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臨床病型(I~IV型)別の、5q型の割合は、年齢が低いほど高く、日本からの報告では、I、II 型では9割超、III 型で6、7割、IV型で1割であった<ref name=荒川玲子2008>'''荒川玲子 (2018).'''<br>神経筋疾患の遺伝学的検査. ''脳と発達'' 50, 192-196</ref>。 | 臨床病型(I~IV型)別の、5q型の割合は、年齢が低いほど高く、日本からの報告では、I、II 型では9割超、III 型で6、7割、IV型で1割であった<ref name=荒川玲子2008>'''荒川玲子 (2018).'''<br>神経筋疾患の遺伝学的検査. ''脳と発達'' 50, 192-196</ref>。 | ||
[[ファイル:脊髄性筋萎縮症 Fig1.png|サムネイル| | [[ファイル:脊髄性筋萎縮症 Fig1.png|サムネイル|450px|'''図1. SMN遺伝子'''<br>健常者ではSMNタンパク質の90%がSMN1遺伝子由来である。SMN2遺伝子からは選択的スプライシングにより、二種類のmRNAが産生されるが、ほとんどはエクソン7を欠き、翻訳されるタンパク質は不安定ですぐに分解される。そのためSMN2遺伝子は、SMNタンパク質の10%ほどにしか寄与しない。文献<ref name=Farrar2017><pubmed> 28026041 </pubmed></ref><ref name=Rao2018 />から作成。]] | ||
== 診断 == | == 診断 == | ||
確定診断としてSMN1遺伝子の検査を行う。患者の95%ではSMN1遺伝子で[[ホモ接合]]の遺伝子欠失がみられ(コピー数が0)、残り5%では1コピーの欠失ともう1コピーの変異がみられる<ref name=Prior2011><pubmed>21673580</pubmed></ref>。SMN遺伝子検査は保険収載されている。 | 確定診断としてSMN1遺伝子の検査を行う。患者の95%ではSMN1遺伝子で[[ホモ接合]]の遺伝子欠失がみられ(コピー数が0)、残り5%では1コピーの欠失ともう1コピーの変異がみられる<ref name=Prior2011><pubmed>21673580</pubmed></ref>。SMN遺伝子検査は保険収載されている。 | ||
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==== SMN2以外の修飾因子 ==== | ==== SMN2以外の修飾因子 ==== | ||
SMN2遺伝子のほか、SMN遺伝子の近傍にある[[neuronal apoptosis inhibitory protein]] ([[NAIP]])遺伝子、[[Small EDRK-Rich Factor 1]] ([[SERF1]])遺伝子などが重症度に関連している<ref name=He2013><pubmed>23352792</pubmed></ref>。NAIP遺伝子は神経細胞の[[アポトーシス]]抑制に関与している<ref name=Roy1995><pubmed>7813013</pubmed></ref>。SERF1遺伝子の機能は不明である<ref name=Scharf1998><pubmed>9731538</pubmed></ref>。 | SMN2遺伝子のほか、SMN遺伝子の近傍にある[[neuronal apoptosis inhibitory protein]] ([[NAIP]])遺伝子、[[Small EDRK-Rich Factor 1]] ([[SERF1]])遺伝子などが重症度に関連している<ref name=He2013><pubmed>23352792</pubmed></ref>。NAIP遺伝子は神経細胞の[[アポトーシス]]抑制に関与している<ref name=Roy1995><pubmed>7813013</pubmed></ref>。SERF1遺伝子の機能は不明である<ref name=Scharf1998><pubmed>9731538</pubmed></ref>。 | ||
[[ファイル:脊髄性筋萎縮症 Fig2.png|サムネイル| | [[ファイル:脊髄性筋萎縮症 Fig2.png|サムネイル|450px|'''図2. 治療戦略'''<br>SMN1遺伝子が欠損すると、SMNタンパク質が著明に減少し、SMNを発症する。SMN2は存在してもエクソン7を欠くmRNAは安定なタンパク質を形成できず、SMNタンパク質の量は低い。AVXS-101(オナセムノゲンアベパルボベク)はウイルスベクターで活性のあるSMN1遺伝子を導入する。ヌシネルセン、リスジプラムはエクソン7を含むSMN2 mRNAの産生を促す。文献<ref name=Farrar2017 /><ref name=Rao2018 />から作成。]] | ||
== 治療 == | == 治療 == | ||
=== 支持療法 === | === 支持療法 === | ||
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[[ヌシネルセン]](商品名:[[スピンラザ]])は、[[アンチセンスオリゴヌクレオチド]]である。SMN2のpre-mRNAのエクソン7下流に結合し、[[スプライシング因子]]である[[serine/arginine-rich splicing factor 1]] ([[SRSF1]])の結合することでスプライシングを阻害し、Δ7 mRNAからエクソン7を含んだ完全長mRNAへと産生をシフトさせることで、機能性SMNタンパク質の産生量を増加させる。臨床試験で、I型の死亡率を低下させ<ref name=Finkel2017><pubmed>29091570</pubmed></ref>、II、III型の機能予後を改善することが報告された<ref name=Mercuri2018><pubmed>29443664</pubmed></ref>。成人例への投与例に関しては、観察研究の報告がある<ref name=Hagenacker2020><pubmed>32199097</pubmed></ref>。 | [[ヌシネルセン]](商品名:[[スピンラザ]])は、[[アンチセンスオリゴヌクレオチド]]である。SMN2のpre-mRNAのエクソン7下流に結合し、[[スプライシング因子]]である[[serine/arginine-rich splicing factor 1]] ([[SRSF1]])の結合することでスプライシングを阻害し、Δ7 mRNAからエクソン7を含んだ完全長mRNAへと産生をシフトさせることで、機能性SMNタンパク質の産生量を増加させる。臨床試験で、I型の死亡率を低下させ<ref name=Finkel2017><pubmed>29091570</pubmed></ref>、II、III型の機能予後を改善することが報告された<ref name=Mercuri2018><pubmed>29443664</pubmed></ref>。成人例への投与例に関しては、観察研究の報告がある<ref name=Hagenacker2020><pubmed>32199097</pubmed></ref>。 | ||
==== オナセムノゲンアベパルボベク ==== | ==== オナセムノゲンアベパルボベク ==== | ||
[[オナセムノゲンアベパルボベク]](AVXS- | [[オナセムノゲンアベパルボベク]]([[AVXS-101]]、製品名 [[ゾルゲンスマ]])は、[[ウイルスベクター#.E3.82.A2.E3.83.87.E3.83.8E.E9.9A.8F.E4.BC.B4.E3.82.A6.E3.82.A4.E3.83.AB.E3.82.B9.E3.83.99.E3.82.AF.E3.82.BF.E3.83.BC|アデノ随伴ウイルスベクター]]([[AAV vector]])にSMN1遺伝子を組み込んだ遺伝子治療薬である。正常なSMN遺伝子を導入し、SMNタンパク質の発現量を増加させる。乳児の臨床試験での有効性が報告された<ref name=Mendell2017><pubmed>29091557</pubmed></ref>。 | ||
==== リスジプラム ==== | ==== リスジプラム ==== |