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'''図3. ユビキチン修飾系の多様性''']] | '''図3. ユビキチン修飾系の多様性''']] | ||
ユビキチンをはじめとする可逆的な翻訳後修飾系はタンパク質に翻訳後修飾因子を結合させる酵素群、修飾を読み解くデコーダー群、修飾を終焉させる切断酵素群から構成される<ref name=Oh2018><pubmed>30110556</pubmed></ref><ref name=Oikawa2020><pubmed>32403254</pubmed></ref> 。 | ユビキチンをはじめとする可逆的な翻訳後修飾系はタンパク質に翻訳後修飾因子を結合させる酵素群、修飾を読み解くデコーダー群、修飾を終焉させる切断酵素群から構成される<ref name=Oh2018><pubmed>30110556</pubmed></ref><ref name=Oikawa2020><pubmed>32403254</pubmed></ref> 。 | ||
=== 修飾酵素 === | === 修飾酵素 === | ||
ユビキチンは標的タンパク質のリジン残基に結合する<ref name=Hershko1998><pubmed>9759494</pubmed></ref><ref name=Kornitzer2000><pubmed>10567911</pubmed></ref><ref name=Komander2012><pubmed>22524316</pubmed></ref> | ユビキチンは標的タンパク質のリジン残基に結合する<ref name=Hershko1998><pubmed>9759494</pubmed></ref><ref name=Kornitzer2000><pubmed>10567911</pubmed></ref><ref name=Komander2012><pubmed>22524316</pubmed></ref> 。この時、標的タンパク質にユビキチンを結合させる酵素群としてユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、ユビキチンリガーゼ(E3)の3種類が連続的に機能する('''図1''')。ヒトにはE1が2種類、E2は30種類以上、E3は600種類以上存在すると考えられている。 | ||
ユビキチン活性化酵素(E1)はATPを用いてユビキチンのC末端グリシンをアデニル化し、E1上のシステインと高エネルギー準位であるチオエステル結合を形成することでユビキチンを活性化する。活性化されたユビキチンはユビキチン結合酵素(E2)のシステイン残基へ転移される。 | ユビキチン活性化酵素(E1)はATPを用いてユビキチンのC末端グリシンをアデニル化し、E1上のシステインと高エネルギー準位であるチオエステル結合を形成することでユビキチンを活性化する。活性化されたユビキチンはユビキチン結合酵素(E2)のシステイン残基へ転移される。 | ||
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ユビキチンリガーゼ(E3)は標的タンパク質を選択的に識別し、ユビキチンが結合したE2を呼び寄せ、標的タンパク質へユビキチンを転移させる。すなわち、状況に応じて特定のタンパク質にユビキチンを結合することができる。 | ユビキチンリガーゼ(E3)は標的タンパク質を選択的に識別し、ユビキチンが結合したE2を呼び寄せ、標的タンパク質へユビキチンを転移させる。すなわち、状況に応じて特定のタンパク質にユビキチンを結合することができる。 | ||
E3はHECT型、RING型、RING-IBR- | E3はHECT型、RING型、RING-IBR-RING型の3種類に大別される('''図2''')<ref name=Sasaki2015><pubmed>26085215</pubmed></ref> 。HECT型及びRING-IBR-RING型E3ではユビキチンが一旦E3 上に転移し、その後標的タンパク質へ転移する。一方RING型E3はE2に結合したユビキチンが直接標的タンパク質へ転移させる足場として働く<ref name=Sasaki2015><pubmed>26085215</pubmed></ref> 。 | ||
===ユビキチン修飾の種類=== | ===ユビキチン修飾の種類=== | ||
ユビキチン修飾には、タンパク質に1分子のユビキチンが結合するモノユビキチン化もあるが、多くはタンパク質に結合したユビキチンにユビキチンが次々に付加して生成されるユビキチンのポリマーであるユビキチン鎖として結合することでタンパク質の機能を制御する場合が多い。 | ユビキチン修飾には、タンパク質に1分子のユビキチンが結合するモノユビキチン化もあるが、多くはタンパク質に結合したユビキチンにユビキチンが次々に付加して生成されるユビキチンのポリマーであるユビキチン鎖として結合することでタンパク質の機能を制御する場合が多い。 | ||
ユビキチン鎖の伸長には、7個のリジン(K6、K11、K27、K29、K33、K48、K63)、及びN末端のメチオニン(M1)がいずれもが関わりうる。ユビキチン鎖の中で、すべて同じリジンあるいはメチオニンが用いられているのを均質なユビキチン鎖といい、計8種類存在する('''図3''')<ref name=Akutsu2016><pubmed>26906419</pubmed></ref> 。 | |||
一方、1つのユビキチン分子の複数のリジン残基にユビキチンが結合することでできる枝分かれしたユビキチン鎖である分岐型ユビキチン鎖や、あるユビキチン鎖の上に異なる連結型のユビキチン鎖が結合した混合型ユビキチン鎖も報告されている('''図3''')<ref name=Haakonsen2019><pubmed>31300189</pubmed></ref> 。さらにユビキチン自身がアセチル化やリン酸化による翻訳後修飾を受けることが発見されるなど、ユビキチン修飾系は現在想定されている以上に多彩な役割を果たしている可能性が考えられている(図3)<ref name=Haakonsen2019><pubmed>31300189</pubmed></ref><ref name=大竹2020><pubmed>2020246041</pubmed></ref><ref name=佐々木2018><pubmed>2019053479</pubmed></ref><ref name=Koyano2014><pubmed>24784582</pubmed></ref><ref name=Swatek2016><pubmed>27012465</pubmed></ref><ref name=Ohtake2015><pubmed>25527407</pubmed></ref><ref name=Herhaus2015><pubmed>26268526</pubmed></ref> 。 | |||
====均質なユビキチン鎖==== | ====均質なユビキチン鎖==== | ||
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活性化されたParkinはミトコンドリア外膜にあるタンパク質をユビキチン化することで、mitophagyと呼称されるオートファジー機構で異常ミトコンドリアを除去する<ref name=Narendra2010><pubmed>20126261</pubmed></ref><ref name=Matsuda2010><pubmed>20404107</pubmed></ref><ref name=Geisler2010><pubmed>20098416</pubmed></ref> 。PINK1、Parkinの変異によるミトコンドリアの品質管理機構が破綻し、異常ミトコンドリア蓄積による活性酸素種産生が亢進することがパーキンソン病の病態に関与していると考えられている。 | 活性化されたParkinはミトコンドリア外膜にあるタンパク質をユビキチン化することで、mitophagyと呼称されるオートファジー機構で異常ミトコンドリアを除去する<ref name=Narendra2010><pubmed>20126261</pubmed></ref><ref name=Matsuda2010><pubmed>20404107</pubmed></ref><ref name=Geisler2010><pubmed>20098416</pubmed></ref> 。PINK1、Parkinの変異によるミトコンドリアの品質管理機構が破綻し、異常ミトコンドリア蓄積による活性酸素種産生が亢進することがパーキンソン病の病態に関与していると考えられている。 | ||
[[ファイル:Fuseya ubiquitin Fig4.png|サムネイル| | |||
'''図4. 様々なユビキチン鎖に基づく多様な機能'''<br> | |||
各ユビキチン鎖に対して特異的に結合するユビキチンレセプターの存在により,各ユビキチン鎖に応じた特定の機能を果たすことが可能となる。]] | |||
===ユビキチンレセプター=== | ===ユビキチンレセプター=== | ||
翻訳後修飾は特異的な結合タンパク質(デコーダー群)に認識されることで、その機能を果たす。ユビキチンはタンパク質としては非常に小さいが、翻訳後修飾因子としては非常に大きい。それゆえ、ユビキチン鎖だけで認識シグナルを作ることができるので、タンパク質のどの部位にK48鎖が結合しても分解に導くことができる特徴を持つので、進化上、分解シグナルとして出現したのであろうと考えられている。ユビキチン修飾系におけるデコーダー群をユビキチンレセプターという。ユビキチンレセプターの多くは2個のユビキチンを認識する。つまりユビキチンレセプターは8種類あるユビキチン間結合のいずれかを特異的に認識する。そのため、ユビキチン鎖の種類によって大きく異なる機能を発現する('''図4''')<ref name=Dikic2009><pubmed>19773779</pubmed></ref><ref name=Husnjak2012><pubmed>22482907</pubmed></ref> 。 | |||
ユビキチンレセプターは一つ以上のUBD(ubiquitin binding domain)を有している<ref name=Hicke2005><pubmed>16064137</pubmed></ref> 。現在20種類以上のUBDが知られているが、UBDの種類が認識するユビキチン鎖と必ずしも対応しておらず、特定のユビキチン鎖の機能の解明には認識する各々のユビキチンレセプターを解析することが必要である。 | ユビキチンレセプターは一つ以上のUBD(ubiquitin binding domain)を有している<ref name=Hicke2005><pubmed>16064137</pubmed></ref> 。現在20種類以上のUBDが知られているが、UBDの種類が認識するユビキチン鎖と必ずしも対応しておらず、特定のユビキチン鎖の機能の解明には認識する各々のユビキチンレセプターを解析することが必要である。 |