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ブタの卵胞液からインヒビンを精製する過程で、インヒビンとは異なった分画に下垂体前葉培養系でFSHの分泌を抑制する分子量31〜39kDaのシステインに富んだ一本鎖糖タンパク質が発見され、フォリスタチンと命名された <ref name=Ueno1987><pubmed>3120188</pubmed></ref>。FSHの分泌を抑制する作用はインヒビンと類似している。その後の解析から、アクチビンに高親和性 (Kd:500 pM程度)で結合しその作用を阻害することがわかり、その機能が解明された <ref name=Nakamura1990><pubmed>2106159</pubmed></ref>。TGF-βファミリー分子に細胞外分泌型の阻害結合分子があることが最初にわかった例である。TGF-βファミリー分子であるBMPの機能を阻害するコーディン、ノギンなどのモデルケースとなった。フォリスタチンは、卵巣や卵胞液でアクチビンと複合体を形成しているが、フォリスタチンから遊離したアクチビンは生理活性を示すようになる。フォリスタチンは、アクチビンA, B, ABとの結合と阻害活性が強力であるが、次に親和性が高いのがマイオスタチン、GDF11であり、フォリスタチンはこれらの分子も阻害する。 | ブタの卵胞液からインヒビンを精製する過程で、インヒビンとは異なった分画に下垂体前葉培養系でFSHの分泌を抑制する分子量31〜39kDaのシステインに富んだ一本鎖糖タンパク質が発見され、フォリスタチンと命名された <ref name=Ueno1987><pubmed>3120188</pubmed></ref>。FSHの分泌を抑制する作用はインヒビンと類似している。その後の解析から、アクチビンに高親和性 (Kd:500 pM程度)で結合しその作用を阻害することがわかり、その機能が解明された <ref name=Nakamura1990><pubmed>2106159</pubmed></ref>。TGF-βファミリー分子に細胞外分泌型の阻害結合分子があることが最初にわかった例である。TGF-βファミリー分子であるBMPの機能を阻害するコーディン、ノギンなどのモデルケースとなった。フォリスタチンは、卵巣や卵胞液でアクチビンと複合体を形成しているが、フォリスタチンから遊離したアクチビンは生理活性を示すようになる。フォリスタチンは、アクチビンA, B, ABとの結合と阻害活性が強力であるが、次に親和性が高いのがマイオスタチン、GDF11であり、フォリスタチンはこれらの分子も阻害する。 | ||
[[ファイル:Tsuchida Follistatin Fig1.png|サムネイル|'''図1. フォリスタチンとFSTL3(FLRG)''']] | |||
== 構造 == | == 構造 == | ||
フォリスタチン遺伝子はヒトを含めて種間でよく保存されており、6個のエクソンで構成されている。分子内にシステインに富んだ3個のフォリスタチンドメイン (FSD) | フォリスタチン遺伝子はヒトを含めて種間でよく保存されており、6個のエクソンで構成されている。分子内にシステインに富んだ3個のフォリスタチンドメイン (FSD)を持つ糖付加ポリペプチドをコードする。6番目のエクソンのスプライシングの違いにより、FS315とFS288の2つのバリアントが産生される。さらに分解産物であるFS303も生体内に確認されている('''図1''')。FS288は細胞との結合性が高く、アクチビン結合能と阻害活性がFS315より強い <ref name=Shimasaki1988><pubmed>3380788</pubmed></ref> <ref name=Hashimoto1997><pubmed>9153241</pubmed></ref>。 | ||
フォリスタチンは、アクチビンと結合していないフリーの状態では、カルボキシル末端の酸性領域とFSD1の塩基性領域/ヘパリン結合領域とが相互作用しFS288よりもコンパクトな高次構造を取ると考えられている <ref name=Lerch2007><pubmed>17409095</pubmed></ref>。アクチビンと結合すると、その相互作用はなくなり、FS315と類似したオープンな高次構造をとる(図2、3)。 | フォリスタチンは、アクチビンと結合していないフリーの状態では、カルボキシル末端の酸性領域とFSD1の塩基性領域/ヘパリン結合領域とが相互作用しFS288よりもコンパクトな高次構造を取ると考えられている <ref name=Lerch2007><pubmed>17409095</pubmed></ref>。アクチビンと結合すると、その相互作用はなくなり、FS315と類似したオープンな高次構造をとる(図2、3)。 | ||