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KnierimとVan Essenは、注視課題を遂行している[[サル]]のV1野から単一ニューロン活動を記録し、古典的受容野内の刺激に対する応答が古典的受容野外の刺激よってどのような修飾効果を受けるかを調べた<ref name=ref11><pubmed>1588394</pubmed></ref>。実験では、単独の線分刺激が受容野内刺激として、その周囲をとりまくように多数の線分刺激が受容野外刺激として呈示された(図2)。多くのV1ニューロンでは受容野外刺激による修飾効果は[[抑制性]]に作用した(周辺抑制、surround suppression)、すなわち1つだけの刺激を受容野内にしたときに神経活動強度が最大となり(図2A)、周辺刺激を追加すると神経活動は減弱する(図2B, C)。さらに詳しく調べると、その抑制効果は受容野内刺激と受容野外刺激の方位(傾き)が同じであるときに最大(図2B)、直交するときに最小となる傾向を示した(図2C)。すなわち、受容野内刺激と受容野外刺激の方位コントラストが小さい(非ポップアウト)条件にくらべて、方位コントラストが大きい(ポップアウト)条件ではニューロン応答が相対的に強くなった。このような周辺抑制の効果はトップダウン型注意が起こり得ない麻酔下の[[動物]]においても観察されることから、ボトムアップ型注意を生じさせるための潜在的な神経基盤になっていると考えられている<ref name=ref18><pubmed>10022475</pubmed></ref>。受容野外刺激の特徴よってニューロン活動に対する影響が変わるため、このような修飾作用を文脈依存性(contextual modulation)と呼ぶこともある。 | KnierimとVan Essenは、注視課題を遂行している[[サル]]のV1野から単一ニューロン活動を記録し、古典的受容野内の刺激に対する応答が古典的受容野外の刺激よってどのような修飾効果を受けるかを調べた<ref name=ref11><pubmed>1588394</pubmed></ref>。実験では、単独の線分刺激が受容野内刺激として、その周囲をとりまくように多数の線分刺激が受容野外刺激として呈示された(図2)。多くのV1ニューロンでは受容野外刺激による修飾効果は[[抑制性]]に作用した(周辺抑制、surround suppression)、すなわち1つだけの刺激を受容野内にしたときに神経活動強度が最大となり(図2A)、周辺刺激を追加すると神経活動は減弱する(図2B, C)。さらに詳しく調べると、その抑制効果は受容野内刺激と受容野外刺激の方位(傾き)が同じであるときに最大(図2B)、直交するときに最小となる傾向を示した(図2C)。すなわち、受容野内刺激と受容野外刺激の方位コントラストが小さい(非ポップアウト)条件にくらべて、方位コントラストが大きい(ポップアウト)条件ではニューロン応答が相対的に強くなった。このような周辺抑制の効果はトップダウン型注意が起こり得ない麻酔下の[[動物]]においても観察されることから、ボトムアップ型注意を生じさせるための潜在的な神経基盤になっていると考えられている<ref name=ref18><pubmed>10022475</pubmed></ref>。受容野外刺激の特徴よってニューロン活動に対する影響が変わるため、このような修飾作用を文脈依存性(contextual modulation)と呼ぶこともある。 | ||
V1野以外の領野でも、色(V4野)や動き(MT野)の特徴次元で古典的受容野内外にコントラストがある場合、同様の周辺抑制効果が生じる<ref name=ref23><pubmed> 2213146 | V1野以外の領野でも、色(V4野)や動き(MT野)の特徴次元で古典的受容野内外にコントラストがある場合、同様の周辺抑制効果が生じる<ref name=ref23><pubmed> 2213146</pubmed></ref> <ref name=ref24><pubmed> 3944614</pubmed></ref>。また周辺抑制の効果は視覚野だけではなく、[[頭頂連合野]]にあるLIP野<ref name=ref9><pubmed> 20861383</pubmed></ref>や[[前頭連合野]]にあるFEF野<ref name=ref5><pubmed>22933810</pubmed></ref> <ref name=ref22><pubmed>14749315</pubmed></ref>にも存在し、ポップアウトする刺激に対してニューロン活動が強くなる。しかしながら、これらの領野では刺激特徴に対する選択性が乏しいため、ポップアウト刺激に対するニューロン活動の増大は視覚野からの入力を反映していると考えられる。むしろLIP野やFEF野における周辺抑制は、ポップアウト刺激への活動増強と非ポップアウト刺激への活動減衰による活動強度コントラストを生じさせるために重要な役割を果たしている<ref name=ref16><pubmed>24068752</pubmed></ref>。なおポップアウト刺激を無視するような課題訓練を行うと、ポップアウト刺激に対するLIPニューロンの活動増強が弱まることが報告されている<ref name=ref10><pubmed>16819520</pubmed></ref>。 | ||
==ニューロン活動に生じるトップダウン型注意の効果== | ==ニューロン活動に生じるトップダウン型注意の効果== |