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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子] | <font size="+1">[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]</font><br> | ||
''同志社大学 心理学部心理学科''<br> | ''同志社大学 心理学部心理学科''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2017年2月1日 原稿完成日:2017年XX月XX日<br> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2017年2月1日 原稿完成日:2017年XX月XX日<br> | ||
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== 分類 == | == 分類 == | ||
=== 空間作業記憶と空間参照記憶=== | === 空間作業記憶と空間参照記憶=== | ||
[[8方向放射状迷路]]<ref>'''Olton, D.S.,& Samuelson, R.J.'''<br>Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.<br>''Animal Behavior Processes.'':1976,2:97–116</ref>での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。 | [[8方向放射状迷路]]<ref>'''Olton, D.S.,& Samuelson, R.J.'''<br>Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.<br>''Animal Behavior Processes.'':1976,2:97–116</ref>での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。 | ||
例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。 | 例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。 | ||
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Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた<ref name=nakazawa />。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターンコンプリーション能力]]」に関与すると結論付けた。 | Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた<ref name=nakazawa />。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターンコンプリーション能力]]」に関与すると結論付けた。 | ||
[[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域(CA1,CA3,歯状回)の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった<ref><pubmed>19378463</pubmed></ref>。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。 | |||
== ヒトの空間記憶 == | == ヒトの空間記憶 == |