「小胞体ストレス」の版間の差分

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#折りたたみ不全タンパク質自体を分解する小胞体関連分解([[wikipedia:Endoplasmic-reticulum-associated protein degradation|ER-associated degradation]]; ERAD)を活性化する<ref><pubmed> 10893258 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10847680 </pubmed></ref>
#折りたたみ不全タンパク質自体を分解する小胞体関連分解([[wikipedia:Endoplasmic-reticulum-associated protein degradation|ER-associated degradation]]; ERAD)を活性化する<ref><pubmed> 10893258 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10847680 </pubmed></ref>


 哺乳細胞において、折りたたみ不全タンパク質の小胞体内への蓄積は主に3つの[[wikipedia:JA:小胞体ストレスセンサー|小胞体ストレスセンサー]](PERK<ref><pubmed> 9930704 </pubmed></ref>、IRE1<ref><pubmed> 10650002 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11069889 </pubmed></ref>、ATF6<ref><pubmed> 10866666 </pubmed></ref><ref><pubmed> 9837962 </pubmed></ref>)によって感知され、上述の応答が各ストレスセンサーから発信されるシグナルによって引き起こされる。以下に各ストレスセンサーの経路について述べる。  
 哺乳細胞において、折りたたみ不全タンパク質の小胞体内への蓄積は主に3つの小胞体ストレスセンサー([[wikipedia:EIF2AK3|PERK]]<ref><pubmed> 9930704 </pubmed></ref>、[[wikipedia:IRE1|IRE1]]<ref><pubmed> 10650002 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11069889 </pubmed></ref>、ATF6<ref><pubmed> 10866666 </pubmed></ref><ref><pubmed> 9837962 </pubmed></ref>)によって感知され、上述の応答が各ストレスセンサーから発信されるシグナルによって引き起こされる。以下に各ストレスセンサーの経路について述べる。  


[[Image:図1. 小胞体ストレス応答.jpg|thumb|right|250px|'''図1. 小胞体ストレス応答''']]
[[Image:図1. 小胞体ストレス応答.jpg|thumb|right|250px|'''図1. 小胞体ストレス応答''']]
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=== PERK(PKR-like endoplasmic reticulum kinase)経路 ===
=== PERK(PKR-like endoplasmic reticulum kinase)経路 ===


 小胞体膜貫通型キナーゼである[[wikipedia:EIF2AK3|PERK]]は、小胞体ストレスを感知するとオリゴマーを形成し、自己[[リン酸化]]によって活性化する。活性化したPERKは翻訳開始因子の一つである[[wikipedia:EIF2S1|eIF2α]](eukaryotic initiation factor 2α)をリン酸化する。このリン酸化によってeIF2αは翻訳開始複合体を形成することができず、結果として細胞内のmRNAの翻訳が抑制される<ref><pubmed> 9930704 </pubmed></ref>。全般的に翻訳が抑制される中で、転写因子[[wikipedia:ATF4|ATF4]]は翻訳量が増加する<ref><pubmed> 11106749 </pubmed></ref>。ATF4の標的遺伝子には抗酸化反応やアポトーシス、PERK経路の負の制御に関連した遺伝子が存在する。
 小胞体膜貫通型キナーゼであるPERKは、小胞体ストレスを感知するとオリゴマーを形成し、自己[[リン酸化]]によって活性化する。活性化したPERKは翻訳開始因子の一つである[[wikipedia:EIF2S1|eIF2α]](eukaryotic initiation factor 2α)をリン酸化する。このリン酸化によってeIF2αは翻訳開始複合体を形成することができず、結果として細胞内のmRNAの翻訳が抑制される<ref><pubmed> 9930704 </pubmed></ref>。全般的に翻訳が抑制される中で、転写因子[[wikipedia:ATF4|ATF4]]は翻訳量が増加する<ref><pubmed> 11106749 </pubmed></ref>。ATF4の標的遺伝子には抗酸化反応やアポトーシス、PERK経路の負の制御に関連した遺伝子が存在する。


=== IRE1 (Inositol requiring 1) 経路 ===  
=== IRE1 (Inositol requiring 1) 経路 ===  


 PERKと同じく小胞体膜貫通型キナーゼである[[wikipedia:JA:IRE1|IRE1]]は、小胞体ストレスを感知するとダイマーを形成し、自己リン酸化によって立体構造を変化させ活性化する。活性化したIRE1は細胞質側に存在する[[wikipedia:JA:RNase|RNase]]ドメインによって基質である転写因子[[wikipedia:JA:XBP1|XBP1]] (X-box binding protein 1) mRNA(unspliced XBP1 mRNA)のスプライシングを行う<ref><pubmed> 11779465 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11779464 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11780124 </pubmed></ref>。スプライシングされたXBP1 mRNA(spliced XBP1 mRNA)の翻訳産物は、転写因子としての活性を持ったものであり、ERAD関連遺伝子や、小胞体分子シャペロン、酸化還元酵素、小胞体膜合成関連遺伝子の転写を促進する<ref><pubmed> 14559994 </pubmed></ref><ref><pubmed> 19247368 </pubmed></ref><ref><pubmed> 15345222 </pubmed></ref>。  
 PERKと同じく小胞体膜貫通型キナーゼであるIRE1は、小胞体ストレスを感知するとダイマーを形成し、自己リン酸化によって立体構造を変化させ活性化する。活性化したIRE1は細胞質側に存在する[[wikipedia:JA:RNase|RNase]]ドメインによって基質である転写因子[[wikipedia:JA:XBP1|XBP1]] (X-box binding protein 1) mRNA (unspliced XBP1 mRNA)のスプライシングを行う<ref><pubmed> 11779465 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11779464 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11780124 </pubmed></ref>。スプライシングされたXBP1 mRNA(spliced XBP1 mRNA)の翻訳産物は、転写因子としての活性を持ったものであり、ERAD関連遺伝子や、小胞体分子シャペロン、酸化還元酵素、小胞体膜合成関連遺伝子の転写を促進する<ref><pubmed> 14559994 </pubmed></ref><ref><pubmed> 19247368 </pubmed></ref><ref><pubmed> 15345222 </pubmed></ref>。  


=== ATF6 (Activating transcription factor 6) 経路 ===
=== ATF6 (Activating transcription factor 6) 経路 ===
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 CREB / ATFファミリーに属する膜結合型転写因子である[[wikipedia:JA:ATF6|ATF6]]は、小胞体ストレスを感知すると[[wikipedia:JA:ゴルジ装置|ゴルジ装置]]へ輸送され<ref><pubmed> 9837962 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10564271 </pubmed></ref>、[[wikipedia:JA:プロテアーゼS1P|プロテアーゼS1P]](site-1 protease)と[[wikipedia:JA:S2P|S2P]]によって膜内切断を受ける<ref><pubmed> 11163209 </pubmed></ref>。その後、DNA結合能を有する[[wikipedia:JA:bZIPドメイン|bZIPドメイン]]を含んだ断片が核内へ移行し、転写因子として機能する。標的遺伝子には、小胞体分子シャペロン、ERAD関連遺伝子、そしてXBP1がある<ref><pubmed> 11779464 </pubmed></ref>。  
 CREB / ATFファミリーに属する膜結合型転写因子である[[wikipedia:JA:ATF6|ATF6]]は、小胞体ストレスを感知すると[[wikipedia:JA:ゴルジ装置|ゴルジ装置]]へ輸送され<ref><pubmed> 9837962 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10564271 </pubmed></ref>、[[wikipedia:JA:プロテアーゼS1P|プロテアーゼS1P]](site-1 protease)と[[wikipedia:JA:S2P|S2P]]によって膜内切断を受ける<ref><pubmed> 11163209 </pubmed></ref>。その後、DNA結合能を有する[[wikipedia:JA:bZIPドメイン|bZIPドメイン]]を含んだ断片が核内へ移行し、転写因子として機能する。標的遺伝子には、小胞体分子シャペロン、ERAD関連遺伝子、そしてXBP1がある<ref><pubmed> 11779464 </pubmed></ref>。  


 これらに加え、ATF6と構造的に類似する[[wikipedia:JA:OASISファミリー|OASISファミリー]](Luman/CREB3<ref><pubmed> 15845366 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16940180 </pubmed></ref>、OASIS/CREB3L1<ref><pubmed> 15665855 </pubmed></ref>、BBF2H7/CREB3L2<ref><pubmed> 17178827 </pubmed></ref>、CREBH/CREB3L3<ref><pubmed> 11353085 </pubmed></ref>、CREB4/AIbZIP/CREB3L4<ref><pubmed> 15938716 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16236796 </pubmed></ref>)が小胞体ストレスセンサーとして知られている。これら5つのストレスセンサーは3つの主要ストレスセンサー(PERK、IRE1、ATF6)がユビキタスに発現しているのに対し、それぞれが特徴的な組織分布を示す。また転写ターゲットも主要センサーとは異なる。  
 これらに加え、ATF6と構造的に類似する[[wikipedia:JA:OASISファミリー|OASISファミリー]](Luman/CREB3<ref><pubmed> 15845366 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16940180 </pubmed></ref>、OASIS/CREB3L1<ref><pubmed> 15665855 </pubmed></ref>、BBF2H7/CREB3L2<ref><pubmed> 17178827 </pubmed></ref>、CREBH/CREB3L3<ref><pubmed> 11353085 </pubmed></ref>、CREB4/AIbZIP/CREB3L4<ref><pubmed> 15938716 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16236796 </pubmed></ref>)が小胞体ストレスセンサーとして知られている。これら5つのストレスセンサーは3つの主要ストレスセンサー(PERK、IRE1、ATF6)がユビキタスに発現しているのに対し、それぞれが特徴的な組織分布を示す。また転写ターゲットも主要センサーとは異なる。
 


== 小胞体ストレスと疾患  ==
== 小胞体ストレスと疾患  ==

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