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=== 静磁場中の原子核スピンの振る舞い === | === 静磁場中の原子核スピンの振る舞い === | ||
この超電導磁石により形成される静磁場(外部磁場またはB0とも呼ばれる)中に置かれた原子核(典型的には生体内の水素原子核)は、固有の周波数(ラーモア周波数ω)で静磁場の方向を回転軸とする歳差運動を行う。ラーモア周波数は静磁場の強さに比例する(<math>\omega=\gamma B_0</math>、<math>B_0</math>は静磁場の強さ、<math>\gamma</math>は磁気回転比と呼ばれる定数)。強い静磁場内では、静磁場の向きと一致(+)した方向と逆(-)方向を向いて歳差運動を行う原子核の個数はわずかに異なることが知られている(ゼーマン分裂)。生体内の水素原子核の数が非常に多いため、強い静磁場内に置かれた生体内には+方向を向いた巨視的磁化が形成される。 | この超電導磁石により形成される静磁場(外部磁場またはB0とも呼ばれる)中に置かれた原子核(典型的には生体内の水素原子核)は、固有の周波数(ラーモア周波数ω)で静磁場の方向を回転軸とする歳差運動を行う。ラーモア周波数は静磁場の強さに比例する(<math>\omega=\gamma B_0</math>、<math>B_0</math>は静磁場の強さ、<math>\gamma</math>は磁気回転比と呼ばれる定数)。強い静磁場内では、静磁場の向きと一致(+)した方向と逆(-)方向を向いて歳差運動を行う原子核の個数はわずかに異なることが知られている(ゼーマン分裂)。生体内の水素原子核の数が非常に多いため、強い静磁場内に置かれた生体内には+方向を向いた巨視的磁化が形成される。 | ||
[[File:Hanakawa Fig 2. | [[File:Hanakawa Fig 2.gif|thumb|right|300px|'''図2. RFパルスによる励起、および<math>T_1</math>、<math>T_2</math>緩和>定常状態(緩和しきった状態)のスピン集団に対して、共鳴周波数でRFパルスを照射した後のスピンの緩和過程'''<br>共鳴周波数と同じ速度で回転する座標系から眺めているため、スピン集団は静止してみえる。上段の3つの図はスピン集団を各々上(xy平面)、横(xz平面およびyz平面)から眺めた図。下段左は斜め上方から眺めた図。下段右の上段には縦磁化の時間変化を、下段右の下段には横磁化の時間変化を示す。RFパルスを照射されたスピンはまず、xy平面上に倒れる(=横磁化の出現)。xy平面上で円弧を描くように広がる(<math>T_2^*</math>緩和)その後、z軸の(+)方向にむかって、z軸方向の磁化(=縦磁化)が回復して(定常状態に戻って)ゆく。]] | ||
=== 外部からの電磁波による「核磁気共鳴現象または励起現象」 === | === 外部からの電磁波による「核磁気共鳴現象または励起現象」 === | ||
例えば3T MRI装置における水素原子核のラーモア周波数は128MHzである。この周波数はFMラジオが使用する周波数帯(radio frequency,RF)である。送信コイルを用いてラーモア周波数の回転磁場(RFパルスまたは<math>B_1</math>とも呼ばれる)を照射すると(通常は数ミリ秒程度のごく短時間)、水素原子核がエネルギーを吸収し、低いエネルギー準位から高いエネルギー準位に遷移する(核磁気共鳴)。この際、外部から観測される磁化(巨視的磁化)は、回転座標系において('''図2''')回転磁場および静磁場の双方に直交する方向を軸として回転する。この巨視的磁化は、静止座標系においては、静磁場と直交する平面上で、共鳴周波数で回転する磁化(横磁化)の出現および静磁場と平行な成分(縦磁化)の減少として観測される(励起)。 | 例えば3T MRI装置における水素原子核のラーモア周波数は128MHzである。この周波数はFMラジオが使用する周波数帯(radio frequency,RF)である。送信コイルを用いてラーモア周波数の回転磁場(RFパルスまたは<math>B_1</math>とも呼ばれる)を照射すると(通常は数ミリ秒程度のごく短時間)、水素原子核がエネルギーを吸収し、低いエネルギー準位から高いエネルギー準位に遷移する(核磁気共鳴)。この際、外部から観測される磁化(巨視的磁化)は、回転座標系において('''図2''')回転磁場および静磁場の双方に直交する方向を軸として回転する。この巨視的磁化は、静止座標系においては、静磁場と直交する平面上で、共鳴周波数で回転する磁化(横磁化)の出現および静磁場と平行な成分(縦磁化)の減少として観測される(励起)。 | ||
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例えばu=1,v=0とした場合、 | 例えばu=1,v=0とした場合、 | ||
:::<math>F(1, | :::<math>F(1,0)=\sum_{x=0}^{M-1}\sum_{y=0}^{M-1}f(x,y)e^{-\iota 2\pi(\frac {1}{M}x)}</math> | ||
となるが、これはMRIでは撮像領域(FOV)の右端から左端にかけて複素数の重み係数 | となるが、これはMRIでは撮像領域(FOV)の右端から左端にかけて複素数の重み係数 | ||
117行目: | 117行目: | ||
Echo planar imaging, EPI | Echo planar imaging, EPI | ||
一度のRFパルスの後、グラジエントエコー法あるいはスピンエコー法の信号収集時間を極端に延長し、読み出し傾斜磁場を急速に変動させることで連続的なグラジエントエコーを発生させ、画像化に必要なデータを全て収集してしまう方法。<math>T_2^*</math>緩和の影響が強く、かつ原理的にもっとも高速な撮像法の一つである。fMRIで利用されるBOLDコントラスト(後述)は<math>T_2^*</math>緩和に依存し、かつ高い時間分解能が必要とされるため、本手法が用いられる。 | |||
== 主なMRIコントラスト == | == 主なMRIコントラスト == | ||
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励起から収集までの時間(TE)を長くとれば、各組織における横磁化の減衰速度の違いを強調した画像が得られる。画像収集にスピンエコー法を用いた場合、得られる画像は時定数T2を強調した画像となる。 | 励起から収集までの時間(TE)を長くとれば、各組織における横磁化の減衰速度の違いを強調した画像が得られる。画像収集にスピンエコー法を用いた場合、得られる画像は時定数T2を強調した画像となる。 | ||
=== T2*強調像 === | === T2<sup>*</sup>強調像 === | ||
T2-star-weighted image, T2*WI | T2-star-weighted image, T2<sup>*</sup>WI | ||
TEを長くとり、画像収集にグラジエントエコー法を用いた場合、得られる画像はT2*強調像となる。得られた画像に特殊な画像処理を施すことで、磁化率強調像(susceptibility-weighted image, SWI)<ref name=Haacke2004><pubmed>15334582</pubmed></ref> や定量的磁化率マップ(quantitative susceptibility map, QSM)<ref name=Li2011><pubmed>21224002</pubmed></ref> といった画像が得られる。 | TEを長くとり、画像収集にグラジエントエコー法を用いた場合、得られる画像はT2<sup>*</sup>強調像となる。得られた画像に特殊な画像処理を施すことで、磁化率強調像(susceptibility-weighted image, SWI)<ref name=Haacke2004><pubmed>15334582</pubmed></ref> や定量的磁化率マップ(quantitative susceptibility map, QSM)<ref name=Li2011><pubmed>21224002</pubmed></ref> といった画像が得られる。 | ||
=== 拡散強調像 === | === 拡散強調像 === |