「コーディン」の版間の差分

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==作用機構==
==作用機構==
[[ファイル:Sasai Chordin Fig2.png|サムネイル|'''図2. コーディン/BMPによる表皮・神経の遺伝子の誘導'''<br><ref name=Holley1995><pubmed>7617035</pubmed></ref><ref name=Nakayama2004><pubmed>14660436</pubmed></ref><ref name=Larrain2000><pubmed>10648240</pubmed></ref>をもとに作成。]]
 コーディンはTGF&beta;スーパーファミリーの1つであるBMP4と拮抗することで機能する <ref name=Sasai1995><pubmed>7630399</pubmed></ref> 。生化学的には、コーディンとBMP4は1:2のモル比で直接結合し <ref name=Larrain2000><pubmed>10648240</pubmed></ref> 、BMP4がBMP受容体に結合するのを阻害する。コーディンとBMP4の解離定数は0.3 nmol程度と、強固な結合である <ref name=Piccolo1996><pubmed>8752213</pubmed></ref> 。なお、コーディンに直接結合する細胞膜受容体は報告されていない。
 コーディンはTGF&beta;スーパーファミリーの1つであるBMP4と拮抗することで機能する <ref name=Sasai1995><pubmed>7630399</pubmed></ref> 。生化学的には、コーディンとBMP4は1:2のモル比で直接結合し <ref name=Larrain2000><pubmed>10648240</pubmed></ref> 、BMP4がBMP受容体に結合するのを阻害する。コーディンとBMP4の解離定数は0.3 nmol程度と、強固な結合である <ref name=Piccolo1996><pubmed>8752213</pubmed></ref> 。なお、コーディンに直接結合する細胞膜受容体は報告されていない。


 BMPシグナルはSmadシグナルを活性化して表皮のマーカーであるFoxi1 <ref name=Matsuo-Takasaki2005><pubmed>16079156</pubmed></ref> 、Grainyhead-like-1(Grhl1) <ref name=Tao2005><pubmed>15705857</pubmed></ref> などの転写因子を誘導し、細胞を表皮化する。一方、BMPシグナルが遮断されるとZic1, Sox2 <ref name=Mizuseki1998><pubmed>9435279</pubmed></ref> やXlPOU2 <ref name=Matsuo-Takasaki1999><pubmed>10559482</pubmed></ref> などの、神経系特異的な転写因子の発現が誘導され、細胞が神経化し、背側外胚葉領域に神経板が形成される。「BMPシグナルを遮断する」ことがどのように神経化の遺伝子発現を誘導するのかは明らかではないが、おそらくBMPシグナルによって発現誘導される表皮化遺伝子が神経化遺伝子の発現を抑制しており、コーディンによってBMPシグナルがブロックされ、ZicやXlPOU2の遺伝子が発現するのだろうと考えられている <ref name=Lee2014><pubmed>25234468</pubmed></ref>('''図2''') 。
 BMPシグナルはSmadシグナルを活性化して表皮のマーカーであるFoxi1 <ref name=Matsuo-Takasaki2005><pubmed>16079156</pubmed></ref> 、Grainyhead-like-1(Grhl1) <ref name=Tao2005><pubmed>15705857</pubmed></ref> などの転写因子を誘導し、細胞を表皮化する。一方、BMPシグナルが遮断されるとZic1, Sox2 <ref name=Mizuseki1998><pubmed>9435279</pubmed></ref> やXlPOU2 <ref name=Matsuo-Takasaki1999><pubmed>10559482</pubmed></ref> などの、神経系特異的な転写因子の発現が誘導され、細胞が神経化し、背側外胚葉領域に神経板が形成される。「BMPシグナルを遮断する」ことがどのように神経化の遺伝子発現を誘導するのかは明らかではないが、おそらくBMPシグナルによって発現誘導される表皮化遺伝子が神経化遺伝子の発現を抑制しており、コーディンによってBMPシグナルがブロックされ、ZicやXlPOU2の遺伝子が発現するのだろうと考えられている <ref name=Lee2014><pubmed>25234468</pubmed></ref>('''図2''') 。


(独自の受容体は?)
[[ファイル:Sasai Chordin Fig3.png|サムネイル|'''図3. コーディンに結合する、またはコーディンによって転写制御をうける因子群'''<br>'''A.'''背側中胚葉(多くは原口背唇部)と腹側中胚葉に発現する遺伝子群。<br>'''B.'''それらの間に存在する制御関係。黒色の矢印はタンパク質間の相互作用を、灰色の矢印は転写制御を示す。<ref name=DeRobertis2004><pubmed>15473842</pubmed></ref><ref name=Ambrosio2008><pubmed>18694564</pubmed></ref><ref name=Plouhinec2009><pubmed>20066084</pubmed></ref> をもとに作成。]]
[[ファイル:Sasai Chordin Fig3.png|サムネイル|'''図3. コーディンに結合する、またはコーディンによって転写制御をうける因子群'''<br>'''A'''背側中胚葉(多くは原口背唇部)と腹側中胚葉に発現する遺伝子群。<br>'''B'''それらの間に存在する制御関係。黒色の矢印はタンパク質間の相互作用を、灰色の矢印は転写制御を示す。<ref name=DeRobertis2004><pubmed>15473842</pubmed></ref><ref name=Ambrosio2008><pubmed>18694564</pubmed></ref><ref name=Plouhinec2009><pubmed>20066084</pubmed></ref> をもとに作成。]]
 
==活性調節==
==活性調節==
 コーディンを発現するオーガナイザー(背側中胚葉)の大きさ、またオーガナイザーによって誘導される神経板は、体全体と比較して特定の大きさでなければならないため、コーディン遺伝子やそのタンパク質の発現量や活性は厳密に制御される。この制御を行うための因子(コーディンタンパク質を分解するものや修飾するもの)の存在が知られている。現在までに入られている制御因子の一部を'''(図3)'''に示した。
 コーディンを発現するオーガナイザー(背側中胚葉)の大きさ、またオーガナイザーによって誘導される神経板は、体全体と比較して特定の大きさでなければならないため、コーディン遺伝子やそのタンパク質の発現量や活性は厳密に制御される。この制御を行うための因子(コーディンタンパク質を分解するものや修飾するもの)の存在が知られている。現在までに入られている制御因子の一部を'''(図3)'''に示した。

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