「カドヘリン」の版間の差分

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 ネクチンは、ホモフィリックだけではなく、ヘテロフィリックな結合活性ももち、[[ネクチン-1]]と[[ネクチン-3]]は、それぞれのホモフィリックな接着(ネクチン-1同士もしくはネクチン-3同士)よりも、ヘテロフィリックな接着(ネクチン-1とネクチン-3)の方が強いことが知られている。ネクチン-1は海馬の歯状回顆粒細胞から伸びる苔状線維に発現し、ネクチン-3は[[CA3]][[錐体細胞]]の樹状突起近位部に局在し、ネクチン-1もしくはネクチン-3の遺伝子破壊マウスの海馬では、これらの神経細胞の間に形成されるシナプスの数が減少する<ref><pubmed> 16300961 </pubmed></ref>。また、歯状回の顆粒細胞から伸長する苔状線維が正しく投射するためには[[カドヘリン8]]が必要であり、苔状線維とCA3錐体細胞の樹状突起の間のシナプスが形成されるためには、[[カドヘリン9]]が必要であることも報告されている<ref><pubmed> 18064706 </pubmed></ref><ref><pubmed> 21867881 </pubmed></ref>。  
 ネクチンは、ホモフィリックだけではなく、ヘテロフィリックな結合活性ももち、[[ネクチン-1]]と[[ネクチン-3]]は、それぞれのホモフィリックな接着(ネクチン-1同士もしくはネクチン-3同士)よりも、ヘテロフィリックな接着(ネクチン-1とネクチン-3)の方が強いことが知られている。ネクチン-1は海馬の歯状回顆粒細胞から伸びる苔状線維に発現し、ネクチン-3は[[CA3]][[錐体細胞]]の樹状突起近位部に局在し、ネクチン-1もしくはネクチン-3の遺伝子破壊マウスの海馬では、これらの神経細胞の間に形成されるシナプスの数が減少する<ref><pubmed> 16300961 </pubmed></ref>。また、歯状回の顆粒細胞から伸長する苔状線維が正しく投射するためには[[カドヘリン8]]が必要であり、苔状線維とCA3錐体細胞の樹状突起の間のシナプスが形成されるためには、[[カドヘリン9]]が必要であることも報告されている<ref><pubmed> 18064706 </pubmed></ref><ref><pubmed> 21867881 </pubmed></ref>。  


 このように、カドヘリンは、神経細胞移動や神経突起伸長のみならず、シナプス形成においても重要な役割を果たすことから、神経活動や脳の高次機能にも何らかの役割を果たしていることが予想される。実際、N-カドヘリンは[[AMPA型グルタミン酸受容体]]([[グルタミン酸]]は興奮性神経細胞の主要な神経伝達物質)の輸送や、海馬CA3錐体細胞由来の[[シャッファー側枝]]からの入力を受ける[[CA1]]錐体細胞のシナプスにおける長期増強に関与する<ref><pubmed> 16515543 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11086998 </pubmed></ref>。さらに、海馬におけるN-カドヘリンの機能阻害は、[[文脈依存的恐怖記憶]]の形成が低下する<ref><pubmed> 17785185 </pubmed></ref>。また、カドヘリン-11の遺伝子破壊マウスは、[[恐怖]]や[[不安]]に関する行動が異常となることが知られている<ref><pubmed> 10860580 </pubmed></ref>。  
 このように、カドヘリンは、神経細胞移動や神経突起伸長のみならず、シナプス形成においても重要な役割を果たすことから、神経活動や脳の高次機能にも何らかの役割を果たしていることが予想される。実際、N-カドヘリンは[[AMPA型グルタミン酸受容体]]([[グルタミン酸]]は興奮性神経細胞の主要な神経伝達物質)の輸送や、海馬CA3錐体細胞由来の[[シャッファー側枝]]からの入力を受ける[[CA1]]錐体細胞のシナプスにおける長期増強に関与する<ref><pubmed> 16515543 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11086998 </pubmed></ref>。さらに、海馬におけるN-カドヘリンの機能阻害は、[[恐怖文脈条件づけ|文脈依存的恐怖記憶]]の形成が低下する<ref><pubmed> 17785185 </pubmed></ref>。また、カドヘリン-11の遺伝子破壊マウスは、[[恐怖]]や[[不安]]に関する行動が異常となることが知られている<ref><pubmed> 10860580 </pubmed></ref>。  


 これらの研究成果より、カドヘリンスーパーファミリーは、多種類の神経細胞が複雑な神経回路網を構築し、シナプスを介した神経伝達を通して高次機能を発揮する過程において、多様かつ重要な役割を果たしていると考えられる。  
 これらの研究成果より、カドヘリンスーパーファミリーは、多種類の神経細胞が複雑な神経回路網を構築し、シナプスを介した神経伝達を通して高次機能を発揮する過程において、多様かつ重要な役割を果たしていると考えられる。


==関連項目==
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