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Yasuosakuma (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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内側視索前野は吻側で対角帯核と側坐核に接し、尾側は形態学上明確な境界を持たず、視交叉の高さで視床下部前野に移行する。背側は前交連をはさんで、機能的に関連の深い分界条床核や中隔septumにつながる。なお、ラット、マウスの中隔は、ヒトの25野、嗅傍領と相同で、透明中隔とは異なる。腹側は脳底で視交叉に接する。視交叉の後縁が視床下部前野と灰白隆起の境界となる。前額断面では内側視索前野は第三脳室に接する最内側の傍室部periventricular zoneとその外側で脳弓で境される内側部に区分される。傍室部の細胞群を前腹側傍室核と呼ぶことがある。脳弓より外側を外側視索前野と呼ぶ。外側視索前野は局所のニューロンに加え、傍室部や内側視索前野に発する下行線維が内側前脳束として通過する(Simerly RB : Anatomical substrates of hypothalamic integration. in The rat nervous system. ed by PaxinosG, Academic Press, San Diego, 2004, pp. 336-368)。 | 内側視索前野は吻側で対角帯核と側坐核に接し、尾側は形態学上明確な境界を持たず、視交叉の高さで視床下部前野に移行する。背側は前交連をはさんで、機能的に関連の深い分界条床核や中隔septumにつながる。なお、ラット、マウスの中隔は、ヒトの25野、嗅傍領と相同で、透明中隔とは異なる。腹側は脳底で視交叉に接する。視交叉の後縁が視床下部前野と灰白隆起の境界となる。前額断面では内側視索前野は第三脳室に接する最内側の傍室部periventricular zoneとその外側で脳弓で境される内側部に区分される。傍室部の細胞群を前腹側傍室核と呼ぶことがある。脳弓より外側を外側視索前野と呼ぶ。外側視索前野は局所のニューロンに加え、傍室部や内側視索前野に発する下行線維が内側前脳束として通過する(Simerly RB : Anatomical substrates of hypothalamic integration. in The rat nervous system. ed by PaxinosG, Academic Press, San Diego, 2004, pp. 336-368)。 | ||
内側視索前野には複数の細胞集積が認められるが、視床下部の「核」と異なり、必ずしも境界は鮮明ではない。中央部に位置する性的二型核はニッスル染色で比較的鮮明に描出され、ラット雄が雌より多数のニューロンを擁する (Orikasa et al., 2002)。長年にわたり議論されてきたマウスにおけるこの核の存在は、2010年に複数の亜系で示された(Orikasa & Sakuma, 2010)。第3脳室に接する傍室部には吻側から終板器官(organum vasculosum of the lamina terminalis OVLT)、前腹側傍室核 anteroventral periventricular nucleus, AVPV)、腹内側内側視索前野核 ventromedial preoptic nucles、正中視索前核 median preoptic nucleus、傍室視索前核 preoptic periventricularといった構造が同定されている。内側部では中心部に大きな体積を占めているのが内側視索前核 medial preoptic nucleus (MPN) でそのほかに傍分界条核 parastrial nucleus (PS), 、後背側視索前核 posterodorsal preoptic nucleus (PD)、腹外側視索前核 ventrolateral preopticnucleus、中隔視床下部核 septohypothalamic nucleus (SHy) といった細胞集積が認められる。マウス内側視索前野前額断の概要はAllen brain Atlas (2004) http://bit.ly/2wN3XQU に見ることができる。 | |||
Orikasa C, Sakuma Y.: Estrogen configures sexual dimorphism in the preoptic area of C57BL/6J and ddN strains of mice. J. Comp. Neurol. 518(17):3618-3629 (2010) | |||
雌ラット内側視索前野のGABA作動性ニューロンにエストロゲン受容体が発現していること(Herbison et al.,1995), parvalbumin陽性のGABA作動性ニューロンが内側中隔から内側視索前野吻側・対角帯野に分布 (Smith, Pang, 2005)し、上述のGnRHニューロンの分布と重なることは生殖内分泌調節がこの部位で行われていることを示唆している。GnRHニューロンはクロライドトランスポーターの発現パターン(NKCC1>KCC2)から、細胞内クロライドイオン濃度が高く、GABA<sub>A</sub>受容体活性化で興奮し、GnRH分泌を起す。また、雌マウス内側視索前野中心部の選択的破壊は、性ホルモン依存性の母性行動を消失させる(Tsuneoka et al., 2013)が、これはGABAニューロンではなく、この部位に存在するgalaninの脱落のためである(Wu et al., 2014)。 | 雌ラット内側視索前野のGABA作動性ニューロンにエストロゲン受容体が発現していること(Herbison et al.,1995), parvalbumin陽性のGABA作動性ニューロンが内側中隔から内側視索前野吻側・対角帯野に分布 (Smith, Pang, 2005)し、上述のGnRHニューロンの分布と重なることは生殖内分泌調節がこの部位で行われていることを示唆している。GnRHニューロンはクロライドトランスポーターの発現パターン(NKCC1>KCC2)から、細胞内クロライドイオン濃度が高く、GABA<sub>A</sub>受容体活性化で興奮し、GnRH分泌を起す。また、雌マウス内側視索前野中心部の選択的破壊は、性ホルモン依存性の母性行動を消失させる(Tsuneoka et al., 2013)が、これはGABAニューロンではなく、この部位に存在するgalaninの脱落のためである(Wu et al., 2014)。 | ||
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脂溶性ホルモンに対する核内・細胞質内受容体としてエストロゲン受容体αとβ(核内)、プロゲステロン受容体A(核内)とB(細胞質内)、アンドロゲン受容体(核内)を発現するものがある。 | 脂溶性ホルモンに対する核内・細胞質内受容体としてエストロゲン受容体αとβ(核内)、プロゲステロン受容体A(核内)とB(細胞質内)、アンドロゲン受容体(核内)を発現するものがある。 | ||
[[性ホルモン]]を始め末梢のホルモン、[[サイトカイン]][[受容体]]を持つニューロンが多数分布し、第三脳室壁に接する[[エストロゲン]]受容体α陽性ニューロンの集積は[[前腹側傍室核]]と呼ばれ、GPR54リガンドであるキスペプチン作動性で、GnRHニューロンの興奮性支配を通じてエストロゲンによる性フィードバックによる[[wikipedia:ja:排卵|排卵]]に不可欠である(Popa et al., 2008)。前室周囲核はラット、マウスで雌が雄より大きい(Orikasa et al., 2002)。 | |||
Popa, S. M., Clifton, D. K., Steiner, R. A.: The role of kisspeptins and GPR54 in the neuroendocrine regulation of reproduction. | |||
[[性ホルモン]]を始め末梢のホルモン、[[サイトカイン]][[受容体]]を持つニューロンが多数分布し、第三脳室壁に接する[[エストロゲン]] | Annu. Rev. Physiol. 70(1): 213-238, 2008. | ||
Orikasa, C., Kondo, Y., Hayashi, S., McEwen, B. S., Sakuma, Y.: Sexually dimorphic expression of estrogen receptor beta in the anteroventral periventricular nucleus of the rat preoptic area: Implication in luteinizing hormone surge. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 99(5): 3306-3311, 2002. | |||
[[視索前野]]の中央には雄で大きい視索前野の[[性的二型核]](これもパラグラフの1行目の分類には無いようです。どのような関係にあるのでしょうか)と呼ばれる細胞集積がヒトを含む多数の動物種で認められ、性的指向(嗜好でしょうか?)性に関わるとされる(文献を御願い致します)。 | [[視索前野]]の中央には雄で大きい視索前野の[[性的二型核]](これもパラグラフの1行目の分類には無いようです。どのような関係にあるのでしょうか)と呼ばれる細胞集積がヒトを含む多数の動物種で認められ、性的指向(嗜好でしょうか?)性に関わるとされる(文献を御願い致します)。 | ||
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主に逆向性興奮の誘発による電気生理学的研究(投射野の決定と共に軸索興奮性におよぼすエストラジオールの作用を調べることができる) | 主に逆向性興奮の誘発による電気生理学的研究(投射野の決定と共に軸索興奮性におよぼすエストラジオールの作用を調べることができる) | ||
閾値の変化の一部はエストロゲン受容体を介するK+チャネルの発現調節によることが示されている(Nishimura et al, ) | 閾値の変化の一部はエストロゲン受容体を介するK+チャネルの発現調節によることが示されている(Nishimura et al, ) | ||
GnRHニューロンは[[正中隆起]]の[[下垂体門脈]]第一次血管叢に軸索を終わる。[[情動]]や[[自律機能]]調節に関わるニューロンは、[[内側前脳束]]を通り[[中脳]][[中心灰白質]](Fahrbach et al, 1986)(Conrad and Pfaff, 1976)、[[腹側被蓋野]](Hasegawa, 1993)、[[中脳運動領域]](Takeo, 1995)に至る下行性投射に加え、[[マイネルト核]]と呼ばれる[[コリン]]作動性ニューロンの集積から[[大脳皮質]]へ広汎な上行性投射を送るものがある。 | GnRHニューロンは[[正中隆起]]の[[下垂体門脈]]第一次血管叢に軸索を終わる。[[情動]]や[[自律機能]]調節に関わるニューロンは、[[内側前脳束]]を通り[[中脳]][[中心灰白質]](Fahrbach et al, 1986)(Conrad and Pfaff, 1976)、[[腹側被蓋野]](Hasegawa, 1993)、[[中脳運動領域]](Takeo, 1995)に至る下行性投射に加え、[[マイネルト核]]と呼ばれる[[コリン]]作動性ニューロンの集積から[[大脳皮質]]へ広汎な上行性投射を送るものがある。 |
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