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ショウジョウバエAubergineに代表されるNLSを持たないPIWIメンバーは、RISC形成後も細胞質に局在し、piRNAを介して結合したトランスポゾンmRNAをエンドヌクレアーゼ活性依存的に切断することによってトランスポゾンの発現を抑制する。その分子機序はAGO2の分子機序とよく似ている。AGO2によって切断されたRNA断片は細胞質で分解される運命にあるが、Aubergineによって切断されたRNA断片からはpiRNAが生成されAGO3と結合する<ref name=Brennecke2007><pubmed>17346786</pubmed></ref><ref name=DeFazio2011><pubmed>22020280</pubmed></ref><ref name=Gunawardane2007><pubmed>17322028</pubmed></ref> [25-27]。これらpiRNAはトランスポゾンmRNAから生成されるため、AGO3はトランスポゾンのアンチセンス方向の転写産物を切断する。アンチセンス転写産物RNA断片から生成されたpiRNAはAubergineと結合する。このAubergineとAGO3による反応は相互に連続して起こり、piRNAを増幅させるためpiRNA増幅機構と呼ばれる。また、その様相からピンポン機構としても知られる。AGO2と異なり、AubergineとAGO3は切断後もRNA断片を保持し続ける。しかし、このままではpiRNA増幅が停滞してしまうため、VasaなどのRNAヘリカーゼが、頃を見計らってエネルギーを消費しつつPIWIからRNA断片を解離する<ref name=Nishida2015><pubmed>25558067</pubmed></ref><ref name=Xiol2014><pubmed>24910301</pubmed></ref> [28, 29]。ショウジョウバエ生殖系体細胞では、脳腫瘍抑制因子L(3)mbtがpiRNA増幅因子の発現を抑制しているためpiRNAを増幅しない<ref name=Sumiyoshi2016><pubmed>27474440</pubmed></ref> [30]。マウスMILIは、トランスポゾンのアンチセンスRNAを切断することによってMIWI2に結合するpiRNAを産生する<ref name=Siomi2011><pubmed>21427766</pubmed></ref> [10]。これによってMIWI2はトランスポゾンのmRNAを標的とすることが可能になる。 | ショウジョウバエAubergineに代表されるNLSを持たないPIWIメンバーは、RISC形成後も細胞質に局在し、piRNAを介して結合したトランスポゾンmRNAをエンドヌクレアーゼ活性依存的に切断することによってトランスポゾンの発現を抑制する。その分子機序はAGO2の分子機序とよく似ている。AGO2によって切断されたRNA断片は細胞質で分解される運命にあるが、Aubergineによって切断されたRNA断片からはpiRNAが生成されAGO3と結合する<ref name=Brennecke2007><pubmed>17346786</pubmed></ref><ref name=DeFazio2011><pubmed>22020280</pubmed></ref><ref name=Gunawardane2007><pubmed>17322028</pubmed></ref> [25-27]。これらpiRNAはトランスポゾンmRNAから生成されるため、AGO3はトランスポゾンのアンチセンス方向の転写産物を切断する。アンチセンス転写産物RNA断片から生成されたpiRNAはAubergineと結合する。このAubergineとAGO3による反応は相互に連続して起こり、piRNAを増幅させるためpiRNA増幅機構と呼ばれる。また、その様相からピンポン機構としても知られる。AGO2と異なり、AubergineとAGO3は切断後もRNA断片を保持し続ける。しかし、このままではpiRNA増幅が停滞してしまうため、VasaなどのRNAヘリカーゼが、頃を見計らってエネルギーを消費しつつPIWIからRNA断片を解離する<ref name=Nishida2015><pubmed>25558067</pubmed></ref><ref name=Xiol2014><pubmed>24910301</pubmed></ref> [28, 29]。ショウジョウバエ生殖系体細胞では、脳腫瘍抑制因子L(3)mbtがpiRNA増幅因子の発現を抑制しているためpiRNAを増幅しない<ref name=Sumiyoshi2016><pubmed>27474440</pubmed></ref> [30]。マウスMILIは、トランスポゾンのアンチセンスRNAを切断することによってMIWI2に結合するpiRNAを産生する<ref name=Siomi2011><pubmed>21427766</pubmed></ref> [10]。これによってMIWI2はトランスポゾンのmRNAを標的とすることが可能になる。 | ||
=== 核での機能 === | ==== 核での機能 ==== | ||
マウスMIWI2やショウジョウバエPiwiに代表されるNLSを持つPIWIは、細胞質でRISCとなった後に核に移行し、転写中のRNA、つまり遺伝子ゲノムに結合した状態にあるRNAに結合して、そのゲノム領域のDNAやヒストンのメチル化を介してヘテロクロマチンを誘導する<ref name=Onishi2021><pubmed>34347367</pubmed></ref> [24]。この機構には、DNAメチル化酵素やヒストンメチル化酵素など多くの補因子が関わる。 | マウスMIWI2やショウジョウバエPiwiに代表されるNLSを持つPIWIは、細胞質でRISCとなった後に核に移行し、転写中のRNA、つまり遺伝子ゲノムに結合した状態にあるRNAに結合して、そのゲノム領域のDNAやヒストンのメチル化を介してヘテロクロマチンを誘導する<ref name=Onishi2021><pubmed>34347367</pubmed></ref> [24]。この機構には、DNAメチル化酵素やヒストンメチル化酵素など多くの補因子が関わる。 | ||