「モノアシルグリセロールリパーゼ」の版間の差分

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== イントロダクション ==
== イントロダクション ==
[[ファイル:Shosaku MGL Fig1.png|サムネイル|'''図1. 脂肪組織での脂肪分解経路''']]
[[ファイル:Shosaku MGL Fig2.png|サムネイル|'''図2. 2-AGの生合成経路およびMGLによる分解''']]
[[ファイル:Shosaku MGL Fig3.png|サムネイル|'''図3. プロスタグランジンの生合成''']]
 モノアシルグリセロールリパーゼの研究は、最初は脂肪の分解に必要な酵素として注目されたことに始まる('''図1''')。空腹時には動物はエネルギー源として脂肪を利用する。この時に脂肪組織ではトリアシルグリセロール(triacylglycerol:TG)の脂肪酸が切り離されジアシルグルセロール(diacylglycerol:DG)、モノアシルグリセロール(monoacylglycerol; MG)となり、最終的にはグリセロールと脂肪酸にまで分解される。この最終段階に働くMGを分解する酵素の同定が試みられた。Tornqvistらは1976年にラットの脂肪組織よりMGを加水分解する酵素MGLの抽出に成功した<ref name=Tornqvist1976><pubmed>1249056</pubmed></ref>。彼らはSDSゲル電気泳動の結果より分子量は32900と推定し、基質特異性としては、TGやDGには作用せずMG特異性が高いこと、MGであれば脂肪酸の結合位置がグリセロールのどの位置であっても分解できることを報告した。同グループは1997年にマウス脂肪組織のcDNAライブラリーからMGLをクローニングし、そのアミノ酸配列を特定した<ref name=Karlsson1997><pubmed>9341166</pubmed></ref>。また、MGLのmRNAの発現を調べ、MGLは脂肪組織のみならず脳を含む全身の組織で普遍的に発現されている酵素であることを明らかにした。同グループは2001年にはヒトのMGLのアミノ酸配列の特定にも成功した<ref name=Karlsson2001><pubmed>11470505</pubmed></ref>。  
 モノアシルグリセロールリパーゼの研究は、最初は脂肪の分解に必要な酵素として注目されたことに始まる('''図1''')。空腹時には動物はエネルギー源として脂肪を利用する。この時に脂肪組織ではトリアシルグリセロール(triacylglycerol:TG)の脂肪酸が切り離されジアシルグルセロール(diacylglycerol:DG)、モノアシルグリセロール(monoacylglycerol; MG)となり、最終的にはグリセロールと脂肪酸にまで分解される。この最終段階に働くMGを分解する酵素の同定が試みられた。Tornqvistらは1976年にラットの脂肪組織よりMGを加水分解する酵素MGLの抽出に成功した<ref name=Tornqvist1976><pubmed>1249056</pubmed></ref>。彼らはSDSゲル電気泳動の結果より分子量は32900と推定し、基質特異性としては、TGやDGには作用せずMG特異性が高いこと、MGであれば脂肪酸の結合位置がグリセロールのどの位置であっても分解できることを報告した。同グループは1997年にマウス脂肪組織のcDNAライブラリーからMGLをクローニングし、そのアミノ酸配列を特定した<ref name=Karlsson1997><pubmed>9341166</pubmed></ref>。また、MGLのmRNAの発現を調べ、MGLは脂肪組織のみならず脳を含む全身の組織で普遍的に発現されている酵素であることを明らかにした。同グループは2001年にはヒトのMGLのアミノ酸配列の特定にも成功した<ref name=Karlsson2001><pubmed>11470505</pubmed></ref>。