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=== 血管===
=== 血管===
 ssh1遺伝子の欠損マウスは正常に生まれ表現型に異常は見られないが、アンジオテンシン投与による高血圧の誘導における血管のリモデリングにおいて線維化を悪化させることが示された。この知見から、SSH1は血管の炎症時のTGF-βシグナルを抑制し、過剰な線維化を防止する働きがあることが示唆された<ref name=Williams2019><pubmed>30291325</pubmed></ref> [36]。
 ssh1遺伝子の欠損マウスは正常に生まれ表現型に異常は見られないが、アンジオテンシン投与による高血圧の誘導における血管のリモデリングにおいて線維化を悪化させることが示された。この知見から、SSH1は血管の炎症時のTGF-βシグナルを抑制し、過剰な線維化を防止する働きがあることが示唆された<ref name=Williams2019><pubmed>30291325</pubmed></ref> [36]。
 また、アルツハイマー病モデルの症状が緩和されることが示されている<ref name=Cazzaro2023><pubmed> 37463212</pubmed></ref> [37](次項参照)。


== 疾患との関わり ==
== 疾患との関わり ==
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 これとは別に、SSH1は、オートファジーの隔離膜にユビキチン化されたミトコンドリアなどを結合する受容体として働くSQSTM1/p62に結合し、SQSTM1/p62の活性に必要な402番目のセリン残基のリン酸基を脱リン酸化し、傷ついたミトコンドリアのオートファジーによる除去(マイトファジー)を抑制することが明らかにされた<ref name=Fang2021></ref> [5]。さらに、SSH1は、ホスファターゼドメインよりC末端側でSQSTM1/p62と結合し(図2)、その脱リン酸化活性に依存せずにマイトファジーを抑制することで細胞内のROSの増加を引き起こし、神経細胞の傷害を増悪化することが示された<ref name=Cazzaro2023b><pubmed>36637427</pubmed></ref> [39]。
 これとは別に、SSH1は、オートファジーの隔離膜にユビキチン化されたミトコンドリアなどを結合する受容体として働くSQSTM1/p62に結合し、SQSTM1/p62の活性に必要な402番目のセリン残基のリン酸基を脱リン酸化し、傷ついたミトコンドリアのオートファジーによる除去(マイトファジー)を抑制することが明らかにされた<ref name=Fang2021></ref> [5]。さらに、SSH1は、ホスファターゼドメインよりC末端側でSQSTM1/p62と結合し(図2)、その脱リン酸化活性に依存せずにマイトファジーを抑制することで細胞内のROSの増加を引き起こし、神経細胞の傷害を増悪化することが示された<ref name=Cazzaro2023b><pubmed>36637427</pubmed></ref> [39]。


 また、病初期に起こる酸化的障害に対して、転写因子Nrf2が保護的に働くが、SQSTM1/p62は、Nrf2の分解を促進するKeap1と競合的に結合し、Nrf2の分解を抑制して、その細胞防御機能を強化する。SSH1は、SQSTM1/p62に結合して、Keap1のNrf2への結合を促進することでNrf2の分解を促進し、酸化的な細胞障害に対する保護機能を減弱させることが示された。さらに、これらのアルツハイマー病の原因となる現象はSSH1の発現抑制や遺伝子欠損によって回復することが示されている<ref name=Cazzaro2023></ref> [37]。
 また、病初期に起こる酸化的障害に対して、転写因子Nrf2が保護的に働くが、SQSTM1/p62は、Nrf2の分解を促進するKeap1と競合的に結合し、Nrf2の分解を抑制して、その細胞防御機能を強化する。SSH1は、SQSTM1/p62に結合して、Keap1のNrf2への結合を促進することでNrf2の分解を促進し、酸化的な細胞障害に対する保護機能を減弱させることが示された。
 
 これらのアルツハイマー病の原因となる現象はSSH1の発現抑制や遺伝子欠損によって回復することが示されている<ref name=Cazzaro2023></ref> [37]。


 一方、γセクレターゼによるアミロイドβの生成によってSSH1の活性が抑制され、コフィリンのリン酸化が亢進し、神経細胞の傷害を引き起こしているとの報告がある<ref name=Barone2014><pubmed>25315299</pubmed></ref> [40]。この矛盾する結果は、解析した対象個体の年齢の違いによると説明されているが詳細は不明である<ref name=Barone2014><pubmed>25315299</pubmed></ref> [40]。
 一方、γセクレターゼによるアミロイドβの生成によってSSH1の活性が抑制され、コフィリンのリン酸化が亢進し、神経細胞の傷害を引き起こしているとの報告がある<ref name=Barone2014><pubmed>25315299</pubmed></ref> [40]。この矛盾する結果は、解析した対象個体の年齢の違いによると説明されているが詳細は不明である<ref name=Barone2014><pubmed>25315299</pubmed></ref> [40]。