「くも膜下出血」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
98行目: 98行目:
 強い頭痛や意識障害といった破裂動脈瘤によるくも膜下出血の症状を呈する数日前に、少量の出血あるいは動脈瘤の急速な増大・変形によると考えられる頭痛が先行する場合があり「警告症状 (warning sign)」といわれている<ref name=Bassi1991><pubmed>1771999</pubmed></ref>18)。くも膜下出血患者の25%が中核病院を受診する前に診療を受けているにもかかわらず、診断がついておらず、そのうちの38%が軽微なくも膜下出血であったという報告もあり、鑑別は頭痛診断における重要なpitfallである<ref name=Mayer1996><pubmed>8784130</pubmed></ref>19)。
 強い頭痛や意識障害といった破裂動脈瘤によるくも膜下出血の症状を呈する数日前に、少量の出血あるいは動脈瘤の急速な増大・変形によると考えられる頭痛が先行する場合があり「警告症状 (warning sign)」といわれている<ref name=Bassi1991><pubmed>1771999</pubmed></ref>18)。くも膜下出血患者の25%が中核病院を受診する前に診療を受けているにもかかわらず、診断がついておらず、そのうちの38%が軽微なくも膜下出血であったという報告もあり、鑑別は頭痛診断における重要なpitfallである<ref name=Mayer1996><pubmed>8784130</pubmed></ref>19)。


 くも膜下出血の外科治療が慢性期に行われていた時代の教科書には髄膜刺激症状(Kernig's sign、Brudzinski's sign、jolt accentuation of headache)をくも膜下出血の特徴的所見としていたものが多い。しかしながら項部硬直は発症初期にはみられないことが少なからずあり、項部硬直が認められないことをもってくも膜下出血を否定できないため、2003年の『EBMに基づくクモ膜下出血診療ガイドライン』からその旨が明記されるようになった20)。脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は、診断の遅れが再出血の増加、予後の悪化につながるため、迅速で的確な診断と専門医による治療の必要性が『脳卒中治療ガイドライン2015[追補2019]』ではグレードA(行うよう強く勧められる)で強く推奨されている。
 くも膜下出血の外科治療が慢性期に行われていた時代の教科書には髄膜刺激症状(Kernig's sign、Brudzinski's sign、jolt accentuation of headache)をくも膜下出血の特徴的所見としていたものが多い。しかしながら項部硬直は発症初期にはみられないことが少なからずあり、項部硬直が認められないことをもってくも膜下出血を否定できないため、2003年の『EBMに基づくクモ膜下出血診療ガイドライン』からその旨が明記されるようになった<ref name=吉峰俊樹2003>'''吉峰俊樹編. (2003)'''<br>科学的根拠に基づくくも膜下出血診療ガイドライン.脳卒中の外科 31(増刊号(l)):1-60.</ref>20)。脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は、診断の遅れが再出血の増加、予後の悪化につながるため、迅速で的確な診断と専門医による治療の必要性が『脳卒中治療ガイドライン2015[追補2019]』ではグレードA(行うよう強く勧められる)で強く推奨されている。


 診断された場合には、発症直後は再出血を予防するため、十分な鎮痛、鎮静、降圧が望ましく、以下の検査においてこれを徹底することが重要である<ref name=日本脳卒中学会2019>'''日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン[追補2019]委員会 編. (2019).'''<br>脳卒中ガイドライン2015[追補2019]、協和企画、東京. </ref>21)。
 診断された場合には、発症直後は再出血を予防するため、十分な鎮痛、鎮静、降圧が望ましく、以下の検査においてこれを徹底することが重要である<ref name=日本脳卒中学会2019>'''日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン[追補2019]委員会 編. (2019).'''<br>脳卒中ガイドライン2015[追補2019]、協和企画、東京. </ref>21)。
===検査===
===検査===
 くも膜下出血を疑う場合に最初に行うべき画像診断は頭部単純CTである。動脈瘤破裂後48時間以内に、単純CTで患者の95 %でくも膜下出血の所見が認められる。CT上の出血の局在により破裂動脈瘤の位置推定が、また出血の量は脳血管攣縮による遅発性脳虚血症状が生ずる蓋然性を予測することができる。CTにて出血が指摘できない場合でも臨床症状からくも膜下出血を疑う場合には、占拠性病変や閉塞性水頭症がないことを確認したうえで腰椎穿刺を行い血性脳脊髄液の有無を確認する<ref name=van der Wee1995><pubmed>7897421</pubmed></ref>22)。微量の出血の検出にはMRIの FLAIR (fluid attenuated inversion recovery)撮像が有用である。
 くも膜下出血を疑う場合に最初に行うべき画像診断は頭部単純CTである。動脈瘤破裂後48時間以内に、単純CTで患者の95 %でくも膜下出血の所見が認められる。CT上の出血の局在により破裂動脈瘤の位置推定が、また出血の量は脳血管攣縮による遅発性脳虚血症状が生ずる蓋然性を予測することができる。CTにて出血が指摘できない場合でも臨床症状からくも膜下出血を疑う場合には、占拠性病変や閉塞性水頭症がないことを確認したうえで腰椎穿刺を行い血性脳脊髄液の有無を確認する<ref name=van der Wee1995><pubmed>7897421</pubmed></ref>22)。微量の出血の検出にはMRIの FLAIR (fluid attenuated inversion recovery)撮像が有用である。

案内メニュー