「カルモジュリン」の版間の差分

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==発見==
==発見==
1970年、Kakiuchiらは、ラット脳抽出物中の環状ヌクレオチドフォスフォジエステラーゼ活性がCa2+により制御されることを報告し<ref>'''S Kakiuchi, R Yamazaki'''<br>Stimulation of the activity of cyclic 3',5'-nucleotide phosphodiesterase by [[calcium]] ion.<br>''Proc. Japan Acad. 46, 387-392'':1970</ref>、このCa2+依存性を担う活性化因子を見出した<ref>'''S Kakiuchi, R Yamazaki, H Nakajima'''<br>Properties of a heat-stable phosphodiesterase activating factor isolated from brain extract<br>''Proc. Japan Acad. 46, 587-592'':1970</ref><ref><pubmed> 4320714 </pubmed></ref>。また、同じ1970年に独立してCheungは環状ヌクレオチドフォスフォジエステラーゼの活性が精製の過程で減弱することから、精製の過程で環状ヌクレオチドフォスフォジエステラーゼと分離される分画より活性化因子を報告した<ref><pubmed> 4315350</pubmed></ref>。1973年にTeoとWangらはウシの心臓からこの活性化因子を精製し<ref><pubmed>4346337</pubmed></ref>、45Caとゲル濾過の手法を用いてその正体がCa2+結合タンパク質であることを示した<ref><pubmed> 4353626 </pubmed></ref>。その後、トロポニンCに特性が類似したタンパク質であることが示され<ref><pubmed> 181374 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 181375 </pubmed></ref>、アミノ酸配列が決定され<ref><pubmed> 7356670 </pubmed></ref>、分光学的解析によってCa2+結合に伴って構造が変化することが示された<ref><pubmed> 14663 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 193856 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 200611 </pubmed></ref>。その呼び名は研究グループによって、activator protein, modulator protein, Ca2+dependent regulator protein (CDR), Phosphodiesterase Activating Factor (PAF)などさまざまに呼ばれたが、1970年代末にCalmodulinという名称が付けられた<ref>"WY Cheung, Calcium and Cell Function: Volume 1"</ref><ref><pubmed> 208377 </pubmed></ref>。
1970年、Kakiuchiらは、ラット脳抽出物中の環状ヌクレオチドフォスフォジエステラーゼ活性がCa2+により制御されることを報告し<ref>'''S Kakiuchi, R Yamazaki'''<br>Stimulation of the activity of cyclic 3',5'-nucleotide phosphodiesterase by [[calcium]] ion.<br>''Proc. Japan Acad. 46, 387-392'':1970</ref>、このCa2+依存性を担う活性化因子を見出した<ref>'''S Kakiuchi, R Yamazaki, H Nakajima'''<br>Properties of a heat-stable phosphodiesterase activating factor isolated from brain extract<br>''Proc. Japan Acad. 46, 587-592'':1970</ref><ref><pubmed> 4320714 </pubmed></ref>。また、同じ1970年に独立してCheungは環状ヌクレオチドフォスフォジエステラーゼの活性が精製の過程で減弱することから、精製の過程で環状ヌクレオチドフォスフォジエステラーゼと分離される分画より活性化因子を報告した<ref><pubmed> 4315350</pubmed></ref>。1973年にTeoとWangらはウシの心臓からこの活性化因子を精製し<ref><pubmed>4346337</pubmed></ref>、45Caとゲル濾過の手法を用いてこの2つの因子の正体がCa2+結合タンパク質であることを示した<ref><pubmed> 4353626 </pubmed></ref><ref>'''S Kakiuchi, R Yamazaki'''<br>カルモデュリン―Ca2+受容蛋白質<br>':1981</ref>。その後、トロポニンCに特性が類似したタンパク質であることが示され<ref><pubmed> 181374 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 181375 </pubmed></ref>、アミノ酸配列が決定され<ref><pubmed> 7356670 </pubmed></ref>、分光学的解析によってCa2+結合に伴って構造が変化することが示された<ref><pubmed> 14663 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 193856 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 200611 </pubmed></ref>。その呼び名は研究グループによって、activator protein, modulator protein, Ca2+dependent regulator protein (CDR), Phosphodiesterase Activating Factor (PAF)などさまざまに呼ばれたが、1970年代末にCalmodulinという名称が付けられた<ref>"WY Cheung, Calcium and Cell Function: Volume 1"</ref><ref><pubmed> 208377 </pubmed></ref>。


==構造==
==構造==
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==機能==
==機能==
カルモジュリンは脳内で10~100マイクロモル/リットルの濃度で発現しており、細胞内で上昇したCa2+と結合し、様々なカルモジュリン結合タンパク質と結合して生理機能を発揮する。カルモジュリン結合タンパク質の多くはCa2+依存的であり、Ca2+/カルモジュリンと結合するが、Ca2+と結合していないカルモジュリンと結合するタンパク質や、Ca2+非依存的に結合するタンパク質も存在する。カルモジュリンの主要な機能は、細胞内のCa2+濃度の変化を感知し、カルモジュリン結合タンパクの機能制御を通じて、細胞機能を制御することである。
カルモジュリンは脳内で10~100マイクロモル/リットルの濃度で発現しており<ref><pubmed> 15803158 </pubmed></ref>、細胞内で上昇したCa2+と結合し、様々なカルモジュリン結合タンパク質と結合して生理機能を発揮する。カルモジュリン結合タンパク質の多くはCa2+依存的であり、Ca2+/カルモジュリンと結合するが、Ca2+と結合していないカルモジュリンと結合するタンパク質や、Ca2+非依存的に結合するタンパク質も存在する。カルモジュリンの主要な機能は、細胞内のCa2+濃度の変化を感知し、カルモジュリン結合タンパクの機能制御を通じて、細胞機能を制御することである。


カルモジュリン結合タンパク質としては、環状ヌクレオチド代謝酵素(フォスフォジエステラーゼ、アデニル酸シクラーゼ)、膜タンパク質([[ATP]]依存的Ca2+ポンプ、代謝型[[グルタミン酸]]受容体、[[L型カルシウムチャネル]]、IP3 受容体)、リン酸化酵素(MLCK、Ca2+/CaM依存的キナーゼI/II/IV、ホスホリラーゼキナーゼ)、 脱リン酸化酵素([[カルシニューリン]])、 [[細胞骨格]]系タンパク質(カルデスモン、MAP2、アデューシン、カルスペクトリン、ミオシン)、シグナル伝達タンパク質(RasGRF1、[[一酸化窒素]]合成酵素)などが知られている。こうした様々なタンパク質と結合し、その活性や機能を制御することがカルモジュリンの機能である。
カルモジュリン結合タンパク質としては、環状ヌクレオチド代謝酵素(フォスフォジエステラーゼ、アデニル酸シクラーゼ)、膜タンパク質([[ATP]]依存的Ca2+ポンプ、代謝型[[グルタミン酸]]受容体、[[L型カルシウムチャネル]]、IP3 受容体)、リン酸化酵素(MLCK、Ca2+/CaM依存的キナーゼI/II/IV、ホスホリラーゼキナーゼ)、 脱リン酸化酵素([[カルシニューリン]])、 [[細胞骨格]]系タンパク質(カルデスモン、MAP2、アデューシン、カルスペクトリン、ミオシン)、シグナル伝達タンパク質(RasGRF1、[[一酸化窒素]]合成酵素)などが知られている。こうした様々なタンパク質と結合し、その活性や機能を制御することがカルモジュリンの機能である。
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