16,039
回編集
Junko kurahashi (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
細編集の要約なし |
||
9行目: | 9行目: | ||
== 歴史 == | == 歴史 == | ||
[[大脳皮質]]の回路は様々なタイプの[[興奮性神経細胞]]と[[抑制性神経細胞]]から形成されている。古くから、少数の神経細胞が基本的な単位回路を形成し、これが多数繰り返されている可能性が提唱されていた<ref>'''Lorente de Nó R.'''<br>Architectonics and structure of the cerebral cortex.<br>''Physiology of the Nervous System. Oxford University Press, 291-327'':1938 [https://bsd.neuroinf.jp/wiki/ファイル:Lorente_De_No_1938.pdf PDF] </ref><ref><pubmed> 9153131 </pubmed></ref>。単位回路の候補としてさまざまな仮説が提案されたが、その構造や機能については議論が続いておりコンセンサスは確立していなかった<ref><pubmed>20640245</pubmed></ref><ref><pubmed>15365664 </pubmed></ref><ref name=Horton2005><pubmed> 15937015 </pubmed></ref><ref><pubmed>18715998 </pubmed></ref><ref><pubmed>25359953</pubmed></ref><ref><pubmed>29905901 </pubmed></ref> | [[大脳皮質]]の回路は様々なタイプの[[興奮性神経細胞]]と[[抑制性神経細胞]]から形成されている。古くから、少数の神経細胞が基本的な単位回路を形成し、これが多数繰り返されている可能性が提唱されていた<ref>'''Lorente de Nó R.'''<br>Architectonics and structure of the cerebral cortex.<br>''Physiology of the Nervous System. Oxford University Press, 291-327'':1938 [https://bsd.neuroinf.jp/wiki/ファイル:Lorente_De_No_1938.pdf PDF] </ref><ref><pubmed> 9153131 </pubmed></ref>。単位回路の候補としてさまざまな仮説が提案されたが、その構造や機能については議論が続いておりコンセンサスは確立していなかった<ref><pubmed>20640245</pubmed></ref><ref><pubmed>15365664 </pubmed></ref><ref name=Horton2005><pubmed> 15937015 </pubmed></ref><ref><pubmed>18715998 </pubmed></ref><ref><pubmed>25359953</pubmed></ref><ref><pubmed>29905901 </pubmed></ref>。ネコやサルの視覚野でみられる[[眼優位性カラム]]や[[方位選択性カラム]]などは特定の皮質領野のみに限られその回路・機能とも不明な点が多く、大脳皮質の普遍的な単位回路ではないと考えられている<ref name=Horton2005/>。 | ||
== 構造 == | == 構造 == | ||
16行目: | 16行目: | ||
大脳皮質第5層の二種類の主要な興奮性細胞のうちの一種は[[皮質下投射細胞]](subcortical projection neurons, SCPNs)と呼ばれ、[[脊髄]]、[[上丘]]、[[橋]]などへ長い[[軸索]]を伸ばし大脳皮質からの主要な出力経路を形成する<ref name=Greig2013><pubmed>24105342</pubmed></ref>。皮質下投射細胞は広範な皮質領野に存在しており、例えば[[運動野]]の皮質下投射細胞は[[上位運動ニューロン]]として[[皮質脊髄路]]を形成している。 | 大脳皮質第5層の二種類の主要な興奮性細胞のうちの一種は[[皮質下投射細胞]](subcortical projection neurons, SCPNs)と呼ばれ、[[脊髄]]、[[上丘]]、[[橋]]などへ長い[[軸索]]を伸ばし大脳皮質からの主要な出力経路を形成する<ref name=Greig2013><pubmed>24105342</pubmed></ref>。皮質下投射細胞は広範な皮質領野に存在しており、例えば[[運動野]]の皮質下投射細胞は[[上位運動ニューロン]]として[[皮質脊髄路]]を形成している。 | ||
皮質下投射細胞は幅1–2細胞、高さ数細胞程度の細長いクラスター(SCPNマイクロカラム)を形成する<ref name=Maruoka2011><pubmed>22171052 </pubmed></ref><ref name=Kwan2012><pubmed>22579290 </pubmed></ref><ref name=Maruoka2017><pubmed> 29097542 </pubmed></ref>('''図1''')。皮質に沿って多数の皮質下投射細胞マイクロカラムが周期的に配置し、ハニカム状の六方格子配列をとっている<ref name=Maruoka2017/>。このような皮質下投射細胞マイクロカラムはマウスの[[視覚野]]、[[体性感覚野]]、運動野<ref name=Maruoka2011/><ref name=Maruoka2017/>や[[wj:ヒト|ヒト]][[ | 皮質下投射細胞は幅1–2細胞、高さ数細胞程度の細長いクラスター(SCPNマイクロカラム)を形成する<ref name=Maruoka2011><pubmed>22171052 </pubmed></ref><ref name=Kwan2012><pubmed>22579290 </pubmed></ref><ref name=Maruoka2017><pubmed> 29097542 </pubmed></ref>('''図1''')。皮質に沿って多数の皮質下投射細胞マイクロカラムが周期的に配置し、ハニカム状の六方格子配列をとっている<ref name=Maruoka2017/>。このような皮質下投射細胞マイクロカラムはマウスの[[視覚野]]、[[体性感覚野]]、運動野<ref name=Maruoka2011/><ref name=Maruoka2017/>や[[wj:ヒト|ヒト]][[運動性言語野]]<ref name=Kwan2012/>で共通にみられ、いずれもよく似た構造を持つ。 | ||
第5層のもう一種の興奮性細胞である皮質投射細胞(cortical projection neuron, CPNs)は、同側や対側の大脳皮質に軸索を投射し中継経路を形成している<ref name=Greig2013/>。これらの皮質投射細胞もマイクロカラム(CPNマイクロカラム)を形成し、SCPNマイクロカラムと互い違いに並んでいる('''図1''')<ref name=Maruoka2017/>。 | 第5層のもう一種の興奮性細胞である皮質投射細胞(cortical projection neuron, CPNs)は、同側や対側の大脳皮質に軸索を投射し中継経路を形成している<ref name=Greig2013/>。これらの皮質投射細胞もマイクロカラム(CPNマイクロカラム)を形成し、SCPNマイクロカラムと互い違いに並んでいる('''図1''')<ref name=Maruoka2017/>。 | ||
46行目: | 46行目: | ||
マイクロカラムは発生上近縁でない細胞から形成されている<ref name=Maruoka2011/>。一方、発生上近縁な興奮性細胞は、マイクロカラムでギャップ結合が見られる時期より早い時期に一過的にギャップ結合を持つことが知られている<ref name=Yu2012><pubmed>22678291 </pubmed></ref>。発生上近縁な興奮性細胞は後に相互にシナプス結合し類似した視覚応答特性を示す<ref name=Yu2012/><ref><pubmed>22794261 </pubmed></ref><ref><pubmed>22678292</pubmed></ref>。従って、発生上近縁でない細胞からなるマイクロカラムと、発生上近縁な細胞からなる回路の両方が存在し異なる機能を担っている可能性がある。 | マイクロカラムは発生上近縁でない細胞から形成されている<ref name=Maruoka2011/>。一方、発生上近縁な興奮性細胞は、マイクロカラムでギャップ結合が見られる時期より早い時期に一過的にギャップ結合を持つことが知られている<ref name=Yu2012><pubmed>22678291 </pubmed></ref>。発生上近縁な興奮性細胞は後に相互にシナプス結合し類似した視覚応答特性を示す<ref name=Yu2012/><ref><pubmed>22794261 </pubmed></ref><ref><pubmed>22678292</pubmed></ref>。従って、発生上近縁でない細胞からなるマイクロカラムと、発生上近縁な細胞からなる回路の両方が存在し異なる機能を担っている可能性がある。 | ||
[[ネコ]]や[[サル]] | [[ネコ]]や[[サル]]の視覚野には眼優位性あるいは方位選択性の類似した細胞からなるカラム状のクラスターが存在し、それぞれ眼優位性カラムおよび方位選択性カラムと呼ばれている。眼優位性カラムの幅は細胞数十個分ほどでありマイクロカラムよりはるかに大きい。また、隣り合った方位選択性カラムが応答する刺激方位は似ているが、隣り合ったマイクロカラムが応答する刺激方位は似ていない。この違いは、ネコやサルでは方位選択性や眼優位性の似たマイクロカラムが近傍に並ぶことによって眼優位性カラムや方位選択性カラムが形成されていれば説明できる。実際、方位選択性カラムが六方格子状の周期構造を持つことが示唆されている<ref><pubmed>21623365 </pubmed></ref>。 | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
<references/> | <references/> |