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== 副作用 == | == 副作用 == | ||
抗精神病薬は中枢性、末梢性に多様な副作用を示すが、その出現頻度や程度は薬物ごとに異なり用量も影響する。副作用はD<sub>2</sub> 受容体、[[ムスカリン性acetylcholine (Ach)受容体]]、[[ | 抗精神病薬は中枢性、末梢性に多様な副作用を示すが、その出現頻度や程度は薬物ごとに異なり用量も影響する。副作用はD<sub>2</sub> 受容体、[[アセチルコリン受容体|ムスカリン性acetylcholine (Ach)受容体]]、[[アドレナリン]] (α<sub>1</sub>)受容体、ヒスタミン (H<sub>1</sub>)受容体が、抗精神病薬で遮断された結果生じるものが多い <ref name="ref1" />。多くの副作用は投与早期に出現し、長期投与で耐性を生じやすいが、持続的使用の後出現するものもある。軽微な副作用は、抗精神病薬の減量や薬物の変更、副作用止めの薬物の追加などで対応可能な場合が多い。しかし、頻度は低いが[[wikipedia:JA:悪性症候群|悪性症候群]]など重篤な副作用もある。一般的に第2世代抗精神病薬は、第1世代抗精神病薬と比較して、錐体外路症状、過鎮静、抗コリン性副作用の発現頻度は低いが、体重増加や[[wikipedia:JA:高血糖|高血糖]]など代謝性の副作用に注意が必要である。 | ||
=== 錐体外路症状 === | === 錐体外路症状 === | ||
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=== 悪性症候群 === | === 悪性症候群 === | ||
抗精神病薬の投与開始や増量時、あるいは抗[[パーキンソン病]]薬や抗不安薬の減量・中止時に、脱水や身体的衰弱などが重なった場合に生じやすい。症状は高熱、錐体外路症状([[筋固縮]]、[[振戦]]、[[無動]]など)、[[自律神経症状]]([[wikipedia:JA:発汗|発汗]]、[[wikipedia:JA:頻脈|頻脈]]、[[wikipedia:JA:血圧|血圧]]変動など)、意識障害などが出現し、[[wikipedia:JA:CPK|CPK]]、血中・尿中[[wikipedia:JA:myoglobin|myoglobin]]の上昇などがみられ、重篤な場合は[[wikipedia:JA:腎不全|腎不全]]を合併し、死に至ることもある。[[wikipedia:JA:横紋筋融解症|横紋筋融解症]]を合併する時もある。 | |||
=== 自律神経症状 === | === 自律神経症状 === | ||
抗コリン性の副作用として頻度の高い症状は、[[wikipedia:JA:口渇|口渇]]、[[wikipedia:JA:便秘|便秘]]、[[wikipedia:JA:麻痺性イレウス|麻痺性イレウス]]、排尿困難([[wikipedia:JA:尿閉|尿閉]])、かすみ目、[[wikipedia:JA:鼻閉|鼻閉]]、[[wikipedia:JA:頻脈|頻脈]]、血圧上昇、[[wikipedia:JA:眼圧|眼圧]]上昇([[wikipedia:JA:緑内障|緑内障]]の悪化) であり、低力価薬や併用した抗コリン薬で生じやすい。いずれも不快な症状でadherence低下につながりやすい。 抗α<sub>1</sub>性副作用としては、[[wikipedia:JA:低血圧|低血圧]](特に[[wikipedia:JA:起立性低血圧|起立性低血圧]])とそれに伴う[[wikipedia:JA:ふらつき|ふらつき]]、[[wikipedia:JA:めまい|めまい]]、[[wikipedia:JA:立ちくらみ|立ちくらみ]]、[[wikipedia:JA:倦怠感|倦怠感]]がある。稀に持続性勃起症が生じる。また心・循環器系副作用として、[[wikipedia:JA:心電図|心電図]]異常(特に[[wikipedia:JA: | 抗コリン性の副作用として頻度の高い症状は、[[wikipedia:JA:口渇|口渇]]、[[wikipedia:JA:便秘|便秘]]、[[wikipedia:JA:麻痺性イレウス|麻痺性イレウス]]、排尿困難([[wikipedia:JA:尿閉|尿閉]])、かすみ目、[[wikipedia:JA:鼻閉|鼻閉]]、[[wikipedia:JA:頻脈|頻脈]]、血圧上昇、[[wikipedia:JA:眼圧|眼圧]]上昇([[wikipedia:JA:緑内障|緑内障]]の悪化) であり、低力価薬や併用した抗コリン薬で生じやすい。いずれも不快な症状でadherence低下につながりやすい。 抗α<sub>1</sub>性副作用としては、[[wikipedia:JA:低血圧|低血圧]](特に[[wikipedia:JA:起立性低血圧|起立性低血圧]])とそれに伴う[[wikipedia:JA:ふらつき|ふらつき]]、[[wikipedia:JA:めまい|めまい]]、[[wikipedia:JA:立ちくらみ|立ちくらみ]]、[[wikipedia:JA:倦怠感|倦怠感]]がある。稀に持続性勃起症が生じる。また心・循環器系副作用として、[[wikipedia:JA:心電図|心電図]]異常(特に[[wikipedia:JA:QT時間#QT.E5.BB.B6.E9.95.B7|QTc延長]])と致死性[[wikipedia:JA:不整脈|不整脈]] (torsade de pointes)が生じる可能性がある。 | ||
=== 代謝内分泌系症状 === | === 代謝内分泌系症状 === | ||
代謝系副作用として、食欲亢進、体重増加、[[wikipedia:JA:高血糖|高血糖]](耐糖能異常)、[[wikipedia:JA:高脂血症|高脂血症]]、[[wikipedia:JA:II型糖尿病|II型糖尿病]]が問題となる。食欲増加には、H<sub>1</sub>受容体や5-HT<sub>2C</sub>受容体の遮断作用の関与が推定されている。清涼飲料水の多飲や過食後、著しい高血糖から[[wikipedia:JA:糖尿病性ケトアシドーシス|糖尿病性ケトアシドーシス]](ketoacidosis)や[[wikipedia:JA:糖尿病性昏睡|糖尿病性昏睡]]など重篤な副作用が生じることがある。第2世代抗精神病薬の中では、クロザピンやオランザピンが代謝系副作用の頻度が高い。 内分泌系副作用としては高プロラクチン血症が代表的であり、それに起因する[[wikipedia:JA:乳汁分泌|乳汁分泌]]、[[wikipedia:JA:無月経|無月経]]、[[wikipedia:JA:女性化乳房|女性化乳房]]、[[wikipedia:JA:性欲減退|性欲減退]]、[[wikipedia:JA:勃起障害|勃起障害]]や[[wikipedia:JA:射精障害|射精障害]]などの性機能障害がある。下垂体のD<sub>2</sub>受容体の遮断作用に基づくとされ、リスペリドンやパリペリドンを除く第2世代抗精神病薬は、通常の用量下では高プロラクチン血症を来たしにくい。 抗精神病薬を長期服用している患者には、病的な多飲水を原因とする[[低Na血症]]を認める場合がある。[[抗利尿ホルモン]]不適合分泌症候群が生じていることもあり、さらに低Na血症が進行すると、水中毒に至り意識障害やけいれんに至る。 | |||
=== その他の副作用 === | === その他の副作用 === | ||
抗精神病薬の投与初期や大量投与では、抗α<sub>1</sub>作用や抗H<sub>1</sub>作用により、日中の眠気や過鎮静が生じることがある。また薬剤性肝障害や薬疹などのアレルギー反応はフェノチアジン系薬物で多い。その他、けいれん、顆粒球減少症、色素沈着、[[wikipedia:JA:光線過敏症|光線過敏症]]などの副作用がみられることがある。 | 抗精神病薬の投与初期や大量投与では、抗α<sub>1</sub>作用や抗H<sub>1</sub>作用により、日中の眠気や過鎮静が生じることがある。また薬剤性肝障害や薬疹などのアレルギー反応はフェノチアジン系薬物で多い。その他、けいれん、顆粒球減少症、色素沈着、[[wikipedia:JA:光線過敏症|光線過敏症]]などの副作用がみられることがある。 | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |