「ケタミン」の版間の差分

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 1997年に健常者を対象としたケタミン異性体の報告がスイスから発表された。この論文では、(S)-ケタミンは健常者において精神病惹起作用や解離症状を引き起こすが、同じ投与量の(R)-ケタミンはこのような症状を引き起こさず、逆にリラックスな症状をもたらしたことを報告した<ref name=Vollenweider1997><pubmed>9088882</pubmed></ref>(32)。このようにケタミンの副作用は、主に(S)-ケタミンが寄与しており、(R)-ケタミンの寄与は低いと報告されている<ref name=Zanos2018><pubmed>29945898</pubmed></ref> 。
 1997年に健常者を対象としたケタミン異性体の報告がスイスから発表された。この論文では、(S)-ケタミンは健常者において精神病惹起作用や解離症状を引き起こすが、同じ投与量の(R)-ケタミンはこのような症状を引き起こさず、逆にリラックスな症状をもたらしたことを報告した<ref name=Vollenweider1997><pubmed>9088882</pubmed></ref>(32)。このようにケタミンの副作用は、主に(S)-ケタミンが寄与しており、(R)-ケタミンの寄与は低いと報告されている<ref name=Zanos2018><pubmed>29945898</pubmed></ref> 。
 以上の結果より、(R)-ケタミンは副作用の少ない即効性抗うつ薬になると期待されている<ref name=Hashimoto2016><pubmed>27283221</pubmed></ref><ref name=Hashimoto2019><pubmed>31215725</pubmed></ref><ref name=Hashimoto2020><pubmed>32224141</pubmed></ref><ref name=Yang2019><pubmed>31699965</pubmed></ref><ref name=橋本謙二2020d>'''橋本謙二 (2020)'''<br>即効性抗うつ薬(R)-ケタミン:千葉大学から世界へ<br>Medical Science Digest 46, 70-71.</ref> (14-16,34,35)。現在、米国Perception Neuroscience社が米国FDAの承認に向けた臨床治験を実施している<ref name=Hashimoto2019><pubmed>31215725</pubmed></ref>。
 以上の結果より、(R)-ケタミンは副作用の少ない即効性抗うつ薬になると期待されている<ref name=Hashimoto2016><pubmed>27283221</pubmed></ref><ref name=Hashimoto2019><pubmed>31215725</pubmed></ref><ref name=Hashimoto2020><pubmed>32224141</pubmed></ref><ref name=Yang2019><pubmed>31699965</pubmed></ref><ref name=橋本謙二2020d>'''橋本謙二 (2020)'''<br>即効性抗うつ薬(R)-ケタミン:千葉大学から世界へ<br>Medical Science Digest 46, 70-71.</ref> (14-16,34,35)。現在、米国Perception Neuroscience社が米国FDAの承認に向けた臨床治験を実施している<ref name=Hashimoto2019><pubmed>31215725</pubmed></ref>。
==副作用==
(副作用について一つにまとめて頂ければと思います。とりあえず2つに分けて書かれてあったのを一つにまとめました。)
 麻酔から覚醒する際に、幻覚、悪夢、浮遊感覚などの症状が観察される。ケタミンの麻酔・鎮痛作用および上記の副作用は、グルタミン酸受容体の一つであるNMDA受容体の拮抗作用によると考えられている(2)。
 ケタミンはうつ病患者において即効性抗うつ作用および希死念慮低下作用を示すが、ケタミンの副作用は臨床応用を考えた場合、解決すべき大きな課題である。精神病惹起作用の指標である運動量亢進作用、プレパルス抑制障害、場所嗜好性試験、前頭皮質におけるパルブアルブミン陽性細胞の低下は、(S)-ケタミンの単回投与および繰り返し投与で起きるが、(R)-ケタミンでは起きなかった(25,28,29)。 (S)-ケタミンや(R,S)-ケタミンの投与では、ラット脳梁膨大後部皮質における熱ストレス蛋白(神経障害マーカー)の誘導が起きるが、(R)-ケタミンの投与では起きなかった(30)。浜松ホトニクス社との無麻酔サルPETを用いた研究から、(R)-ケタミンの静脈投与は、ドパミンD2受容体に影響を与えないが、(S)-ケタミンの静脈投与はドパミンD2受容体を有意に低下することを報告した(31)。この結果は、(S)-ケタミン投与により、前シナプスからドパミン放出が起きていることを示しており、ヒトにおける(S)-ケタミン静脈投与後の精神病惹起作用および解離症状(19)と関連していると思われる。このように、ケタミンの副作用は、主にNMDA受容体が関与していることから、NMDA受容体への親和性が低い(R)-ケタミンは(R,S)-ケタミンや(S)-ケタミンより副作用の少ない安全な抗うつ薬として期待される(11,12)。


==研究利用==
==研究利用==

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