「TAR DNA-binding protein of 43 kDa」の版間の差分

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東京都医学総合研究所・認知症プロジェクト
<div align="right"> 
野中 隆
<font size="+1">[https://researchmap.jp/read0060974 野中 隆]</font><br>
''東京都医学総合研究所・認知症プロジェクト''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2020年11月27日 原稿完成日:2020年1X月X日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/kojiyamanaka 山中 宏二](名古屋大学 環境医学研究所 病態神経科学)
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{{box|text= TDP-43は核に局在するRNA結合タンパク質であり、様々な遺伝子の転写やスプライシングに関与している。2006年、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や一部の前頭側頭葉変性症(FTLD)の神経細胞やグリア細胞に認められるユビキチン陽性封入体の主要な構成タンパク質としてTDP-43が同定された。TDP-43の凝集体形成と神経細胞脱落との関連が示唆されているが、その詳細は不明である。最近では、TDP-43凝集体のプリオン様性質が注目されており、凝集体が細胞間を伝播し、伝播した先の細胞内で凝集のシードとして機能し、その結果異常病変が経時的に拡がるという新たな病態メカニズムが考えられている。}}
{{box|text= TDP-43は核に局在するRNA結合タンパク質であり、様々な遺伝子の転写やスプライシングに関与している。2006年、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や一部の前頭側頭葉変性症(FTLD)の神経細胞やグリア細胞に認められるユビキチン陽性封入体の主要な構成タンパク質としてTDP-43が同定された。TDP-43の凝集体形成と神経細胞脱落との関連が示唆されているが、その詳細は不明である。最近では、TDP-43凝集体のプリオン様性質が注目されており、凝集体が細胞間を伝播し、伝播した先の細胞内で凝集のシードとして機能し、その結果異常病変が経時的に拡がるという新たな病態メカニズムが考えられている。}}
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 2006年には、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)およびタウ陰性の前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration:FTLD) に出現するユビキチン陽性封入体の主要な構成タンパク質として同定され<ref name=Arai2006><pubmed>17084815</pubmed></ref><ref name=Neumann2006><pubmed>17023659</pubmed></ref> (4、 5)、その後、TDP-43遺伝子のミスセンス変異<ref name=Prasad2019><pubmed>30837838</pubmed></ref>(6)が家族性ALSやFTLDの原因となることが遺伝学的に示されたことから、TDP-43の異常がこれらの疾患の発症と関連することが判明した。
 2006年には、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)およびタウ陰性の前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration:FTLD) に出現するユビキチン陽性封入体の主要な構成タンパク質として同定され<ref name=Arai2006><pubmed>17084815</pubmed></ref><ref name=Neumann2006><pubmed>17023659</pubmed></ref> (4、 5)、その後、TDP-43遺伝子のミスセンス変異<ref name=Prasad2019><pubmed>30837838</pubmed></ref>(6)が家族性ALSやFTLDの原因となることが遺伝学的に示されたことから、TDP-43の異常がこれらの疾患の発症と関連することが判明した。
[[ファイル:Nonaka TDP-43 Fig1.png|サムネイル|'''図. TDP-43の一次構造'''<br>TDP-43は414アミノ酸からなるタンパク質である。分子内には、核移行シグナル(NLS)、2ヶ所のRNA認識配列(RRM)、Glyに富む領域(Gly-rich)、Gln/Asnに富む領域(Q/N-rich)が存在する。家族性ALSやFTLDなどの遺伝子解析より見いだされたミスセンス変異はC末端領域に集中しており、またこの領域はプリオンとの相同性が高い<ref name=Guo2011><pubmed>21666678</pubmed></ref>
[[ファイル:Nonaka TDP-43 Fig1.png|サムネイル|'''図. TDP-43の一次構造'''<br>TDP-43は414アミノ酸からなるタンパク質である。分子内には、核移行シグナル(NLS)、2ヶ所のRNA認識配列(RRM)、Glyに富む領域(Gly-rich)、Gln/Asnに富む領域(Q/N-rich)が存在する。家族性ALSやFTLDなどの遺伝子解析より見いだされたミスセンス変異はC末端領域に集中しており、またこの領域はプリオンとの相同性が高い<ref name=Guo2011><pubmed>21666678</pubmed></ref>。]]
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== 構造 ==
== 構造 ==
 TDP-43は414アミノ酸からなる一本鎖ポリペプチドであり、核に局在する核タンパク質である。N末端側には核移行シグナルを有し、2つのRNA認識配列(RRM1/2)およびグリシンに富む領域(Gly-rich)が存在する('''図''')。分子の中央付近には核外搬出シグナルも存在するが、核移行シグナルが優位に機能するため主に核に局在する。このタンパク質は、不均一核内リボ核酸タンパク質(heterogeneous nuclear ribonucleoprotein:hnRNP)の一種であり、Gly-richドメインを含むC末端領域を介してhnRNP A2/B1やhnRNP A1などの他のRNA結合タンパク質と結合し、タンパク質複合体を形成することが知られている。一方、N末端側の領域はTDP-43の多量化に関与することも報告されている。
 TDP-43は414アミノ酸からなる一本鎖ポリペプチドであり、核に局在する核タンパク質である。N末端側には核移行シグナルを有し、2つのRNA認識配列(RRM1/2)およびグリシンに富む領域(Gly-rich)が存在する('''図''')。分子の中央付近には核外搬出シグナルも存在するが、核移行シグナルが優位に機能するため主に核に局在する。このタンパク質は、不均一核内リボ核酸タンパク質(heterogeneous nuclear ribonucleoprotein:hnRNP)の一種であり、Gly-richドメインを含むC末端領域を介してhnRNP A2/B1やhnRNP A1などの他のRNA結合タンパク質と結合し、タンパク質複合体を形成することが知られている。一方、N末端側の領域はTDP-43の多量化に関与することも報告されている。

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