「サイクリックGMP依存性タンパク質リン酸化酵素」の版間の差分

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== cGMP依存性タンパク質リン酸化酵素とは ==
== cGMP依存性タンパク質リン酸化酵素とは ==
 cGMP依存性タンパク質リン酸化酵素(PKG)は、環状グアノシン一リン酸(cyclic GMP, cGMP)によって活性化されるセリン/スレオニン特異的タンパク質リン酸化酵素であり、細胞内シグナル伝達の重要な制御因子として機能する。PKGはPKG I(IαおよびIβ)とPKG IIのアイソフォームに分類され、それぞれ異なる組織に特異的に発現する。活性化は、可溶性グアニル酸シクラーゼ(soluble guanylate cyclase, sGC)または膜結合型グアニル酸シクラーゼ(particulate GC, pGC)によるcGMP産生により引き起こされる。主な機能として、血管平滑筋弛緩、心筋の拍動調節、上皮細胞からの分泌制御、骨形成、神経可塑性の調節などがあり、細胞質および細胞膜近傍における多様なシグナル調節に関与している。
 cGMP依存性タンパク質リン酸化酵素(PKG)は、[[環状グアノシン一リン酸]]([[cyclic GMP]], [[cGMP]])によって活性化される[[セリン]]/[[スレオニン]]特異的[[タンパク質リン酸化酵素]]であり、[[細胞内シグナル伝達]]の重要な制御因子として機能する。PKGは[[PKG I]]([[PKG Iα|Iα]]および[[PKG Iβ|Iβ]])と[[PKG II]]のアイソフォームに分類され、それぞれ異なる組織に特異的に発現する。活性化は、[[可溶性グアニル酸シクラーゼ]]([[soluble guanylate cyclase]], [[sGC]])または[[膜結合型グアニル酸シクラーゼ]]([[particulate guanylate cyclase]], [[pGC]])によるcGMP産生により引き起こされる。主な機能として、[[血管平滑筋弛緩]]、[[心筋]]の[[拍動]]調節、[[上皮]]細胞からの[[分泌]]制御、[[骨]]形成、[[神経可塑性]]の調節などがあり、[[細胞質]]および[[細胞膜]]近傍における多様なシグナル調節に関与している。


[[ファイル:Eguchi PKG Fig1.png|サムネイル|'''PKGの構造とcGMPによる活性化機構<br>
[[ファイル:Eguchi PKG Fig1.png|サムネイル|'''PKGの構造とcGMPによる活性化機構<br>
A.''' PKG Iのドメイン構造。LZ: leucine zipper, AI: autoinhibitory domain.<br>
A.''' PKG Iのドメイン構造。LZ: [[leucine zipper]], AI: autoinhibitory domain.<br>
'''B.''' PKGの活性化機構。CNBへのcGMPの結合によりAIが触媒ドメインから外れ、PKGが活性化する。]]
'''B.''' PKGの活性化機構。サイクリックヌクレオチド結合ドメイン(CNB)へのcGMPの結合により自己抑制ドメイン(AI)が触媒ドメインから外れ、PKGが活性化する。]]
 
== 構造 ==
== 構造 ==
 PKGは、活性化を制御する調節ドメインと、基質のリン酸化を担う触媒ドメインから構成される(図1)。調節ドメインには、cGMPとの結合により構造変化を引き起こす2つの環状ヌクレオチド結合部位(CNB-AとCNB-B)が存在する。このうちCNB-AにはcGMPおよびcAMPの両方が結合するが、CNB-BはcGMPに対しcAMPの200-500倍高い選択性を有する<ref name=Huang2014><pubmed>24239458</pubmed></ref><ref name=Kim2021><pubmed>33271627</pubmed></ref>1,2。また、cGMPの親和性は、PKG I ではCNB-AのほうがBよりも約10倍親和性が高いが、PKG IIではほぼ同じである2。同領域には自己阻害部位(Autoinhibition domain)が含まれ、CNBへのcGMPの結合によってこの自己阻害が解除され、触媒ドメインの活性化が引き起こされる<ref name=Sharma2022><pubmed>35929723</pubmed></ref>3。触媒ドメインには基質認識部位とATP結合ポケットがあり、基質認識部位によって認識されたセリン/スレオニン残基にATPからリン酸基を転移する。
 PKGは、活性化を制御する調節ドメインと、基質のリン酸化を担う触媒ドメインから構成される(図1)。調節ドメインには、cGMPとの結合により構造変化を引き起こす2つの環状ヌクレオチド結合部位(CNB-AとCNB-B)が存在する。このうちCNB-AにはcGMPおよびcAMPの両方が結合するが、CNB-BはcGMPに対しcAMPの200-500倍高い選択性を有する<ref name=Huang2014><pubmed>24239458</pubmed></ref><ref name=Kim2021><pubmed>33271627</pubmed></ref>1,2。また、cGMPの親和性は、PKG I ではCNB-AのほうがBよりも約10倍親和性が高いが、PKG IIではほぼ同じである2。同領域には自己阻害部位(Autoinhibition domain)が含まれ、CNBへのcGMPの結合によってこの自己阻害が解除され、触媒ドメインの活性化が引き起こされる<ref name=Sharma2022><pubmed>35929723</pubmed></ref>3。触媒ドメインには基質認識部位とATP結合ポケットがあり、基質認識部位によって認識されたセリン/スレオニン残基にATPからリン酸基を転移する。

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