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前者は、defensive aggressionに、後者は捕食行動にオーバーラップする。 | 前者は、defensive aggressionに、後者は捕食行動にオーバーラップする。 | ||
この分類の利点はいくつかある。まず、両者では、見た目の行動や関与する[[自律神経系]]が異なる。反応的攻撃の場合には[[交感神経系]]が興奮し、心拍数上昇、立毛や発汗、発声などがみられる一方、道具的攻撃の場合は必ずしも交感神経系の興奮の特徴を伴わないとされる。[[ネコ]]同士の闘争では、ネコは毛を逆立て、背を丸め、身体の側面を相手に向けて自分をできるだけ大きく見せながら、威嚇の唸り声をあげるが、[[ネズミ]] | この分類の利点はいくつかある。まず、両者では、見た目の行動や関与する[[自律神経系]]が異なる。反応的攻撃の場合には[[交感神経系]]が興奮し、心拍数上昇、立毛や発汗、発声などがみられる一方、道具的攻撃の場合は必ずしも交感神経系の興奮の特徴を伴わないとされる。[[ネコ]]同士の闘争では、ネコは毛を逆立て、背を丸め、身体の側面を相手に向けて自分をできるだけ大きく見せながら、威嚇の唸り声をあげるが、[[ネズミ]]を捕える際にはそのようなことはせず、静かに伏せて獲物を狙い噛みついて攻撃する。それぞれの攻撃行動を関与する脳部位も異なる。 | ||
==== 手法 ==== | ==== 手法 ==== | ||
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=== 光遺伝学的実験 === | === 光遺伝学的実験 === | ||
アメリカのカリフォルニア工科大学のリン、[[w:David J. Anderson|アンダーソン]]らはマウスにおいて[[光遺伝学]] (optogenetics)の手法を用い、VMHの腹外側部(VMHvl)、とくに[[エストロゲン受容体α]](ERα)を発現するニューロン特異的な光遺伝学的刺激が、攻撃行動を起こすことを見出した<ref><pubmed> 24739975</pubmed></ref><ref><pubmed>21307935</pubmed></ref>。オスマウスVMHのERα発現細胞を光遺伝学により活性化すると、普段なら攻撃が起こらない状況においても、攻撃行動が誘発される。例えば膨らませた手袋や、性行動をしている相手のメスマウスに対しても、光を照射するとただちに攻撃行動が誘発される。ERαとほぼ局在が同じプロゲステロンレセプターPR陽性VMHvlニューロンのDREADD-Gqを用いた薬理遺伝学的活性化でも、居住オスは本来行わないメスや手袋、自分の鏡像に対する攻撃を行った<ref><pubmed>28757304</pubmed></ref>。オスを[[去勢]]したり、[[フェロモン受容体]]のノックアウトをしても、VMHvlを活性化すると攻撃は起こる。 | アメリカのカリフォルニア工科大学のリン、[[w:David J. Anderson|アンダーソン]]らはマウスにおいて[[光遺伝学]] (optogenetics)の手法を用い、VMHの腹外側部(VMHvl)、とくに[[エストロゲン受容体α]](ERα)を発現するニューロン特異的な光遺伝学的刺激が、攻撃行動を起こすことを見出した<ref><pubmed> 24739975</pubmed></ref><ref><pubmed>21307935</pubmed></ref>。オスマウスVMHのERα発現細胞を光遺伝学により活性化すると、普段なら攻撃が起こらない状況においても、攻撃行動が誘発される。例えば膨らませた手袋や、性行動をしている相手のメスマウスに対しても、光を照射するとただちに攻撃行動が誘発される。ERαとほぼ局在が同じプロゲステロンレセプターPR陽性VMHvlニューロンのDREADD-Gqを用いた薬理遺伝学的活性化でも、居住オスは本来行わないメスや手袋、自分の鏡像に対する攻撃を行った<ref><pubmed>28757304</pubmed></ref>。オスを[[去勢]]したり、[[フェロモン受容体]]のノックアウトをしても、VMHvlを活性化すると攻撃は起こる。 | ||
さらに、VMHvl ニューロンの光遺伝学的機能抑制によって攻撃行動が抑制され、また、ERα発現 “攻撃” ニューロンは侵入者オスに対する自発的な攻撃中に発火する。これらのことから、マウスVMHvlのERα発現ニューロンは、攻撃行動の発動に必要かつ十分であると考えられた。 | さらに、VMHvl ニューロンの光遺伝学的機能抑制によって攻撃行動が抑制され、また、ERα発現 “攻撃” ニューロンは侵入者オスに対する自発的な攻撃中に発火する。これらのことから、マウスVMHvlのERα発現ニューロンは、攻撃行動の発動に必要かつ十分であると考えられた。 | ||