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==コネクトームの利用== | ==コネクトームの利用== | ||
コネクトームのプロジェクトは、ヒトゲノムプロジェクトがそうであったように、多数の研究者や技術者の共同作業によって行なわれきており、米国のオバマ政権が提唱した脳科学研究プロジェクトであるBRAINイニシアティブによって積極的にサポートされてきた。このような電子顕微鏡やfMRIなどを用いて得られたデータは、神経科学の大規模なオープンデータとして、誰でもその生データが利用でき、個々の神経科学者による研究リソースとなる<ref><pubmed>24401992</pubmed></ref><ref><pubmed>25349916</pubmed></ref> | コネクトームのプロジェクトは、ヒトゲノムプロジェクトがそうであったように、多数の研究者や技術者の共同作業によって行なわれきており、米国のオバマ政権が提唱した脳科学研究プロジェクトであるBRAINイニシアティブによって積極的にサポートされてきた。このような電子顕微鏡やfMRIなどを用いて得られたデータは、神経科学の大規模なオープンデータとして、誰でもその生データが利用でき、個々の神経科学者による研究リソースとなる<ref><pubmed>24401992</pubmed></ref><ref><pubmed>25349916</pubmed></ref>。コネクトームのデータは生データとしてサーバーに保存されるが、コネクトームの簡便な表現法としては、図に示したような結合ダイアグラムを示す方法や結合マトリックスを用いた方法がしばしば用いられてきている。 | ||
[[ファイル:Connectome.jpg|サムネイル|右|コネクトームを簡便に表現するイメージ。A, aなどの各要素は、領域または神経細胞で、結合の強さの情報を含む。(左)結合ダイアグラム。(右)結合マトリックス。 ]] | [[ファイル:Connectome.jpg|サムネイル|右|コネクトームを簡便に表現するイメージ。A, aなどの各要素は、領域または神経細胞で、結合の強さの情報を含む。(左)結合ダイアグラム。(右)結合マトリックス。 ]] | ||
また、コネクトームに関係したプロジェクトは大きな研究費と多くの研究者の存在が必要となり、そのデータの取得と公開が神経科学者などのコミュニティに広く有用であるため、米国ではNational Brain Observatory(国立脳天文台)設立の提案がなされている<ref><pubmed>26481036</pubmed></ref>。Argonne National Laboratory(イリノイ州)、Marine Biological Laboratory in Woods Hole(マサチューセッツ州)などにそのような組織を作ることが計画され始めた<ref>http://www.sciencemag.org/news/2015/10/neuroscientist-team-calls-national-brain-observatory</ref>。 | |||
このようなコネクトームのデータは、神経科学全般の基礎研究情報として、脳の働き、神経回路の構造と機能の研究に広く利用されることになる<ref>'''Sebastian Seung''' Connectome: How the Brain's Wiring Makes Us Who We Are (2013, Mariner Books) [https://www.amazon.com/Connectome-How-Brains-Wiring-Makes/dp/0547678592 ISBN-10: 9780547678597] (邦訳「コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか」草思社 セバスチャン・スン (著), 青木 薫 (翻訳))</ref><ref>'''Olaf Sporns''': Discovering the Human Connectome (2012, MIT Press) [https://www.amazon.com/Discovering-Human-Connectome-MIT-Press/dp/0262017903/ ISBN-10: 0262017903]</ref><ref>'''Gary Marcus, Jeremy Freeman (Eds), May-Britt Moser, Edvard I. Moser (Contributors)''': The Future of the Brain: Essays by the World's Leading Neuroscientists (2014, Princeton University Press) [https://www.amazon.com/Future-Brain-Essays-Leading-Neuroscientists/dp/069116276X/ ISBN-10: 069116276X]</ref> | このようなコネクトームのデータは、神経科学全般の基礎研究情報として、脳の働き、神経回路の構造と機能の研究に広く利用されることになる<ref>'''Sebastian Seung''' Connectome: How the Brain's Wiring Makes Us Who We Are (2013, Mariner Books) [https://www.amazon.com/Connectome-How-Brains-Wiring-Makes/dp/0547678592 ISBN-10: 9780547678597] (邦訳「コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか」草思社 セバスチャン・スン (著), 青木 薫 (翻訳))</ref><ref>'''Olaf Sporns''': Discovering the Human Connectome (2012, MIT Press) [https://www.amazon.com/Discovering-Human-Connectome-MIT-Press/dp/0262017903/ ISBN-10: 0262017903]</ref><ref>'''Gary Marcus, Jeremy Freeman (Eds), May-Britt Moser, Edvard I. Moser (Contributors)''': The Future of the Brain: Essays by the World's Leading Neuroscientists (2014, Princeton University Press) [https://www.amazon.com/Future-Brain-Essays-Leading-Neuroscientists/dp/069116276X/ ISBN-10: 069116276X]</ref>。また、認知症、うつ病、統合失調症を含めた精神・神経疾患、自閉症などの発達障害、神経組織の損傷に伴う症状の理解の基礎データにもなる。将来はこれらの疾患の客観的な診断への活用が想定される。そして遺伝子情報を活用した[[精密医療]]とともに、有効な治療法の開発と適用にも貢献するであろう。更に、脳を神経回路を模倣した人工知能の開発のための基礎情報としても役立つと思われる。コネクトームの知見を活用することで、経済学、商業、犯罪、保険、教育、倫理学、言語学などのヒトの脳が関与した分野に、神経回路の観点から、これまでにない概念が提供されることが考えられ、その社会的な影響も大きいと考えられる。コネクトームの情報をどのように利用していくのか、社会の広い分野での議論の必要性が高まってきている。 | ||
==参考文献== | ==参考文献== | ||
<references/> | <references/> |