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細 (→回路再編の臨界期モデル) |
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どちらの眼からの入力を多く受けるか(眼優位性)は、臨界期の視覚経験に依存して可塑的に変化する<ref name=ref3 /><ref>'''NW DAW'''<br>Visual Development<br>''Plenum (New York)'':1995</ref> 。眼優位性可塑性は現在までに神経生理学、神経解剖学、分子生物学などの様々な見地から解析され、臨界期のメカニズムを探求する上で良いモデルとなっている。[[マウス]]からヒトまで、両目で見た情報は[[大脳皮質]]の[[第一次視覚野]]で初めて統合され、物の立体的特徴は正確に捉えられる。[[げっ歯類]]では、[[網膜]][[神経節細胞]]からの軸索の多くは反対側の視覚野に伸び、一部が同側の視覚野に投射して両眼視領域を形成する。[[ネコ]]やヒトでは、左右の網膜からの入力は両側の視覚野に投射し、第4層において互いに分離して縞模様を作り、第2/3層において初めて統合される。幼年期(ヒトでは9歳頃まで)に偏った視覚経験を受けると(例えば、片眼に長期間眼帯をすると)、閉じられた眼からの情報よりも開いた眼からの情報を多く受け取るように、神経回路が作り変えられる。その結果、閉じられた眼の入力を中継する[[外側膝状体]]細胞の軸索([[視床-皮質投射]])は、視覚野において著しく萎縮し、閉じられた眼の視力は弱くなる([[弱視]])。弱視は、就学前までの子どもの2~4%に見られる決して珍しくない疾患である。げっ歯類でも同様に、生後20 - 40日頃に眼優位性の臨界期があり、臨界期に閉じられた眼の視力は弱くなる。マウスからヒトまで、弱視を回復するためには可塑性が高い臨界期のうちに治療を施す必要があり、大人になってからの治療では回復が難しいことが知られている。治療は、良い方の眼にアイパッチを施し、さらに弱視の眼(多くは遠視である)を[[wikipedia:ja:眼鏡|眼鏡]]で矯正するという方法が一般的である。一方、子どもの精神的な負担を軽減するために、治療の時間を短くする研究も行われている。弱視の眼で見る機会を増やすよう工夫された[[wikipedia:ja:テトリス|テトリス]]ゲームを行うことで、両眼視のトレーニングを行い、効率的に治療する方法も開発され始めている。 | どちらの眼からの入力を多く受けるか(眼優位性)は、臨界期の視覚経験に依存して可塑的に変化する<ref name=ref3 /><ref>'''NW DAW'''<br>Visual Development<br>''Plenum (New York)'':1995</ref> 。眼優位性可塑性は現在までに神経生理学、神経解剖学、分子生物学などの様々な見地から解析され、臨界期のメカニズムを探求する上で良いモデルとなっている。[[マウス]]からヒトまで、両目で見た情報は[[大脳皮質]]の[[第一次視覚野]]で初めて統合され、物の立体的特徴は正確に捉えられる。[[げっ歯類]]では、[[網膜]][[神経節細胞]]からの軸索の多くは反対側の視覚野に伸び、一部が同側の視覚野に投射して両眼視領域を形成する。[[ネコ]]やヒトでは、左右の網膜からの入力は両側の視覚野に投射し、第4層において互いに分離して縞模様を作り、第2/3層において初めて統合される。幼年期(ヒトでは9歳頃まで)に偏った視覚経験を受けると(例えば、片眼に長期間眼帯をすると)、閉じられた眼からの情報よりも開いた眼からの情報を多く受け取るように、神経回路が作り変えられる。その結果、閉じられた眼の入力を中継する[[外側膝状体]]細胞の軸索([[視床-皮質投射]])は、視覚野において著しく萎縮し、閉じられた眼の視力は弱くなる([[弱視]])。弱視は、就学前までの子どもの2~4%に見られる決して珍しくない疾患である。げっ歯類でも同様に、生後20 - 40日頃に眼優位性の臨界期があり、臨界期に閉じられた眼の視力は弱くなる。マウスからヒトまで、弱視を回復するためには可塑性が高い臨界期のうちに治療を施す必要があり、大人になってからの治療では回復が難しいことが知られている。治療は、良い方の眼にアイパッチを施し、さらに弱視の眼(多くは遠視である)を[[wikipedia:ja:眼鏡|眼鏡]]で矯正するという方法が一般的である。一方、子どもの精神的な負担を軽減するために、治療の時間を短くする研究も行われている。弱視の眼で見る機会を増やすよう工夫された[[wikipedia:ja:テトリス|テトリス]]ゲームを行うことで、両眼視のトレーニングを行い、効率的に治療する方法も開発され始めている。 | ||
生後の大脳視覚野には、眼優位性だけでなく、[[方位選択性]](orientation/direction selectivity)の臨界期もある<ref name=ref4 /> | 生後の大脳視覚野には、眼優位性だけでなく、[[方位選択性]](orientation/direction selectivity)の臨界期もある<ref name=ref4 />。ネコの第一次視覚野においては、特定の方位の動きに強く反応する(特定の方位選択性を持つ)細胞が集まり、カラム構造を形成する。視覚野においてそれぞれのカラム構造は方位マップを形成しており、隣りあったカラムは似た方位選択性を見せる。げっ歯類では、方位選択性を持つ細胞がゴマ塩状に分布し(編集部コメント:salt-and-pepperの訳かと思いますが、判りにくいと思います)、カラム構造を形成することはない。 方位マップも観察されず、似た方位選択性を持つ細胞が視覚野に離れて存在する。方位選択性は経験に依存して形成され、その臨界期は、眼優位性より少し先行する。げっ歯類では、両眼視領域の細胞は両眼からの入力を同時に受けることが多い。そのため、両眼視領域の単一細胞の方位選択性は、臨界期の経験により両眼で統一されることが重要である。 | ||
==臨界期のメカニズム== | ==臨界期のメカニズム== |