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SOD1の分子量は生物種によって多少異なるが、サブユニットあたり約16,000 (アミノ酸残基:151から155個)で、ヒトSOD1は153個のアミノ酸残基を有している。N末端のメチオニン残基は脱落し、アセチル化されたアラニン残基から始まっている。そのためSOD1のアミノ酸残基の番号は、ヒトSOD1のアミノ酸配列を基本とし、アラニンを1番目として表記されている(メチオニンを1番目とする表記法もある)。例えば家族性ALSの変異を表すG37Rは、アラニンから数えて37番目のグリシンがアルギニンに変異したことを表している。SOD1は分子量も小さく安定であることから非常に多くの立体構造が決定されており、Protein Data Bank (日本のPDBサイトはhttps://pdbj.org/) に登録されている。図2Bに示すように、SOD1サブユニットは8本のβストランドが逆平行βシートを形成しており、グリークキー構造を2つ有したβバレル構造である。グリークキー構造は隣接する4本の逆平行βストランドとそれらを連結するループで構成され、このうちの3本はヘアピン構造で結合している。1番目のβストランドに隣接する4番目のβストランドは、グリークキーループによって3番目のストランドと結合している。SOD1では、ループIIIとループVIがグリークキーループと呼ばれる。グリークキー構造はギリシャ美術で見られる雷門模様に似ていることから命名された。SOD1のサブユニット同士のダイマー化は疎水性アミノ酸残基間の相互作用と主鎖同士の水素結合から成り立っている。またサブユニットあたり酵素活性に必須であるCuイオンと酵素の構造安定性に寄与するZnイオンを1つずつ配位している。金属の配位とサブユニット内に1ヶ所あるジスルフィド結合(Cys57-Cys146)はSOD1タンパク質の安定性に大きく寄与している。 | SOD1の分子量は生物種によって多少異なるが、サブユニットあたり約16,000 (アミノ酸残基:151から155個)で、ヒトSOD1は153個のアミノ酸残基を有している。N末端のメチオニン残基は脱落し、アセチル化されたアラニン残基から始まっている。そのためSOD1のアミノ酸残基の番号は、ヒトSOD1のアミノ酸配列を基本とし、アラニンを1番目として表記されている(メチオニンを1番目とする表記法もある)。例えば家族性ALSの変異を表すG37Rは、アラニンから数えて37番目のグリシンがアルギニンに変異したことを表している。SOD1は分子量も小さく安定であることから非常に多くの立体構造が決定されており、Protein Data Bank (日本のPDBサイトはhttps://pdbj.org/) に登録されている。図2Bに示すように、SOD1サブユニットは8本のβストランドが逆平行βシートを形成しており、グリークキー構造を2つ有したβバレル構造である。グリークキー構造は隣接する4本の逆平行βストランドとそれらを連結するループで構成され、このうちの3本はヘアピン構造で結合している。1番目のβストランドに隣接する4番目のβストランドは、グリークキーループによって3番目のストランドと結合している。SOD1では、ループIIIとループVIがグリークキーループと呼ばれる。グリークキー構造はギリシャ美術で見られる雷門模様に似ていることから命名された。SOD1のサブユニット同士のダイマー化は疎水性アミノ酸残基間の相互作用と主鎖同士の水素結合から成り立っている。またサブユニットあたり酵素活性に必須であるCuイオンと酵素の構造安定性に寄与するZnイオンを1つずつ配位している。金属の配位とサブユニット内に1ヶ所あるジスルフィド結合(Cys57-Cys146)はSOD1タンパク質の安定性に大きく寄与している。 | ||
=== システイン残基 === | |||
図4は進化の過程におけるSOD1のシステイン残基の位置を示したものである。SOD1構造の維持に重要なCys57とCys146の分子内S-S結合は存在しており、種を超えて完全に保存されている。一方、進化の過程でフリー(S-S結合していない)のシステイン残基は増えてきた。ヒトSOD1のCys6に相当する6番目のアミノ酸は酵母や植物ではアラニンで、ヒトのCys111に相当するアミノ酸はセリンになっている。魚類や日本ザルを含む哺乳類のSOD1では6番目のアミノ酸がフリーのシステインに変異し、ヒト・類人猿およびニワトリのSOD1は111番目もフリーのシステインを持つようになった。なお、ショウジョウバエやニワトリのSOD1はフリーのシステイン残基を余分に持つ。大きな脳をもつ高等動物や酸素を大量に消費する飛行を行う昆虫と鳥類は多くの酸化ストレスに曝されることから、フリーのシステイン残基のチオール基(SH)による抗酸化作用が必要になってきたと考えられる。しかし、フリーのシステイン残基は反応性が高く酸化されやすいため、SOD1タンパク質自体にとっては有利なことではない。特にグリークキーループVIに存在するCys111は非常に酸化されやすく、スルフォン酸への不可逆的酸化<ref name=Fujiwara2007><pubmed>17913710</pubmed></ref> [10]や分子間ジスルフィド結合<ref name=Furukawa2006><pubmed>16636274</pubmed></ref> [11]が起こり、ミスフォールディングや凝集に進む。このCys111を2-メルカプトエタノール(2-ME)(図2A)<ref name=Ihara2012><pubmed>22804629</pubmed></ref> [12]やシステイン<ref name=Auclair2013><pubmed>23927036</pubmed></ref> [13]などでブロックすると酸化による分解や凝集を防ぐことができる。 | 図4は進化の過程におけるSOD1のシステイン残基の位置を示したものである。SOD1構造の維持に重要なCys57とCys146の分子内S-S結合は存在しており、種を超えて完全に保存されている。一方、進化の過程でフリー(S-S結合していない)のシステイン残基は増えてきた。ヒトSOD1のCys6に相当する6番目のアミノ酸は酵母や植物ではアラニンで、ヒトのCys111に相当するアミノ酸はセリンになっている。魚類や日本ザルを含む哺乳類のSOD1では6番目のアミノ酸がフリーのシステインに変異し、ヒト・類人猿およびニワトリのSOD1は111番目もフリーのシステインを持つようになった。なお、ショウジョウバエやニワトリのSOD1はフリーのシステイン残基を余分に持つ。大きな脳をもつ高等動物や酸素を大量に消費する飛行を行う昆虫と鳥類は多くの酸化ストレスに曝されることから、フリーのシステイン残基のチオール基(SH)による抗酸化作用が必要になってきたと考えられる。しかし、フリーのシステイン残基は反応性が高く酸化されやすいため、SOD1タンパク質自体にとっては有利なことではない。特にグリークキーループVIに存在するCys111は非常に酸化されやすく、スルフォン酸への不可逆的酸化<ref name=Fujiwara2007><pubmed>17913710</pubmed></ref> [10]や分子間ジスルフィド結合<ref name=Furukawa2006><pubmed>16636274</pubmed></ref> [11]が起こり、ミスフォールディングや凝集に進む。このCys111を2-メルカプトエタノール(2-ME)(図2A)<ref name=Ihara2012><pubmed>22804629</pubmed></ref> [12]やシステイン<ref name=Auclair2013><pubmed>23927036</pubmed></ref> [13]などでブロックすると酸化による分解や凝集を防ぐことができる。 | ||
疾患との関わり | == 疾患との関わり == | ||
筋萎縮性側索硬化症 | === 筋萎縮性側索硬化症 === | ||
==== 家族性ALSを引き起こすSOD1変異 ==== | |||
1993年に家族性ALSの原因遺伝子として最初に同定されたのがSOD1である<ref name=Deng1993><pubmed>8351519</pubmed></ref><ref name=Rosen1993><pubmed>8446170</pubmed></ref> [14, 15]。当初はSOD1活性の低下がALSの原因になると考えられたが、SOD1ノックアウトマウスはALS症状を示さず<ref name=Reaume1996><pubmed>8673102</pubmed></ref> [16]、変異SOD1の高発現マウスがALS症状を示したことで、その考えは否定された。全ALS患者の2%程度がSOD1遺伝子の変異によるものと推定されている。図5に示すように、今では153個のアミノ酸残基から成るサブユニットに180個以上の点変異やC末端を欠損するフレームシフト変異が報告されている[www. https://alsod.ac.uk/]。ALSを引き起こす変異はあらゆる場所に起こっているが、真核生物間でよく保存されているアミノ酸残基での変異がALS変異になる傾向が高い。図5における黄色背景は酵母、植物、魚類、哺乳類などすべての真核生物において保存されているアミノ酸残基を表し、黄緑色背景は魚類や哺乳類などの脊椎動物で保存されているアミノ酸残基を表している。あまり保存されていないループIIからβ3cストランド(K23~K36)及びループIV(F50~E78)には比較的ALS変異が少ない(図2,5)。ALS変異は構成するアミノ酸残基による違いも見られ、システイン残基は4ヶ所すべてにおいてALS変異が見つかっている。SOD1に多く存在するグリシン残基は25ヶ所あるが、そのうち15ヶ所でALS変異が見つかっており、変異率は60%である。G37R、G85R、G93Aは早期に発見されたALS変異で、ALSモデルマウスが作製されている。特にGly93においてはAla以外に5種類のアミノ酸変異が報告されている。14ヶ所あるバリン残基も10ヶ所でALS変異が見つかっており、変異率は70%に上る。一方、11ヶ所あるリシン残基の点変異は1ヶ所(K3E)のみで、フレームシフトなどによる欠失変異が3ヶ所見つかっている。 | 1993年に家族性ALSの原因遺伝子として最初に同定されたのがSOD1である<ref name=Deng1993><pubmed>8351519</pubmed></ref><ref name=Rosen1993><pubmed>8446170</pubmed></ref> [14, 15]。当初はSOD1活性の低下がALSの原因になると考えられたが、SOD1ノックアウトマウスはALS症状を示さず<ref name=Reaume1996><pubmed>8673102</pubmed></ref> [16]、変異SOD1の高発現マウスがALS症状を示したことで、その考えは否定された。全ALS患者の2%程度がSOD1遺伝子の変異によるものと推定されている。図5に示すように、今では153個のアミノ酸残基から成るサブユニットに180個以上の点変異やC末端を欠損するフレームシフト変異が報告されている[www. https://alsod.ac.uk/]。ALSを引き起こす変異はあらゆる場所に起こっているが、真核生物間でよく保存されているアミノ酸残基での変異がALS変異になる傾向が高い。図5における黄色背景は酵母、植物、魚類、哺乳類などすべての真核生物において保存されているアミノ酸残基を表し、黄緑色背景は魚類や哺乳類などの脊椎動物で保存されているアミノ酸残基を表している。あまり保存されていないループIIからβ3cストランド(K23~K36)及びループIV(F50~E78)には比較的ALS変異が少ない(図2,5)。ALS変異は構成するアミノ酸残基による違いも見られ、システイン残基は4ヶ所すべてにおいてALS変異が見つかっている。SOD1に多く存在するグリシン残基は25ヶ所あるが、そのうち15ヶ所でALS変異が見つかっており、変異率は60%である。G37R、G85R、G93Aは早期に発見されたALS変異で、ALSモデルマウスが作製されている。特にGly93においてはAla以外に5種類のアミノ酸変異が報告されている。14ヶ所あるバリン残基も10ヶ所でALS変異が見つかっており、変異率は70%に上る。一方、11ヶ所あるリシン残基の点変異は1ヶ所(K3E)のみで、フレームシフトなどによる欠失変異が3ヶ所見つかっている。 | ||
==== ALSにおけるSOD1のミスフォールディングと凝集 ==== | |||
SOD1が酵素タンパク質として機能を発揮するには、金属(CuとZn)の配位、Cys57とCys146のジスルフィド結合、そしてサブユニット同士のダイマー化という翻訳後修飾過程が必要である。この翻訳後修飾を失わせるような処理、つまり、金属を除いてジスルフィド結合を還元すると、野生型SOD1であってもモノマーになり凝集化やアミロイド化が起こり<ref name=Furukawa2008><pubmed>18552350</pubmed></ref> [17]、高濃度のSOD1アミロイドはヒドロゲルを形成する<ref name=Fujiwara2018><pubmed>30289953</pubmed></ref> [18]。ALS変異SOD1は野生型SOD1よりも金属がはずれやすくジスルフィド結合も還元されやすいため<ref name=Tiwari2003><pubmed>12458194</pubmed></ref> [19]、熱安定性が低くプロテアーゼの攻撃を受けやすい<ref name=Rodriguez2002><pubmed>11854285</pubmed></ref> [20]。そのため、ALS変異SOD1はモノマーになりやすく凝集体やアミロイドになりやすい性質を有している<ref name=Khare2004><pubmed>15475574</pubmed></ref><ref name=Rakhit2007><pubmed>17486090</pubmed></ref><ref name=Chattopadhyay2008><pubmed>19022905</pubmed></ref> [21, 22, 23]。一方、SOD1は酸化処理によってもアミロイド形成や凝集が起こる<ref name=Rakhit2002><pubmed>12356748</pubmed></ref> [24]。酸化ストレスと神経変性疾患との関係はアルツハイマー病やパーキンソン病でも示唆されているが、SOD1自体の酸化修飾もALS病態に関与している可能性がある<ref name=Fujiwara2007><pubmed>17913710</pubmed></ref><ref name=Bosco2010><pubmed>20953194</pubmed></ref> [10, 25]。ALSにおける酸化ストレス軽減のために、ラジカル消去剤であるエダラボン(ラジカット)が2番目のALS治療薬として認可された。また、SOD1の凝集が運動神経細胞死に関わっているかは議論の余地がある。最近は凝集体よりもミスフォールディングした可溶性SOD1の方に細胞毒性があると報告されている<ref name=Proctor2016><pubmed>26719414</pubmed></ref><ref name=Tokuda2019><pubmed>31744522</pubmed></ref> [26, 27]。 | SOD1が酵素タンパク質として機能を発揮するには、金属(CuとZn)の配位、Cys57とCys146のジスルフィド結合、そしてサブユニット同士のダイマー化という翻訳後修飾過程が必要である。この翻訳後修飾を失わせるような処理、つまり、金属を除いてジスルフィド結合を還元すると、野生型SOD1であってもモノマーになり凝集化やアミロイド化が起こり<ref name=Furukawa2008><pubmed>18552350</pubmed></ref> [17]、高濃度のSOD1アミロイドはヒドロゲルを形成する<ref name=Fujiwara2018><pubmed>30289953</pubmed></ref> [18]。ALS変異SOD1は野生型SOD1よりも金属がはずれやすくジスルフィド結合も還元されやすいため<ref name=Tiwari2003><pubmed>12458194</pubmed></ref> [19]、熱安定性が低くプロテアーゼの攻撃を受けやすい<ref name=Rodriguez2002><pubmed>11854285</pubmed></ref> [20]。そのため、ALS変異SOD1はモノマーになりやすく凝集体やアミロイドになりやすい性質を有している<ref name=Khare2004><pubmed>15475574</pubmed></ref><ref name=Rakhit2007><pubmed>17486090</pubmed></ref><ref name=Chattopadhyay2008><pubmed>19022905</pubmed></ref> [21, 22, 23]。一方、SOD1は酸化処理によってもアミロイド形成や凝集が起こる<ref name=Rakhit2002><pubmed>12356748</pubmed></ref> [24]。酸化ストレスと神経変性疾患との関係はアルツハイマー病やパーキンソン病でも示唆されているが、SOD1自体の酸化修飾もALS病態に関与している可能性がある<ref name=Fujiwara2007><pubmed>17913710</pubmed></ref><ref name=Bosco2010><pubmed>20953194</pubmed></ref> [10, 25]。ALSにおける酸化ストレス軽減のために、ラジカル消去剤であるエダラボン(ラジカット)が2番目のALS治療薬として認可された。また、SOD1の凝集が運動神経細胞死に関わっているかは議論の余地がある。最近は凝集体よりもミスフォールディングした可溶性SOD1の方に細胞毒性があると報告されている<ref name=Proctor2016><pubmed>26719414</pubmed></ref><ref name=Tokuda2019><pubmed>31744522</pubmed></ref> [26, 27]。 | ||
==== ALSモデル動物 ==== | |||
家族性ALSで見つかったSOD1の変異遺伝子を高発現させたマウス(変異SOD1トランスジェニックマウス、変異SOD1 tgマウス)がALSと同様の症状を示した[28]ことから、多くの変異SOD1を高発現させたマウスやラットがALSモデル動物として作製された。ALSの進行や病態の解析、発症機構の解明、治療方法の開発などに利用され、ALSの研究は大きく飛躍した。長年唯一のALS治療薬として使用されてきたリルゾールは、神経毒性を示す興奮性神経伝達物質のグルタミン酸の遊離阻害作用をもつ。実際、変異SOD1 tgマウスを用いた研究では、グルタミン酸を再取込みするグルタミン酸トランスポーター1 (GLT1) の発現量が低下し、ALS発症前からグルタミン酸量が多くなっていること<ref name=Howland2002><pubmed>11818550</pubmed></ref> [29]やイオノマイシン処理などの刺激で放出されるグルタミン酸量が野生型SOD1tgマウスよりも多いこと<ref name=Milanese2011><pubmed>21175617</pubmed></ref> [30]が報告されている。しかし、GLT1を過剰発現させてもG93A tg マウスの生存期間に変化は見られなかった<ref name=Li2015><pubmed>25818008</pubmed></ref> [31]。 | |||
ALSモデル動物の研究により、変異の種類によってALSの発症時期や罹病期間が異なることや、変異SOD1の発現量が多いほどALSの発症が早くなり罹病期間が短くなる(生存期間が短い)ことがわかってきた。またALS患者同様、病変部位である脊髄前角細胞にはSOD1免疫陽性の封入体やレビー小体が見つかっている。興味深いことにA4V発現マウス(A4V tgマウス)はALS症状を示さなかったが、野生型SOD1を共発現させるとALS症状が現れた。G93A tgマウスやL126Z tg マウスにおいても野生型SOD1の共発現によって発症が早まり、生存期間も短くなった<ref name=Deng2006><pubmed>16636275</pubmed></ref> [32]。さらに野生型SOD1のみを高発現させたマウスでもALS様の症状が見られたことから<ref name=Jaarsma2000><pubmed>11114261</pubmed></ref> [33]、孤発性ALSにおいても野生型SOD1の関与が示唆されている。実際、変異SOD1のみならず野生型SOD1高発現マウスから樹立させたiPS細胞由来の運動神経細胞においてもミスフォールドしたSOD1タンパク質の蓄積が観察されている<ref name=Komatsu2018><pubmed>29140847</pubmed></ref> [34]。従って、変異の有無に関わらずSOD1タンパク質自体のミスフォールディングや凝集化がALS発症に関与する可能性が考えられている。 | |||
==== SOD1と銅シャペロンタンパク質との関係 ==== | |||
真核生物ではSOD1に銅イオンを渡す銅シャペロンタンパク質(Copper chaperon for SOD1, CCS)が働いており、CCSを欠損した酵母は致死となる<ref name=Culotta1997><pubmed>9295278</pubmed></ref> [35]。しかし、CCSをノックアウトさせたマウスとALSモデルマウスであるG37R、G93A、G85R tgマウスをそれぞれ掛け合わせても発症時期や罹病期間に変化は見られず、CCSによる銅配位とALSには関係がないと思われた<ref name=Subramaniam2002><pubmed>11889469</pubmed></ref> [36]。一方、CCSの高発現はALS病態を増悪させてしまうこともある。ヒトCCSとG93AまたはG37Rとのダブルトランスジェニックマウスでは早期からミトコンドリアの空胞化が見られ、生存期間が元のG93AやG37Rトランスジェニックマウスの生存期間より著しく短縮した。一方、銅イオンを配位できない変異SOD1とのダブルトランスジェニックマウスでは変化は見られなかった <ref name=Son2007><pubmed>17389365</pubmed></ref><ref name=Son2009><pubmed>19320055</pubmed></ref> [37, 38]。つまり、銅イオンが少ない条件でCCSと銅配位できる変異SOD1を高発現させると変異SOD1に銅が輸送されてしまい、他の銅要求性タンパク質(ミトコンドリアのシトクロムcオキシダーゼなど)が銅不足になったことがALS増悪の原因だと考えられている。なお、CCSの一次構造は中央部分がSOD1と相同性が高く(47%)、N末とC末の両側に拡張した領域を持つ。結晶構造解析によると、相同性の高いCCSの中央部分のダイマー構造はSOD1ダイマーと非常によく似ていた<ref name=Lamb1999><pubmed>10426947</pubmed></ref> [39]。ALS患者の脊髄でSOD1-CCSヘテロダイマー中間体も検出されている<ref name=Antinone2017><pubmed>28120938</pubmed></ref> [40]。 | |||
==== ALSにおけるタンパク質分解機構の関与 ==== | |||
異常タンパク質の分解に関わるユビキチン-プロテアソーム系やオートファジー・リソソーム系の機能低下は、ミスフォールドタンパク質を分解できず凝集化を促進するため神経変性疾患の原因と考えられている<ref name=Bence2001><pubmed>11375494</pubmed></ref><ref name=Cuervo2004><pubmed>15102438</pubmed></ref> [41, 42]。ユビキチン免疫陽性の封入体はALSをはじめ神経変性疾患患者の病変部位でよく観察される。細胞の実験においてもプロテアソーム阻害剤は変異SOD1の分解を阻害し、ポリユビキチン化SOD1の蓄積を誘導する<ref name=Urushitani2002><pubmed>12437574</pubmed></ref> [43]。また神経細胞特異的にオートファジー経路をノックアウトしたマウス(Atg5KO)は運動機能の低下を示し、脳にもユビキチン免疫陽性の封入体が多く見つかっている<ref name=Hara2006><pubmed>16625204</pubmed></ref> [44]。しかし、オートファジー経路をノックアウトしたマウスとG93Atgマウスを掛け合わせたところ、発症は早くなったが生存期間は逆に延長した<ref name=Rudnick2017><pubmed>28904095</pubmed></ref> [45]。さらに、運動ニューロン特異的にプロテアソーム系を障害させたマウスはALSに似た運動ニューロン死を誘導したが、オートファジー系を障害させたマウスでは運動機能に異常が認められなかった。つまり、運動ニューロン障害においてはオートファジー・リソソーム系よりもユビキチン・プロテアソーム系が主因となっている可能性がある<ref name=Tashiro2012><pubmed>23095749</pubmed></ref> [46]。 | |||
==== ALSにおけるミトコンドリア機能障害 ==== | |||
ALSでミトコンドリア機能障害が起こることは研究早期から提唱されてきた。変異SOD1tgマウスの運動ニューロンでミトコンドリア内のCa2+緩衝作用と呼吸能障害が見出されている<ref name=Mattiazzi2002><pubmed>12050154</pubmed></ref><ref name=Damiano2006><pubmed>16478527</pubmed></ref> [47, 48]。ミトコンドリアが傷害されるとシトクロムcが放出されアポトーシスが誘導されるが、アポトーシス経路を遮断するとALSモデルマウスの生存期間が延長したとの報告もある<ref name=Reyes2010><pubmed>20890041</pubmed></ref> [49]。変異SOD1 tgマウスの筋肉細胞で見られるミトコンドリアのuncoupling protein 3 (UCP3) の上昇は、ALSにおけるエネルギー代謝の亢進による脂肪量の減少に関与している<ref name=Dupuis2003><pubmed>14500553</pubmed></ref> [50]。一方、神経保護に働くUCP2を高発現させたG93A tgマウスは逆にALSの進行が早まった<ref name=Peixoto2013><pubmed>24141050</pubmed></ref> [51]。 | |||
==== ALSにおけるオルガネラ異常 ==== | |||
神経変性疾患の原因の一つとして小胞体(ER)ストレスが考えられている。ALSにおいても、ミスフォールディングした変異SOD1が運動ニューロン内のERに蓄積してERストレスを誘導することで脆弱な運動ニューロンが細胞死に至ると考えられている><><<ref name=Saxena2009><pubmed>19330001</pubmed></ref> [52, 53, 54]。さらに、ALS患者や変異SOD1tgマウスにおいて、ゴルジ体の断片化><<ref name=Bellouze2016><pubmed>27277231</pubmed></ref> [55, 56]や核膜形態異常<ref name=Kinoshita2009><pubmed>19816199</pubmed></ref> [57]、核輸送障害<ref name=Zhong2017><pubmed>28463106</pubmed></ref> [58]なども観察されており、ミトコンドリア以外のオルガネラ異常の関与が注目されている。 | |||
==== ALSにおける非細胞自律性神経細胞死 ==== | |||
変異SOD1tgマウスにおいて、ミクログリアやアストロサイトでの変異SOD1の発現量が多いほどALSの進行速度が速くなり、逆にミクログリアやアストロサイトでの変異SOD1を除去するとALSの進行速度が遅くなることが証明された。つまり、変異SOD1を発現している運動神経細胞が自律的に細胞死をきたすわけではない『非細胞自律性神経細胞死』の概念が提唱されている><<ref name=Yamanaka2008><pubmed>18246065</pubmed></ref> [59, 60]。 | 変異SOD1tgマウスにおいて、ミクログリアやアストロサイトでの変異SOD1の発現量が多いほどALSの進行速度が速くなり、逆にミクログリアやアストロサイトでの変異SOD1を除去するとALSの進行速度が遅くなることが証明された。つまり、変異SOD1を発現している運動神経細胞が自律的に細胞死をきたすわけではない『非細胞自律性神経細胞死』の概念が提唱されている><<ref name=Yamanaka2008><pubmed>18246065</pubmed></ref> [59, 60]。 | ||
SOD1欠損 | === SOD1欠損 === | ||
==== SOD1欠損マウス ==== | |||
SOD1を欠損させたマウス(SOD1KOマウス)はALS症状を示さず一見正常に生育するものの雌の不妊が見つかり<ref name=Reaume1996><pubmed>8673102</pubmed></ref> [61]、その後多くの異常が報告されるようになった。SOD1は赤血球に多く発現しているため、その欠損は溶血性貧血を引き起こし<ref name=Iuchi2007><pubmed>17059387</pubmed></ref> [62]、腎臓や肝臓に鉄が蓄積すると考えられる<ref name=Yoshihara2012><pubmed>22435664</pubmed></ref><ref name=Yoshihara2016><pubmed>27629432</pubmed></ref> [63, 64]。また、普通食でも脂肪肝から肝硬変になり<ref name=Uchiyama2006><pubmed>16921198</pubmed></ref><ref name=Sakiyama2016><pubmed>26981929</pubmed></ref> [65, 66]、高齢になると肝腫瘍が発生する<ref name=Elchuri2005><pubmed>15531919</pubmed></ref> [67]。さらに、難聴<ref name=McFadden1999><pubmed>10466888</pubmed></ref> [68]、骨減少症<ref name=Nojiri2011><pubmed>22025246</pubmed></ref> [69]、骨格筋の萎縮<ref name=Muller2006><pubmed>16716900</pubmed></ref> [70]、皮膚萎縮症<ref name=Murakami2009><pubmed>19289104</pubmed></ref> [71]、加齢黄斑変性<ref name=Imamura2006><pubmed>16844785</pubmed></ref> [72]などの老化症状が見られている。アルツハイマーモデルマウスと掛け合わせると認知機能がさらに低下することも報告されている<ref name=Murakami2011><pubmed>22072713</pubmed></ref> [73]。またSOD1KOマウスは行動異常を起こし、大脳ではドーパミントランスポーターの発現が上昇していることが観察されている<ref name=Yoshihara2016><pubmed>27629432</pubmed></ref> [74]。 | SOD1を欠損させたマウス(SOD1KOマウス)はALS症状を示さず一見正常に生育するものの雌の不妊が見つかり<ref name=Reaume1996><pubmed>8673102</pubmed></ref> [61]、その後多くの異常が報告されるようになった。SOD1は赤血球に多く発現しているため、その欠損は溶血性貧血を引き起こし<ref name=Iuchi2007><pubmed>17059387</pubmed></ref> [62]、腎臓や肝臓に鉄が蓄積すると考えられる<ref name=Yoshihara2012><pubmed>22435664</pubmed></ref><ref name=Yoshihara2016><pubmed>27629432</pubmed></ref> [63, 64]。また、普通食でも脂肪肝から肝硬変になり<ref name=Uchiyama2006><pubmed>16921198</pubmed></ref><ref name=Sakiyama2016><pubmed>26981929</pubmed></ref> [65, 66]、高齢になると肝腫瘍が発生する<ref name=Elchuri2005><pubmed>15531919</pubmed></ref> [67]。さらに、難聴<ref name=McFadden1999><pubmed>10466888</pubmed></ref> [68]、骨減少症<ref name=Nojiri2011><pubmed>22025246</pubmed></ref> [69]、骨格筋の萎縮<ref name=Muller2006><pubmed>16716900</pubmed></ref> [70]、皮膚萎縮症<ref name=Murakami2009><pubmed>19289104</pubmed></ref> [71]、加齢黄斑変性<ref name=Imamura2006><pubmed>16844785</pubmed></ref> [72]などの老化症状が見られている。アルツハイマーモデルマウスと掛け合わせると認知機能がさらに低下することも報告されている<ref name=Murakami2011><pubmed>22072713</pubmed></ref> [73]。またSOD1KOマウスは行動異常を起こし、大脳ではドーパミントランスポーターの発現が上昇していることが観察されている<ref name=Yoshihara2016><pubmed>27629432</pubmed></ref> [74]。 | ||
==== SOD1欠損症 ==== | |||
1993年以降SOD1の変異がALS患者で続々と見つかってきたのとは対照的に、SOD1の欠損症は2019年に初めてホモ接合性SOD1トランケーション変異(c.335dupG, p.C112Wfs*11, SOD活性なし)の症例が2例報告された。その2歳と6歳の患者は進行性の運動失調を伴う精神運動遅滞、過剰驚愕症(びっくり病)、痙性麻痺、耳介低位などの症状がみられており、SOD1の機能喪失とALS病態の関わりを再考する症例となっている<ref name=Park2019><pubmed>31332433</pubmed></ref><ref name=Andersen2019><pubmed>31314961</pubmed></ref> [75, 76]。なお、p.C112Wfs*11はメチオニンから数えて112番目のCys(従来の表記ではCys111)がTrpになるフレームシフトが起こり、さらに10個の余分なアミノ酸の後に終止コドンになった欠失変異を意味している。これらの症例の家族にALS症状は見られていないものの、SOD1の機能喪失によるのかC末端が欠失したSOD1タンパク質の影響なのかも議論の余地がある。 | 1993年以降SOD1の変異がALS患者で続々と見つかってきたのとは対照的に、SOD1の欠損症は2019年に初めてホモ接合性SOD1トランケーション変異(c.335dupG, p.C112Wfs*11, SOD活性なし)の症例が2例報告された。その2歳と6歳の患者は進行性の運動失調を伴う精神運動遅滞、過剰驚愕症(びっくり病)、痙性麻痺、耳介低位などの症状がみられており、SOD1の機能喪失とALS病態の関わりを再考する症例となっている<ref name=Park2019><pubmed>31332433</pubmed></ref><ref name=Andersen2019><pubmed>31314961</pubmed></ref> [75, 76]。なお、p.C112Wfs*11はメチオニンから数えて112番目のCys(従来の表記ではCys111)がTrpになるフレームシフトが起こり、さらに10個の余分なアミノ酸の後に終止コドンになった欠失変異を意味している。これらの症例の家族にALS症状は見られていないものの、SOD1の機能喪失によるのかC末端が欠失したSOD1タンパク質の影響なのかも議論の余地がある。 | ||
酵素活性以外の機能 | == 酵素活性以外の機能 == | ||
=== ミトコンドリア呼吸抑制能 === | |||
SOD1はミトコンドリアから漏出するスーパーオキシドの消去以外に、ミトコンドリアの酸素呼吸そのものを低下させる役割を持つことが明らかになってきた<ref name=Sehati2011><pubmed>21397007</pubmed></ref><ref name=Reddi2013><pubmed>23332757</pubmed></ref> [77,78]。Lys122残基(図5, ALS変異未定)のアセチル化がSOD1の酵素活性には影響せずにSOD1がもつミトコンドリア呼吸抑制能を低下させることも報告されている<ref name=Banks2017><pubmed>28739857</pubmed></ref> [79]。多くの代謝酵素や転写因子のリシン残基のアセチル化やスクシニル化がミトコンドリア呼吸をはじめとする細胞内代謝を制御することがわかってきており [80]、SOD1のアセチル化もその一つだと考えられている。 | SOD1はミトコンドリアから漏出するスーパーオキシドの消去以外に、ミトコンドリアの酸素呼吸そのものを低下させる役割を持つことが明らかになってきた<ref name=Sehati2011><pubmed>21397007</pubmed></ref><ref name=Reddi2013><pubmed>23332757</pubmed></ref> [77,78]。Lys122残基(図5, ALS変異未定)のアセチル化がSOD1の酵素活性には影響せずにSOD1がもつミトコンドリア呼吸抑制能を低下させることも報告されている<ref name=Banks2017><pubmed>28739857</pubmed></ref> [79]。多くの代謝酵素や転写因子のリシン残基のアセチル化やスクシニル化がミトコンドリア呼吸をはじめとする細胞内代謝を制御することがわかってきており [80]、SOD1のアセチル化もその一つだと考えられている。 | ||
=== 転写制御因子としての作用 === | |||
SOD1が酸化ストレス刺激で核内に入り、DNAに結合し、DNA修復遺伝子、ALSに関係する遺伝子、がん遺伝子やCu/Fe恒常遺伝子などの発現を制御する機能が報告されている<ref name=Tsang2014><pubmed>24647101</pubmed></ref><ref name=Li2019><pubmed>31162603</pubmed></ref> [81, 82]。 | SOD1が酸化ストレス刺激で核内に入り、DNAに結合し、DNA修復遺伝子、ALSに関係する遺伝子、がん遺伝子やCu/Fe恒常遺伝子などの発現を制御する機能が報告されている<ref name=Tsang2014><pubmed>24647101</pubmed></ref><ref name=Li2019><pubmed>31162603</pubmed></ref> [81, 82]。 | ||
=== 分泌SOD1のパラクライン作用 === | |||
細胞質に存在するSOD1が小胞体(ER)-ゴルジ経路で細胞外に輸送され[83]、特に変異SOD1はクロモグラニンBと結合して分泌され細胞毒性に関与していることが報告された[84]。さらに、細胞外のカリウムイオンによって誘導された脱分極によってSOD1が細胞外に分泌されること[85]や神経細胞においてSOD1がムスカリン性アセチルコリン受容体を介してERK1/2とAKTを活性化すること<ref name=Damiano2013><pubmed>23147108</pubmed></ref> [86]が報告されている。また細胞外に放出されたミスフォールドSOD1が隣接する細胞に取り込まれ、その細胞内のSOD1をミスフォールディングさせるプリオン伝播作用を示すことが提唱された><<ref name=Grad2014><pubmed>25551548</pubmed></ref> [87, 88]。さらに、ALS患者脳脊髄液中に存在する可溶性ミスフォールド野生型SOD1が運動ニューロン様細胞に対して細胞毒性を示す<ref name=Tokuda2019><pubmed>31744522</pubmed></ref> [27]。そこで、細胞外(脳脊髄液)のミスフォールドSOD1をターゲットにした新たなALS治療法が開発されるようになってきた。マウスを用いた実験段階であるが、ミスフォールドSOD1に特異的な抗体を髄腔内投与する療法やSOD1を投与して生体内で抗体を作らせるワクチン療法の効果が報告されている><<ref name=Takeuchi2010><pubmed>20838241</pubmed></ref> [89, 90]。さらにはSOD1の翻訳を阻害する核酸医薬の開発競争も始まっている><><<ref name=Mueller2020><pubmed>32640133</pubmed></ref> [91, 92, 93]。既にSOD1変異を持つ患者に対して、SOD1 mRNAを分解するアンチセンス薬tofersenの髄腔内投与の効果・安全性を検討する第1/第2相試験が行われており、第3相試験への期待が高まっている[94]。 | 細胞質に存在するSOD1が小胞体(ER)-ゴルジ経路で細胞外に輸送され[83]、特に変異SOD1はクロモグラニンBと結合して分泌され細胞毒性に関与していることが報告された[84]。さらに、細胞外のカリウムイオンによって誘導された脱分極によってSOD1が細胞外に分泌されること[85]や神経細胞においてSOD1がムスカリン性アセチルコリン受容体を介してERK1/2とAKTを活性化すること<ref name=Damiano2013><pubmed>23147108</pubmed></ref> [86]が報告されている。また細胞外に放出されたミスフォールドSOD1が隣接する細胞に取り込まれ、その細胞内のSOD1をミスフォールディングさせるプリオン伝播作用を示すことが提唱された><<ref name=Grad2014><pubmed>25551548</pubmed></ref> [87, 88]。さらに、ALS患者脳脊髄液中に存在する可溶性ミスフォールド野生型SOD1が運動ニューロン様細胞に対して細胞毒性を示す<ref name=Tokuda2019><pubmed>31744522</pubmed></ref> [27]。そこで、細胞外(脳脊髄液)のミスフォールドSOD1をターゲットにした新たなALS治療法が開発されるようになってきた。マウスを用いた実験段階であるが、ミスフォールドSOD1に特異的な抗体を髄腔内投与する療法やSOD1を投与して生体内で抗体を作らせるワクチン療法の効果が報告されている><<ref name=Takeuchi2010><pubmed>20838241</pubmed></ref> [89, 90]。さらにはSOD1の翻訳を阻害する核酸医薬の開発競争も始まっている><><<ref name=Mueller2020><pubmed>32640133</pubmed></ref> [91, 92, 93]。既にSOD1変異を持つ患者に対して、SOD1 mRNAを分解するアンチセンス薬tofersenの髄腔内投与の効果・安全性を検討する第1/第2相試験が行われており、第3相試験への期待が高まっている[94]。 | ||
関連項目 | == 関連項目 == | ||
筋萎縮性側索硬化症 | * [[筋萎縮性側索硬化症]] | ||
アミロイド | * [[アミロイド]] | ||
ユビキチン | * [[ユビキチン]] | ||
プロテアソーム | * [[プロテアソーム]] | ||
オートファジー | * [[オートファジー]] | ||
リソソーム | * [[リソソーム]] | ||
グルタミン酸 | * [[グルタミン酸]] | ||
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図1 | 図1 | ||
A Cys111に2ME修飾させた野生型SOD1の立体構造(PDB:3T5Wを改変) | A Cys111に2ME修飾させた野生型SOD1の立体構造(PDB:3T5Wを改変) |