「記憶固定化」の版間の差分

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 近年、学習後の[[睡眠]]が記憶の固定化に重要な役割を担っていることが明らかになってきている。
 近年、学習後の[[睡眠]]が記憶の固定化に重要な役割を担っていることが明らかになってきている。


 直線走路を歩いている動物の海馬内では、複数の[[場所細胞]]がそれぞれ対応する場所で順番に活動する様子が観察される。この順序を持った場所細胞の活動パターンは、レム睡眠(Rapid eye movement sleep, REM sleep)中にもノンレム(Non-REM)睡眠中にも再現されている<ref><pubmed>12495631</pubmed></ref> 。この結果から、「覚醒時に経験した情報が睡眠中に再生されている」という休息時リプレイという概念が提唱されている。レム睡眠時には覚醒時と同様に、[[脳波]]は 4-8 Hz のシータ波が優先的に振動をしており、リプレイは覚醒時とほぼ同じタイムスケールを持って観察される<ref><pubmed>11182087</pubmed></ref> 。また、睡眠中のシータ波の発生を抑えると、睡眠前の学習で獲得した記憶が減弱する<ref><pubmed>27174984</pubmed></ref> 。
 直線走路を歩いている動物の海馬内では、複数の[[場所細胞]]がそれぞれ対応する場所で順番に活動する様子が観察される。この順序を持った場所細胞の活動パターンは、[[レム睡眠]](Rapid eye movement sleep, REM sleep)中にも[[ノンレム睡眠中|ノンレム(Non-REM)睡眠中]]にも再現されている<ref><pubmed>12495631</pubmed></ref> 。この結果から、「覚醒時に経験した情報が睡眠中に再生されている」という[[休息時リプレイ]]という概念が提唱されている。


 一方、ノンレム睡眠時には0-4 Hzのデルタ波が振動をしており、海馬においては鋭波と呼ばれる-100ミリ秒続く特徴的な波形に乗って100-200Hz程度のリップル波と呼ばれる振動が観察される。ノンレム睡眠時のリプレイは、リップル波に乗る形で実際のタイムスケールを数10分の1に圧縮した形で再現される<ref><pubmed>12495631</pubmed></ref> 。日々のトレーニングの後、海馬で発生するリップル波のパターンを乱すことによっても記憶の獲得レベルが低下する<ref><pubmed>19749750</pubmed></ref> 。
 レム睡眠時には覚醒時と同様に、[[脳波]]は 4-8 Hz の[[シータ波]]が優先的に振動をしており、リプレイは覚醒時とほぼ同じタイムスケールを持って観察される<ref><pubmed>11182087</pubmed></ref> 。また、睡眠中のシータ波の発生を抑えると、睡眠前の学習で獲得した記憶が減弱する<ref><pubmed>27174984</pubmed></ref> 。
 
 一方、ノンレム睡眠時には0-4 Hzの[[デルタ波]]が振動をしており、海馬においては鋭波と呼ばれる-100ミリ秒続く特徴的な波形に乗って100-200Hz程度の[[リップル波]]と呼ばれる振動が観察される。ノンレム睡眠時のリプレイは、リップル波に乗る形で実際のタイムスケールを数10分の1に圧縮した形で再現される<ref><pubmed>12495631</pubmed></ref> 。日々のトレーニングの後、海馬で発生するリップル波のパターンを乱すことによっても記憶の獲得レベルが低下する<ref><pubmed>19749750</pubmed></ref> 。


 このように、学習後の安定的な睡眠は、記憶の固定化に重要な過程であることから徹夜することはテスト勉強として効率が悪い可能性が示唆される。
 このように、学習後の安定的な睡眠は、記憶の固定化に重要な過程であることから徹夜することはテスト勉強として効率が悪い可能性が示唆される。

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