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ヒストン脱アセチル化酵素の[[神経可塑性]]に対する役割はまず[[記憶]]研究から明らかとなった。[[マウス]]へのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤投与は神経細胞[[樹状突起]][[スパイン]]密度増加と[[長期記憶]]形成の増強を引き起こす<ref name=Bredy2008><pubmed>18174372</pubmed></ref><ref name=Guan2009><pubmed>19424149</pubmed></ref><ref name=Levenson2004><pubmed>15273246</pubmed></ref><ref name=Wood2006><pubmed>16741277</pubmed></ref> 。マウスへの[[文脈学習]]課題は[[Bdnf]]遺伝子プロモーター領域のヒストンH3のアセチル化を増加させ、その転写活性を増大させる<ref name=Bredy2008><pubmed>18174372</pubmed></ref> 。このBdnf遺伝子プロモーターのヒストン脱アセチル化を担う分子としてHDAC2が見出されている<ref name=Guan2009><pubmed>19424149</pubmed></ref> 。HDAC2過剰発現マウスは、Bdnf遺伝子上のヒストンアセチル化レベルの低下、海馬神経細胞樹状突起スパイン密度の低下、長期増強の減退、記憶能力の低下といった表現型を示し、逆にHDAC2遺伝子欠損マウスはスパイン密度の増加、長期増強の亢進、記憶能力の促進を示した。 | |||
核内ヒストンタンパクの脱アセチル化酵素として働くHDAC4は脳内に広く分布しており、神経活動に伴いリン酸化されることで核から細胞質に移行する。この結果、[[シナプス形成]]や[[シナプス再構築]]に関わる遺伝子群を抑制するためのスイッチが解除され、結果的に標的遺伝子の発現が活性化される<ref name=Sando2012><pubmed>23141539</pubmed></ref> 。脳内HDAC4の活性化はシナプス可塑性を低下させ、記憶・学習能力の低下を引き起こす<ref name=Sando2012><pubmed>23141539</pubmed></ref> 。このように、ヒストン脱アセチル化酵素による[[エピジェネティック]]修飾がクロマチンの構造をダイナミックに変化させることで神経可塑性に影響を与え、その結果、記憶・学習や情動・気分の制御に関わっていると想定されている。 | |||
上記のヒストン脱アセチル化酵素はヒストン修飾により遺伝子発現を調節する機能を担うが、非ヒストンタンパク質を脱アセチル化するヒストン脱アセチル化酵素も知られている。HDAC6の主な基質は[[α-チュブリン]]であり、[[微小管]]の安定性を制御することで、様々なタンパク質や[[ミトコンドリア]]などのオルガネラの細胞内輸送等に重要な役割を果たしている <ref name=Matsuyama2002><pubmed>12486003</pubmed></ref> 。 | |||
== 疾患との関わり == | == 疾患との関わり == |