに見られる<ref name=ref10><pubmed>12094208</pubmed></ref>。[[transcription factor 3]]([[E12]]/[[Tcf3]])タンパク質などのへリックス・ループ・へリックスドメインとヘテロ[[wikipedia:ja:二量体|二量体]]を形成し、DNAに結合する。コンセンサス配列として、プロニューラル因子などの転写活性化因子が結合する[[E box]] (CANNTG) と、[[hairy, Enhancer of split 1]]([[Hes1]])などの転写抑制因子が結合する[[N box]] ([[CACNAG]]) などが知られている<ref name=ref11><pubmed>17329370</pubmed></ref>。


====ロイシンジッパー====
====ロイシンジッパー====
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 転写制御因子の活性は、細胞の分化段階や細胞外からの刺激などにより制御され、リン酸化やリガンド結合、[[ユビキチン化]]などの影響を受ける<ref name=ref2 />。また、転写制御因子には、構造的に類似した因子同士で二量体を形成し機能するものも多い。へリックス・ループ・へリックス因子の一つである[[Id]]ファミリーは塩基性領域を欠き、塩基性へリックス・ループ・へリックス因子の[[E12]]/[[Tcf3]]などとへテロ二量体を形成し、E12/Tcf3がDNAに結合することを阻害する<ref><pubmed>11807807</pubmed></ref>。
 転写制御因子の活性は、細胞の分化段階や細胞外からの刺激などにより制御され、リン酸化やリガンド結合、[[ユビキチン化]]などの影響を受ける<ref name=ref2 />。また、転写制御因子には、構造的に類似した因子同士で二量体を形成し機能するものも多い。へリックス・ループ・へリックス因子の一つである[[Id]]ファミリーは塩基性領域を欠き、塩基性へリックス・ループ・へリックス因子の[[E12]]/[[Tcf3]]などとへテロ二量体を形成し、E12/Tcf3がDNAに結合することを阻害する<ref><pubmed>11807807</pubmed></ref>。


 [[transforming growth factor-&beta;]]([[TGF-&beta;]])ファミリーの分泌タンパク質が膜[[受容体]]に結合すると、[[Mad homology 1]]([[MH1]])ドメイン型因子の[[Smad2]]と[[Smad3]]はリン酸化され、[[Smad4]]とヘテロ二量体を形成後、核に移行して転写を制御する<ref><pubmed>21565618</pubmed></ref>。
 [[transforming growth factor-&beta;]]([[TGF-&beta;]])ファミリーの[[分泌]]タンパク質が膜[[受容体]]に結合すると、[[Mad homology 1]]([[MH1]])ドメイン型因子の[[Smad2]]と[[Smad3]]はリン酸化され、[[Smad4]]とヘテロ二量体を形成後、核に移行して転写を制御する<ref><pubmed>21565618</pubmed></ref>。


 [[wikipedia:ja:インターフェロン|インターフェロン]]などの[[wikipedia:ja:サイトカイン|サイトカイン]]や[[wikipedia:ja:ホルモン|ホルモン]]が受容体に結合すると、[[Janus kinase]]([[Jak]])によって[[Src homology 2]]([[SH2]])ドメイン型因子の[[シグナル伝達兼転写活性化因子]] ([[signal transducers and activator of transcription]]; [[STAT]]) がリン酸化される。リン酸化されたSTATはSH2ドメインを介して二量体を形成し、核に移行する<ref><pubmed>24058789</pubmed></ref>。
 [[wikipedia:ja:インターフェロン|インターフェロン]]などの[[wikipedia:ja:サイトカイン|サイトカイン]]や[[wikipedia:ja:ホルモン|ホルモン]]が受容体に結合すると、[[Janus kinase]]([[Jak]])によって[[Src homology 2]]([[SH2]])ドメイン型因子の[[シグナル伝達兼転写活性化因子]] ([[signal transducers and activator of transcription]]; [[STAT]]) がリン酸化される。リン酸化されたSTATはSH2ドメインを介して二量体を形成し、核に移行する<ref><pubmed>24058789</pubmed></ref>。
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==生体内での役割==
==生体内での役割==
===発生・細胞分化===
===発生・細胞分化===
 発生過程では、多数の転写制御因子が働く。神経発生の初期においては、Pax6や[[empty spiracles homeobox 2]]([[Emx2]])、[[NK6 homeobox 6.1]]([[Nkx6.1]])などのホメオドメイン型因子が[[神経管]]の[[前後軸]]や[[背腹軸]]に沿って特異的に発現し、[[終脳]]形成を制御する<ref><pubmed>19143049</pubmed></ref>。Hoxファミリーのタンパク質は、[[後脳]]と[[脊髄]]の前後軸沿いの特定の領域の個性に関わり、[[運動神経]]細胞などの分化を正常に進めるために必須である<ref name=ref13><pubmed>18524570</pubmed></ref>。
 発生過程では、多数の転写制御因子が働く。神経発生の初期においては、[[PAX6|Pax6]]や[[empty spiracles homeobox 2]]([[Emx2]])、[[NK6 homeobox 6.1]]([[Nkx6.1]])などのホメオドメイン型因子が[[神経管]]の[[前後軸]]や[[背腹軸]]に沿って特異的に発現し、[[終脳]]形成を制御する<ref><pubmed>19143049</pubmed></ref>。Hoxファミリーのタンパク質は、[[後脳]]と[[脊髄]]の前後軸沿いの特定の領域の個性に関わり、[[運動神経]]細胞などの分化を正常に進めるために必須である<ref name=ref13><pubmed>18524570</pubmed></ref>。


 Mash1/Ascl1 やMath1/Atoh1 などの[[プロニューラル因子]]は[[神経分化]]の開始を司り、神経細胞の分化や個性を制御する遺伝子の転写を活性化する<ref name=ref10 />。[[神経幹細胞]]や[[神経前駆細胞]]ではNotchがHes1やHes5を活性化し、Hes1やHes5タンパク質がプロニューラル遺伝子の上流などに結合し、転写を抑える<ref name=ref11 />。
 Mash1/Ascl1 やMath1/Atoh1 などの[[プロニューラル因子]]は[[神経分化]]の開始を司り、神経細胞の分化や個性を制御する遺伝子の転写を活性化する<ref name=ref10 />。[[神経幹細胞]]や[[神経前駆細胞]]ではNotchがHes1やHes5を活性化し、Hes1やHes5タンパク質がプロニューラル遺伝子の上流などに結合し、転写を抑える<ref name=ref11 />。
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 脊髄において、塩基性へリックス・ループ・へリックス型因子の[[Olig2]]は運動神経細胞の分化と[[オリゴデンドロサイト]]の産生に必須な一方、[[Scl]]/[[Tal1]]は[[介在神経細胞]]の分化と[[アストロサイト]]の産生を制御する<ref><pubmed>21068830</pubmed></ref>。
 脊髄において、塩基性へリックス・ループ・へリックス型因子の[[Olig2]]は運動神経細胞の分化と[[オリゴデンドロサイト]]の産生に必須な一方、[[Scl]]/[[Tal1]]は[[介在神経細胞]]の分化と[[アストロサイト]]の産生を制御する<ref><pubmed>21068830</pubmed></ref>。


 ホメオボックス遺伝子の''[[distal-less homeobox 1]]([[Dlx1]])'' と''[[Dlx2]]'' は、[[大脳基底核原基]]由来の細胞で発現し、大脳のGABA作動性神経細胞の産生に必須である<ref><pubmed>19428236</pubmed></ref>。
 ホメオボックス遺伝子の''[[distal-less homeobox 1]]([[Dlx1]])'' と''[[Dlx2]]'' は、[[大脳基底核原基]]由来の細胞で発現し、大脳の[[GABA作動性]]神経細胞の産生に必須である<ref><pubmed>19428236</pubmed></ref>。


 HMGボックス型因子のSox2は、プロニューラル因子と拮抗的に働き、神経分化を抑制する<ref name=ref15><pubmed>16139372</pubmed></ref>。また、Sox9やSox10はオリゴデンドロサイトの前駆細胞で発現し、オリゴデンドロサイトの分化を促進するとともに、[[ミエリン塩基性タンパク質]]などの遺伝子の転写を活性化する<ref name=ref15 />。
 HMGボックス型因子のSox2は、プロニューラル因子と拮抗的に働き、神経分化を抑制する<ref name=ref15><pubmed>16139372</pubmed></ref>。また、Sox9やSox10はオリゴデンドロサイトの前駆細胞で発現し、オリゴデンドロサイトの分化を促進するとともに、[[ミエリン塩基性タンパク質]]などの遺伝子の転写を活性化する<ref name=ref15 />。
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===高次機能===
===高次機能===
 CREBは、神経活動で活性化されシナプスの構造を制御する遺伝子の転写を調節し、[[長期記憶]]の形成に関与する<ref name=ref18 /><ref name=ref12 />。
 CREBは、神経活動で活性化され[[シナプス]]の構造を制御する遺伝子の転写を調節し、[[長期記憶]]の形成に関与する<ref name=ref18 /><ref name=ref12 />。


 Rel homology型因子のNF-&kappa;B (nuclear factor-&kappa;B) は、発生過程において神経軸索の伸長や[[樹状突起]]の枝分かれなど神経突起の発達に重要な役割を果たす一方、成体では[[樹状突起]]の[[スパイン]]数や[[シナプス形成]]などを介して[[学習]]や[[記憶]]に関わることが示唆されている<ref name= ref12 /><ref><pubmed>21459462</pubmed></ref>。
 Rel homology型因子のNF-&kappa;B (nuclear factor-&kappa;B) は、発生過程において神経軸索の伸長や[[樹状突起]]の枝分かれなど神経突起の発達に重要な役割を果たす一方、成体では[[樹状突起]]の[[スパイン]]数や[[シナプス形成]]などを介して[[学習]]や[[記憶]]に関わることが示唆されている<ref name= ref12 /><ref><pubmed>21459462</pubmed></ref>。

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